2009年11月17日

マニラに来ました

 今日は夕方の飛行機でフィリピンはマニラへ移動。先ほどホテルに到着しました。マニラは残念ながらかなり治安がよろしくないので、タクシーに乗るのにも気を使います。そんなわけで、空港からホテルに着いただけで一安心です。社会が安全であることがいかにありがたいか、逆に社会が不安定になるといかに高い代償を払うことになるか、痛感します。

 さて、今回の訪比は僕にとってはこの時期の年中行事となっている、AFCSRへの参加のためです。今回でたぶんもう5回目です。今年は経済危機の影響で昨年よりは参加者が少ないと聞いていますが、そうはいっても500名近くが集るアジア最大のCSRの国際会議。誰と再会できるのか、どんな話が聞けるのか、楽しみです。

 またもう一つ今年は嬉しいことがあります。アジアでCSRというと、どうしても貧困削減などの社会的な課題への取り組みがメインになるため、AFCSRでは環境の話題が比較的少ないのです。

 しかし今回は会議前日のサイドイベントとして、「ビジネスと生物多様性」のワークショップが開かれるのです。というか、僕も主催者の一人なので、開くのです、の方が正確ですが...

 サスラボにも度々登場するACB(ASEAN Centre for Biodiversity)がマニラ郊外に事務局を構えているので、マニラでAFCSRが開催され、COP10を来年に控えた今年、ぜひ今回のAFCSRで生物多様性を話題にしようと企画したのです。

 地元フィリピンの他にも、日本やタイから企業や行政関係者が集り、いよいよアジアでもCSRとしての生物多様性の議論が始まります。明日はどんな展開になるか、楽しみです。

 僕も基調講演をしたりしないといけないので、今日はゆっくり休むことにします。報告はまた明日!

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2009年11月13日

全体最適に、神は要らない

 一昨日もちょっと書いたように、部分最適ではなく全体最適を目指すことが、しばしば環境問題の解決に役立ちそうです。

 ただ実はこのことについて、正直に言えば、個人的にはちょぴっと違和感を感じています。たしかに全体最適というのは効率はいいのだろうけれど、それではそれをどうやって実現するのか? また、それは一歩間違えると全体主義に陥ってしまうのではないか? という疑問と懸念です。

 パーツではなく、システムで考えようということであればまだいいのかもしれませんが、あまり無邪気に「全体最適」と唱えると、ちょっと危険な気がするのです。

 このことは、共産主義が机上では理想的に見えても、実際にはなかなかうまく行かなかったことからも想像できます。「人間の性質」以上に、中央集権は無駄なコストがかかるという性質を持っているのだと思います。

 とは言うものの、「個々が好き勝手に」はもちろん、「個別最適の単なる積み重ね」でうまく行かないことも、私たちはたくさん見てきています。

 それでは一体どうしたらいいのか? こんなときには僕はいつも自然がお手本になるのではないかと思います。

 例えば空を飛ぶ鳥の群れや、海を泳ぐ小魚の群れ。いずれも司令塔があって指示を出しているわけではないのに、まるで全体が一つの生命体のように動きます。特に魚の群れなど、本当に信じられないような素早さ、信じられないような滑らかさです。

 つまり、たとえ全体像を正確に把握していないくても、司令塔がなかったとしても、個々がバラバラに動くよりはるかにスムーズに動くようなシステムというのは可能だし、それを真似すればいいのではないでしょうか。

 間違いなく一つのポイントは、相互のコミュニケーションです。隣の個体(部分)とお互いの情報を常にやり取りすることが、きっと鍵になるはずです。そしてもう一つは、すべての個体(部分)が従う、おそらくはかなりシンプルなルール。その二つがあればかなりスマートな挙動ができるようになるんじゃないかなと思います。

 以上は僕のまったくの直感なのですが、制御工学とか、そんな分野ではこの辺のことはもう随分と研究されているんじゃないでしょうか。どなたか詳しい方がいたら教えてくださいね。

 この原理を整理して、実際の社会に応用できれば、個々が全体のために縛られることなく、それぞれがある程度の自由を持ちながら、しかし全体としても高い効率を実現できるのではないかなと...

