どのような結論になるかまだまだ予断を許しませんが、コペンハーゲンではCOP15の熱い議論が続いてます。この会議の結果が地球の未来を決めると言っても過言ではありませんから、さらに注意深く見守りたいと思います。
さて、COP15で前向きな目標が出来たとして、日本もそれにコミットすれば、排出権取引を導入するのも時間の問題でしょう。キャップを被せるのは不公平、自由な経済の発展を阻害するとの一部企業による反対論は、どうも身勝手な都合の言い訳のように聞こえます。ただ、仕組み作りをうまくしないと不公平が生じてしまう怖れはたしかにあります。
例えば、どこをベースラインにするかによって、先進的に対応を進めてきた企業が不利になり、ギリギリまで対応を後延ばしにしてきた企業が有利になってしまうという可能性はあります。
あるいは、排出権が高くなることを見越した投機的な業者などによって、排出権の価格が吊り上げられてしまう可能性もあり得るでしょう。
このようなことでは、排出権取引が導入されても、大幅な削減は出来ないかもしれません。それでは、どうしたら各社の排出量に応じてもっと公平な負担を実現し、実質的に排出量の削減をできるのでしょうか?
この難問について先日、麗澤大学の高巌先生から非常に興味深い提言をお聞きしました。
キャップを被せずに、自主的な排出権の購入としながら、不公正も防げる方法です。
その方法では、政府が企業に排出権を有償で割り当てることが基本になっています。というか、企業は一定価格で排出権を政府から買うのです。排出量が多い企業はたくさん、少ない企業はそれに応じた排出量を買います。
余った排出権は翌年に繰り越すことは出来るのですが、
3年後には失効します。ここが
最大のミソです。したがって、将来排出権が高値になることを見越した投機的な購入は避けられ、企業は本当に必要な分だけを購入することになります。
もちろん排出権を買う量が少ないほど負担は少ないので、排出量を削減する企業の取り組みも進みます。実質的に排出量が削減されるのです。
この方法ではキャップを被せる必要がありませんので、企業は自らが必要な量の排出権を購入し、必要量を継続的に削減しようとするはずです。
全量購入となると経済に対する負担が大き過ぎるという意見もあるかと思いますが、当初は使用した排出権については、その9割程度を年度末に還付金として払い戻すので、実質的な負担はそれほど大きくはありません。ただしこの還付率はだんだん下げていきますので、なるべく早い時期に排出量を削減する方が有利になります。
この方法が素晴らしい点は、既にこれまで自主的に削減してきた企業や、これから頑張って急速に削減を進めようという企業が報われるということです。
頑張った企業に有利な仕組みになっており、いつまでもグズグズしている企業や、排出権で一儲けしてやろうという組織が有利にはならないのです。
オークションでもいいのではないかと思いましたが、一定価格にした方が、価格が吊り上げられて体力のない企業等が困ることがないだろうとの配慮だとのことです。この点もなるほどです。
なかなか理想的な方法に思えますが、いかがでしょうか? 日本国内でこの制度を試行し、うまく行くことを確認して国際的に提案しましょうというのが高先生の考えです。
この方式に関して僕が唯一心配なのは、排出権の価格です。高先生は現在の市場価格に一定のデフォルト率を加えたものにすればいいというお考えなのですが、現在の市場価格は、日本国内での削減コストよりははるかに低いものになっています。したがって、自分で削減するより排出権を買い続けた方がいいやという考え方をする企業が出ることが予想されます(特に還付率が高い最初のうちは)。
こうしたモラルハザートを防ぐためには、やはり実際の削減コストを勘案した
絶妙な価格設定をする必要があるのではないかと思います。このことついても、今後さらに研究が進むことを期待したいと思います。
このノン・キャップ方式にご興味のある方は、まずは以下の麗澤大学のプレスリリースをご覧ください。研究成果の概要と、関連する2つの論文へのリンクがあります。論文はリンク先から、PDFでダウンロードできます。
■「
麗澤大学経済学部長の高巖教授らが「温室効果ガス25%削減」に向けた提案を発表」(麗澤大学)
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posted by あだなお。 at 00:48| 東京 ☁|
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