環境問題など社会全体に関わる問題ではしばしば、「部分最適ではなく全体最適を目指せ」(※)と言われます。良かれと思ってどんどんファインチューニングしていっても、それが部分最適でしかない場合には、かえって全体に悪影響を与えてしまう。それよりも、もう少し広い範囲を見て、できれば全体を見て、その中で最適化する方がいい場合が多いということです。
その例として委員のZさんが挙げてくださった例は、ヒートポンプを使った冷暖房です。
日本のヒートポンプは非常に高性能です。ヒートポンプを使った冷暖房で、家庭におけるエネルギー効率をかなり上げることは可能です。効率の悪い冷暖房を使っている場合には、ヒートポンプ式の冷暖房(エアコンがそうです)にすることで、効率的に冷暖房できるようになります。
ところがです。ヒートポンプを入れた後で、さらに根本的に家の断熱性も高める改修工事をするとどうなるか? 当然環境性能は高まるはずなのですが... 実はそれでも思ったほど改善できないことがしばしば起きるのだそうです。
なぜか? 断熱性が高くなった家では、その前に比べて小さな仕事で冷暖房が出来てしまうのです。すき間風などないわけですからね。ところが、ヒートポンプの大は小を兼ねません。最大能力に近いところで運転する分には非常に効率の良いヒートポンプも、小さな出力で運転するとそれほど効率は良くならないのだそうです。となると、せっかく必要な出力が小さくなったにも関わらず、必要な電気エネルギーはあまり減らないということが起きるのだそうです。
ですから冷暖房と家を個別に最適化してもダメで、家というシステム全体で最適化を図る必要がある。システムとしての性能が重要だというわけです。なるほどですね。
また、家を改修する予定がなかったとしても、最悪の日(もっとも暑い日やもっとも寒い日)にあわせてヒートポンプの容量を選ぶのも、同様に愚かしいことになります。もしそんなことをすれば、一年の大半は効率が悪いところで運転をすることになります。それよりも、通常は最大能力周辺の効率が高いところで運転をし、それで能力が足りなくなる日には我慢するか、他の追加的手段でカバーすればいいわけです。
「最悪の日に合わせてはいけない」、なるほどじゃありませんか?
ヒートポンプの場合には、最大能力の付近で運転する場合が効率が良くなるという独特な性質も作用しているわけですが、似たような考えはいろいろな場面に応用できそうです。
私たちはついつい「大は小を兼ねる」と、日頃使いもしない容量や能力を求めてしまいがちです。でも実際には、その「大」が必要になる場面は極めて限られるのであれば、そのときにまた別のカバー方法を考えれば十分なのではないでしょうか。
さすがに都会で「客間」のある家は少ないと思いますが、もしかしたら客用の布団が押し入れを占領していたりしませんか? 滅多に使わない客用の布団のために、貴重なスペースが奪われるのは、都会暮らしではかなり勿体ないことかもしれません。
あるいはもっと言えば... 月に2,3日しか乗らない車を所有していることは、もっと勿体ないことかも.... ちなみに僕の場合には、「お腹が空いてしまうかも...」とついつい腹12分目まで食べてしまうことがよくあるので(^^;)、この強迫観念をなんとかしたいと思います(笑)。
身の回りの不必要に大きなものを探してみると、生活はもっと身の丈になり、無駄や環境負荷も減りそうですね。
※全体最適については他の重要な視点もあるので、あまり単純化するのも危険ではあるのですが... これについては改めてご紹介したいと思います。
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