 つまり、私たちは必ずしも、全てを見て、全てをコントロールする、全知全能の神になる必要はなく、ほんのちょっとしたシンプルなルールを見極め、従うだけで、もっとうまく行くようになるのではないかと思うのですが... 皆さんはどう思われますか?

 そしてもしこれが正しいようであれば、ぜひそのシンプルなルールを見つけて、様々な社会や環境の問題を解決したいなぁ。

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2009年11月11日

大は小を兼ねない

 今日の午前中は某省庁の研究会だったのですが、その中で非常におもしろかった話しをご紹介したいと思います。

 環境問題など社会全体に関わる問題ではしばしば、「部分最適ではなく全体最適を目指せ」(※)と言われます。良かれと思ってどんどんファインチューニングしていっても、それが部分最適でしかない場合には、かえって全体に悪影響を与えてしまう。それよりも、もう少し広い範囲を見て、できれば全体を見て、その中で最適化する方がいい場合が多いということです。

 その例として委員の善養寺幸子さん(オーガニックテーブル株式会社 代表取締役)が挙げてくださった例は、ヒートポンプを使った冷暖房です。

 日本のヒートポンプは非常に高性能です。ヒートポンプを使った冷暖房で、家庭におけるエネルギー効率をかなり上げることは可能です。効率の悪い冷暖房を使っている場合には、ヒートポンプ式の冷暖房(エアコンがそうです)にすることで、効率的に冷暖房できるようになります。

 ところがです。ヒートポンプを入れた後で、さらに根本的に家の断熱性も高める改修工事をするとどうなるか? 当然環境性能は高まるはずなのですが... 実はそれでも思ったほど改善できないことがしばしば起きるのだそうです。

 なぜか? 断熱性が高くなった家では、その前に比べて小さな仕事で冷暖房が出来てしまうのです。すき間風などないわけですからね。ところが、ヒートポンプの大は小を兼ねません。最大能力に近いところで運転する分には非常に効率の良いヒートポンプも、小さな出力で運転するとそれほど効率は良くならないのだそうです。となると、せっかく必要な出力が小さくなったにも関わらず、必要な電気エネルギーはあまり減らないということが起きるのだそうです。

 ですから冷暖房と家を個別に最適化してもダメで、家というシステム全体で最適化を図る必要がある。システムとしての性能が重要だというわけです。なるほどですね。

 また、家を改修する予定がなかったとしても、最悪の日(もっとも暑い日やもっとも寒い日)にあわせてヒートポンプの容量を選ぶのも、同様に愚かしいことになります。もしそんなことをすれば、一年の大半は効率が悪いところで運転をすることになります。それよりも、通常は最大能力周辺の効率が高いところで運転をし、それで能力が足りなくなる日には我慢するか、他の追加的手段でカバーすればいいわけです。

 「最悪の日に合わせてはいけない」、なるほどじゃありませんか?

 ヒートポンプの場合には、最大能力の付近で運転する場合が効率が良くなるという独特な性質も作用しているわけですが、似たような考えはいろいろな場面に応用できそうです。

 私たちはついつい「大は小を兼ねる」と、日頃使いもしない容量や能力を求めてしまいがちです。でも実際には、その「大」が必要になる場面は極めて限られるのであれば、そのときにまた別のカバー方法を考えれば十分なのではないでしょうか。

 さすがに都会で「客間」のある家は少ないと思いますが、もしかしたら客用の布団が押し入れを占領していたりしませんか? 滅多に使わない客用の布団のために、貴重なスペースが奪われるのは、都会暮らしではかなり勿体ないことかもしれません。

 あるいはもっと言えば... 月に2,3日しか乗らない車を所有していることは、もっと勿体ないことかも....  ちなみに僕の場合には、「お腹が空いてしまうかも...」とついつい腹12分目まで食べてしまうことがよくあるので(^^;)、この強迫観念をなんとかしたいと思います(笑)。

