2010年09月28日

「生物多様性経営」発売になりました

 以前にも予告した新刊『生物多様性経営 持続可能な資源戦略』がいよいよ発売になりました。昨日27日が全国発売日だったのですが、昨日はご報告する余裕がなくて、一日遅れでのご紹介です。



 漢字が並んで、ちょっと取っ付き難い印象かもしれませんが、表紙は鮮やかなモルフォ蝶。平積みしてあれば、すぐにわかります(笑)。なぜモルフォ蝶が表紙なのかは.... 本書を読んでいただければきっとご理解いただけるでしょう。

 目次をざっとご紹介すると...
序章 「石油」から「生物」へ
第1章 自然にタダ乗りする「裸のサル」
第2章 自然生態系を壊す5つの企業活動
第3章 経済のルールが変わり始めた
第4章 生物多様性は経済条約ー名古屋COP10の意味
第5章 生物を救う3つの経済メカニズム
第6章 今、企業に求められていること
第7章 21世紀の「生物多様性経営」
終章 「自然の法則」に学ぶビジネスモデル
 となっています。

 もともとあまりそういうつもりではなかったのですが、出来上がってみると、企業と生物多様性に関わるトピックスはおおよそ漏れなくカバーされているので、これ一冊で企業と生物多様性についてほぼ理解することも出来ると思いますし、逆に仕事の現場で関わっている方にも目新しトピックスも、いくつかあるはずです。

 しかし、そんなことよりこの本の一番の特徴は、なぜ企業が生物多様性に取り組まなければいけないのかという問いに、正面からストレートに答えようとしたところと言っていいかと想います。

 僕が企業にとって生物多様性が重要である理由は、生物が資源として今後ますます重要になるということです。食料はもちろん、バイオ燃料、バイオプラスチック、医薬品..... 石油が今のように自由に使えなくなったとき、生物がそれに取って代わるはずです。なぜなら、生物資源は持続可能だからです。

 しかも生物資源には、私たちがまだ知らないような優れた性質もたくさんあります。これからそうした性質はどんどん発見されるでしょうし、私たちはそれを直接利用したり、真似ることで、環境負荷を削減することも可能になるはずです。

 しかし、そのためにはもちろん、クリアしなくてはいけない課題もあります。どこから生物資源を確保するのか? どうやって生物資源を持続させるか? そうした問題を今から考えておく必要があります。

 生物資源を確保することは、生物の生息地を確保すること。つまり、生息地を保全する必要があります。また、より多くの多様な特性を持つ生物資源を活用するためには、そうした性質を持つ多様な生物を保全しなくてはいけません。つまり、生物種の多様性を保全する必要があるのです。

 ここまで来れば、もう結論はおわかりでしょう。多様な生物の生息地を守ること、多様な生物種を守ること。これこそポスト石油時代に企業が成功する鍵であり、そのような「生物多様性経営」こそが、これからの企業のあるべき姿になるはずです。

 生物多様性を保全するために様々な手を打つことは、企業活動に足かせを課すのではありません。より持続可能な企業へと脱皮するために必要な準備をするということです。

 その先にどんな未来があるのか。そこに辿りつくために今企業は何をしなくてはいけないのか。僕の考えをすべてこの一冊に詰め込みました。ぜひお読みいただき、ご感想をお聞かせください。

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追記(2010/09/29)
 一つ重要なことを自慢するのを忘れてました(笑)。実はこの本、表紙も本文もすべてFSC認証紙を使っています。日本ではまだ珍しいと思うのですが、そうすることが生物多様性を本流化することにとって重要と思い、編集者の方が頑張ってくださいました。FSC認証紙の手触りも、ぜひ実物でご確認ください。


posted by あだなお。 at 23:50| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月23日

飽きない味、飽きない街

 これまで海外というと、仕事でもプライベートでも東南アジアが圧倒的に多かったのですが、去年、今年となぜかわりとフランスと縁があります。というわけで(?)、先週は一週間パリに出張してました。

 月曜日は、先ほど22:50までNHK BS1で放映されていたPROJECT WISDOMの「生き物を守る"コスト"は誰が払うのか 〜途上国 vs 先進国〜」にビデオ中継で出演。別に演出というわけではないのですが(笑)、たまたまスケジュール上、こうなってしまったのです。