 身の回りの不必要に大きなものを探してみると、生活はもっと身の丈になり、無駄や環境負荷も減りそうですね。

※全体最適については他の重要な視点もあるので、あまり単純化するのも危険ではあるのですが... これについては改めてご紹介したいと思います。

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2009年11月10日

高いものが買いたい

 お弁当が290円だとか、ジーンズが780円だとか、ちょっと常識では信じられないような価格の商品が話題になりますよね。もちろんその背景には景気が悪くて、少しでも安いものを買いたいというニーズがあり、また安くなければ売れないという現実もあるのでしょうが、こんなちょっと異常としか思えない価格競争には、どうも違和感を感じてしまうのです。

 理由はいくつかあります。まず、安いのには、安いなりの理由があるはずです。製造プロセスを簡略化したとか、効率良く売りさばいていますとか、そういう理由ならいいのですが、これだけの安値がそのようなことで達成可能なのか、素人からは非常に疑問に思います。

 質が良くない程度であればまだしも、食品などの場合には健康面で問題がないのか気になります。安いものはたいてい、代替原料を使っているからです。ご存じの方が多いと思いますが、ハンバーガーが安いのは、肉に脂肪をたくさん混ぜているからですし、炭酸飲料は砂糖の代わりに安価なコーンシロップを使っています。いずれも毒とはいいませんが、健康に良くはありません。

 あるいは製造過程のどこかで、誰かに無理が押し付けられているのではないか、ということも気になります。サプライヤーが買い叩かれていたり、工場で働く方々の労働条件も心配ですし、もしや児童労働も... なんて想像しちゃいます。

 もう一つは、これだけの安価な商品は、国内ではなかなか作れないだろうということです。となると、当然製造の現場は海外へ。安いものを買う→価格競争のために工場は海外へ→職を失う→もっと安いものを買うように→・・・ 以下その繰り返し。悪循環です。つまり、無闇に安いものを買うということは、日本の職場をなくすことで、つまりは私たち自身の首を絞めているかもしれないのです。

 さらに嫌なことは、安く買ったものは、やはり値段なりにしか扱われないということです。ファストフードとはよく言ったものですが、モゾモゾと口に入れ、ゴクゴクと流し込み、それでおしまい。食事というよりは、栄養補給、いやただのカロリー補給になり下がってしまいます。

 あるいは500円とか1000円で買った服に、私たちは本当に愛着を持てるでしょうか。むしろ逆です。安ければ安いほど、愛着など感じることなく、使い捨てになってしまうのではないでしょうか。もしかしたら、一回あたりの価格はむしろ高くなってしまうかもしれません(^^;) 環境にはもちろん、結局はお財布にも優しくないかもしれないのです。

 それよりも、ちょっぴり高くても、いいものを長く使う。少し痛んできたら直したり、手を入れたりしながら使い続ける。そのうちに、そのモノの中に自分のいろいろな物語が同居するようになる。さらに自分にとってかけがえのないモノになっていく。そんな使い方の方が、はるかに楽しいのではないでしょうか。

 そう考えると、安いのが本当にいいことなのかなぁと思ってしまうのです。許される範囲内ではあるのですが、むしろ高いものを買いたいと思えてくるのです。

 もちろんただ高いものを買えばいいというわけでもないし、懐具合に応じて、無理をしない範囲でというのは当然です。あるいはそのときの状況で、どうしても安いものが必要なときだってあるかもしれません。それはそれでいいと思います。

 しかし、断じて安ければいいわけではありません。安いから買うのではなく、その商品の価値に見合った対価を支払いたいと思います。そしてできれば、その商品の背景にあるストーリーまで想像して、自分が納得するモノを、それに相応しい価格で買いたいと思います。

 本当は「対価」というのもオカシイのかもしれません。等しい価値のものを「交換する」というより、自分に必要なものを準備してくれてありがとう。その感謝の気持ちをこめて、自分が他のことをして稼いだお金を差し上げる。そのぐらいの方がしっくりきます。

 お店の方に「ありがとう」と言われるのではなくて、自分の方がお店の方や作ってくれた方に「ありがとう」と頭を下げる。そんな買い物をしたいと思います。皆がそういう気持ちなれば、安ければ安い方がいい、なんて気持ちには決してならないと思うのですが... 皆さんはいかがですか?

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2009年11月09日

さらばBAU

BAUと聞いてピンと来る方は、かなりの通とお見かけします(笑) BAUとは、Business As Usual、つまり「これまでどおりのビジネス(やり方)」という意味です。気候変動予測のシナリオなどにおいて、特別な対応をせず、これまでのやり方を続けたらどうなるかなどというときに、「BAUでは...」なんて書いてあったりします。

 もちろんBAUでは困るので、なんらかの対策を取るわけですが、対策Aの場合、対策Bの場合、BAUに比べてどのぐらい改善、改悪などと比較するわけです。

 BAUは気候変動に限った言葉ではありません。生物多様性の分野でも「対策なし」という意味でしばしばBAUが出てきます。

 3週間前のACB2009の基調講演でもETH-ZentrumのFischlin博士が、今のままのビジネス(BAU)では、生態系の構造とサービスを大きく変えてしまい、生物多様性は大きく損なわれる(大量絶滅が起きる)。その結果、陸上生態系が炭素発生源になり、生態系のレジリアンスを超えてしまうという恐ろしい指摘をしていました。もっともFischlin博士はIPCCのメンバーでもあるので、BAUという言葉はお馴染なのかもしれませんが...(レジリエンスについては、「アダプテーションが試金石」をご参照ください)

 気候変動が生物多様性に与える影響を正確に紹介すると、例えば平均気温のわずか1.5-2.5度の上昇で、20〜30%の高等植物と動物が絶滅の危機に瀕すると言います。今生物種はものすごい勢いで減少していますが、それにしても20〜30%が絶滅に瀕するとは尋常ではありません。気候変化が生物多様性に与える影響いかに大きいかがわかるでしょう。

 気候が変化すれば、たとえば温暖化によってメリットを受ける生物もあるのではないか? そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。もちろんそうなのですが、Fischlin博士によれば、気候変動によってプラスの影響を受ける「勝ち組」は全体のわずか3%に過ぎないと言います。うまく適応できるものは15%、また変化を受けないのが9%ですが、残りの73%がなんと気候変動によってマイナスの影響を受けてしまう「負け組」なのです!

 つまりBAUは気候変動を確実に、しかもかなり速くもたらしますが、そのような倍、実に7割以上の生物種が被害を被るというのです。となれば、BAUというシナリオはあり得ません。生物多様性のためにも、ビジネスのあり方を変えなければいけません。早くBAUに別れを告げる必要がありそうです。

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2009年11月08日

デザインで世界は変わる

 世の中難しい問題が多いわけですが、でもホンのちょっとしたアイディアで一気に問題が解決する場合もあります。最近知って感動したのは、これです!
 
 アフリカなどで、毎日水を汲みに行くために女性たちが大変な苦労をしているということは、多くの皆さんが知っていると思います。

 途上国だから、乾燥地域だから、しかたないことなのか... 水を汲みに行く方々はもちろん、様々な技術や知識を持っているはずの私たち先進国の人間も、やはりしかたないことと考えてしまいがちです。

 しかしどうですか、この発想は! コロコロと転がせば、はるかに苦労なく大量の水を運ぶことができるのです。重い水がめを頭に載せて健康に害が及ぶことを防止できるどころか、女性たちにより自由な時間を増やすことができるのです! こんな道具であれば、男の子たちも喜んで手伝ってくれるかもしれません。すばらしいイノベーションです。

 これを開発したのはデザイナーの方で、こうした素晴らしいデザインを集めた「世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある」という本があるのだそうです。もちろんすぐに注文しました。以前、サスラボで紹介した、100ドルパソコンも載っているようです(「$100パソコンは世界を変えるか?」参照)。届くのが楽しみ!

 このQドラムを現地で作れば、これは立派なBOP。あるいは、まずこのQドラムを作って寄付するだけでも素材メーカーらしいCSRが出来ます。どこかの企業、考えないかな?