 翌日火曜日から木曜日までは、ビジネスと生物多様性オフセットプログラム、通称BBOP(Business and Biodiversity Offsets Program)のアドバイザリーグループの会合でした。生物多様性オフセットの国際ルール作りのために、原則、判断基準(criteria)、指標(indicator)作りの作業と、途上国に制度を導入するためのコンサルテーションが中心でした。日本からは僕を入れて4人が参加。企業からの参加者も2社あり、日本の企業の間でも少しずつ関心が高まっているのだと思います。

 しかし、もっとすごいのは途上国で、今回はアフリカとアジアからそれぞれ3ヶ国、計6ヶ国が参加。いずれも関係省庁の担当責任者で、これらの国へ生物多様性オフセットのプログラムを導入するための準備が始まっているのです。このまま進めば、これらの国々では、日本より早く制度が導入されるでしょうね。
 
 さて、ホテルに終日缶詰めとは言え、パリで会議だと嬉しいのは、食事がおいしいこと(笑) 朝食のパンとカフェも、コーヒーブレークのプティフールも、いちいちおいしいので、ついつい食べ過ぎてしまいます。もちろん夜もゆっくり食事を楽しみ、最後はフロマージュにデゼール... かなりカロリー過剰です(^^;)

 しかし、おもしろいのは、食べ物はおいしいし、いつもたっぷりなのですが、その内容はおそろしく保守的であることです。朝食のパンだったら、クロワッサン、パン・オ・ショコラ(チョコ入りのパン)、バゲットなどといつでも、どこでも、ほぼ決まっています。街中にたくさんあるブーランジェリー(パン屋さん)の店頭にもおいしそうなパンやケーキがたくさん並んでいますが、どこのお店でもバリエーションはほぼ同じ。食事も店によって若干の違いはあるものの、メインの料理などはほぼ同じ。

 もちろん味つけやプレゼンテーションは店毎にまったく異なるので十分楽しいのですが、日本のように変に凝った、不思議な新メニューは、あまり登場しません。保守的、頑固、変化が嫌い。ネガティブに捉えることもできるかもしれませんが、奇を衒ったりしなくても、完成度が高く、時代を超えた価値(おいしさ)に対する自信があるのだとも言えるのではないかと思います。

 一つひとつがおいしいことや、毎回時間をかけてたっぷり食事を楽しむことを見ていれば、食に対する興味が高いことは間違いありません。しかし、求めるものの方向性が、新しいもの、変わったもの、ではなくて、今までと同じでいいので、変わらぬ良いもの、なのでしょう。そして実際、同じようなメニューでも、決して飽きを感じることはありません。

 これは食べ物だけでなく、町の景色についても同じことが言えるように思います。ご存じのように、パリの街の中心部は、この百年ぐらい、あまり変わっていません。もちろんガラス張りのモダンな建物もいくつかはありますが、建ててから二、三百年という建物も少なくありません。その間に、電気を使うようになり、今やインターネットや携帯電話のネットワークも張り巡らされているのですが、電信柱やアンテナの類はほとんど目に付きません。建物の中は大幅に手を入れてリノベートしてあっても、公共の財産である建物や街の景観は、新しくするよりも、完成された、古いものを守ることに意味があると考えているのでしょう。

 そしてそのことが、フランスの観光客数世界第一位を揺るがぬものにしている一因であることは間違いないでしょう。翻って、東京に戻ってきて見れば...  統一感のかけらも感じられない、色と形の不協和音だらけの街並みに、毎度のことながら溜息が出てきます。一つひとつの建物は随分立派なものや、凝ったデザインのものあります。そしてもちろん、建物の新しさという意味では、圧倒的に新しいものばかりです。なのに、美しさやアイデンティティがまったく感じられない街並み.... かたや時間を経るほどに価値が高まるのに、かたや生まれたときがもっとも輝いていて、あっという間に価値は低下。同じお金をかけているのに、もったいないことです。

 食べ物も、珍しいもの、新しいものはたくさんあっても、しみじみとおいしいものは案外限られているのではないでしょうか。安いもの、珍しいものは、はじめのうちこそ人を惹きつけられるかもしれませんが、すぐに飽きられてしまいます。しっかりとした中身のある、きちんとした食べ物は、用意するのに手間もかかりますので、それなりの費用もかかります。しかし、その普遍的な価値はなかなか色褪せることはありませんし、その中でさらに深めていくという愉しみもあります。本当は日本人は、決められた枠の中でとことん突き詰めていくということが得意だったのではないかと思うのですが...