 それにしても悔しいのは、乾燥地域にある途上国で、毎日何百万人、何千万人という女性や子どもがこうした重労働を繰り返して来て、それを僕たちは何度も映像で見て知っているはずなのに、なんでこういう簡単な発想ができなかったのでしょうか? 僕の創造力なんかはあてにならないにしても、今まで誰も考える人がいなかったのは本当に悔しくありませんか。こういうところにこそ、私たちの頭が使われるべきだと思うのです。
《参考リンク》
世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある」(情報考学 Passion For The Future)

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2009年11月07日

透明性が武器

 昨日行われたサステナビリティ日本フォーラムのシンポジウムは、「中国の環境問題  〜日本企業と中国NGOの協働〜」がテーマでした。第一部で基調講演をした、公衆と環境研究センター代表の馬軍さんの話が非常に示唆に富むものでした。(Twitterで中継もしてみました)

 「公衆と環境研究センター」(Institute of Public & Environmental Affairs、以下IPE)は、2006年に中国の「中国水汚染地図」を作り、インターネットで公開したことで有名です。さらに2007年には、「中国大気汚染地図」も公開しています。
参考:「「中国大気汚染地図」に4千社以上がリストアップ」(「人民網日本語版」2007年12月13日)

 中国でそんなことが出来るのかと思われるかもしれませんが、それが出来たヒミツは.. IPEはすべて政府が公表したデータを使用しているのです。ですから政府はもちろん、企業としても反論しようがないのです。

 環境基準に違反し、大気汚染の原因になっている企業は、各地方の政府が発表しています。しかしそれは必ずしも使い勝手が良いものでもありませんし、また各地方だけのものです。そこでIPEは中国全土のそうしたデータを一つにまとめ、検索等が容易にできるよう、使い勝手の良いインターフェースを整備したのです。「中国大気汚染地図」では、英語での検索と表示もできるようになっています。

 もちろん、それでもIPEに対して直接、あるいは地方政府を通じて圧力をかけようとする企業もいるでしょう。そのようなことはないのかと馬さんに聞いてみたら、やはりあるそうです。ではなぜそうした企業の圧力に屈さずに済むのかとお聞きしてみたら、この活動を20のNGOで共同でやっているところがポイントだと教えてくれました。IPE一つだけであれば圧力をかけることは可能かもしれないが、20のNGOに圧力をかけ、事実をねじ曲げることは難しいからです。

 中国のような政治体制下で活動するのですから、政府を敵に廻してうまくいくわけはありません。政府のお墨付きのデータを使い、政府の意向と方向を合わせ、そしてそれを徹底的にオープンにすることで、うまーく目的を達成しているのです。非常に戦略的ですね。

 また馬さんは、「インターネットは、中国のような成長途上の巨大な国にとっては福音である」ともおっしゃっていました。「もしインターネットが使えなければ、同じをことするのに莫大な費用がかかり、事実上実行できなかった」からです。

 IPEのデータベースは、衛星画像などともリンクできるようになっており、最新の技術を非常にうまく活用しているのです。

 ただもちろん、実際にはこうした活動を進める上では様々な困難があったはずです。IPEが成功した秘訣は、一番重要なのは何かとお聞きすると、馬さんは間髪をいれず「諦めないことだ」と答えてくれました。そして、さらに「透明性がもっとも重要なツールである」と付け加えていました。中国だけでなく、どこで何をする場合でも、参考になるのではないでしょうか。

 ちなみにこのシンポジウムのパネリストの一人は、パナソニック・チャイナの環境分野の責任者である荒井喜章さんでした。実はパナソニック・チャイナは、従業員の単純ミスによって排水基準を達成できない事故を起こしており、IPEの水汚染地図にも社名が掲載されてしまいました。しかし、その工場の方々の真摯な努力の結果、問題が完全に解決された企業として、ブラックリストから名前を削除された最初の企業にもなりました。

 IPEの活動も素晴らしいものですが、ミスとはいえ起こしてしまった問題を、同じような問題が再発しないように徹底的に対処した日本企業の行動も素晴らしいと思います。ただ残念なのは、IPEのブラックリストにはまだブリヂストン、デンソー、ダイキン、ホンダ、味の素など、多くの日本企業の名前が掲載されていることです。(もちろん、欧米や中国企業も多数あります) そして中には、多くの工場で違反をしていたり、地域住民の再三の抗議に対しても無反応な会社もあるといいます。コンプライアンスという点では勿論ですが、自社のブランド、そして日本の評判を守るという意味からも、ぜひ早急に根本的な対応してくださることを期待したいと思います。

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posted by あだなお。 at 23:59| 東京 曇り| Comment(0) | TrackBack(0) | CSR | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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