 変わらないけれど、飽きさせない。そのためにはどうしたらいいのか? 持続可能性を考えるのに、そんなことがヒントになりそうな気がしました。

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posted by あだなお。 at 00:50| 東京 ☔| Comment(1) | TrackBack(0) | ヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月10日

情報開国!?

 日本の消費者は大人しい。いや、自分自身の損得や安全性に関することには必要以上に厳しいのに(^^;)、他人のことや社会全体のことになるととたんに感心が薄くなる。そんなちょっと寂しい傾向がこれまでよく指摘されましたし、それが日本のCSRをややユルイものにしているという分析も言われます。

 実際、サスラボでもご紹介したネスレに対するグリンピースの強烈なネガティブキャンペーンも、日本語サイトが作られたにも関わらず、日本国内ではさほど話題になりませんでした。児童労働についても、海外では大スキャンダルになるのに、日本ではせいぜい社会面に小さく載るぐらいです。

■「NGOを舐めてはいけません

 ところが、最近なんだか、日本の消費者も変わって来たのかなと思うことが増えてきました。例えば、無印良品がイスラエルへ出店することに対する反対キャンペーンであったり、資生堂などに対して大規模な動物実験反対のキャンペーンが行われたりするようになっています。

《参考リンク》
■「Stop無印良品キャンペーン:アパルトヘイト国家イスラエル出店に反対します
■「化粧品の動物実験反対キャンペーン

 こうした動きが広がってきた一つの理由は、やはりインターネットでしょう。これまでは消費者=一般市民は情報の受け手でしかなかったのが、自由に発信できるようになったということが大きいと思います。

 いや、webならもう10年前、いや20年近く前から始まっている、という反論が聞こえてきそうですが、最近になって変わってきたのは、webよりむしろSNSやソーシャルメディアの台頭が大きいのではないかと思います。

 実際、僕もこうした情報の多くをtwitterで入手していますし、自分自身も中継点となって、それがどんどんと拡散していきます。つながりが多いユーザが発した言葉は、それがたとえ一般市民の発言であっても、あっという間に数万人、数十万人に伝搬するのえす。

 もしかしたらこうした活動そのものは、これまでも草の根でたくさんあったのかもしれませんが、そうした情報が伝わるようになったということが大きいのだと思うのです。そして、さらにそうした情報が刺激となって、自分自身でも情報を拡散させていく。そのスパイラルが効き始めたということです。

 またもう一つ興味深いことは、ツイッターをはじめとするインターネット上で流れている情報と、マスコミが発する情報との間に随分ギャップがあることが明らかになってきたということです。もちろん一律にどちらが正しい、間違っているとは言えないのですが、マスコミが発する情報がすべてではない、必ずしも正しいとは限らない、そのことに多くの市民が気がつき始めているように思います。

 たしかに「日本人は大人しい」のかもしれません。しかし、情報を知ってしまった、そして自分でも情報を発信できるようになった日本人は、これまでと同じままでいるかどうかはわかりません。ちょっと大げさなこと言えば、ソーシャルメディアという黒船の登場で、情報鎖国が開国しつつあるのかもしれません。

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posted by あだなお。 at 12:34| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月09日

エクアドル発、逆転の発想

  エクアドルという国をご存じでしょうか? 南米の太平洋側にある28万平方キロのこじんまりとした国です。エクアドルというのはスペイン語で赤道のことだそうで、その名のとおり、赤道が通っており、生物多様性の世界ではガラパゴス諸島を擁することで有名です。

 ガラパゴス諸島やアマゾンでのエコツアーも大きな産業ですが、一番大きな外貨獲得原は石油で、輸出額の約4割を占めるそうです。

 その「産油国」のエクアドルが、今とてもユニークな提言を国際社会に行っています。同国東部のアマゾン山中のヤスニ国立公園には大量の石油資源が眠っているのですが、これを採掘することを永久に放棄する代わりに、この石油を採掘していたら得られていたであろう利益の半分を、環境保全のための資金として国際社会に拠出を求めるというアイディアです。

 この油田は推定8億5000万バレルもの埋蔵量があり、同国の埋蔵量全体の1/5にあたるそうです。それを放棄するというのは大変なことで、そのことで60億ドル以上の利益がフイになるというのです。

 一方、国際社会はこのことで、4億トンもの二酸化炭素の放出を未然に防げますし、生物多様性の豊かな貴重な森林も無傷で保全することができます。だから、36億ドルを同国が持続可能な発展のための資金として提供して欲しいというのです。

 集められたお金は再生可能エネルギーの開発や、森林保全のための費用として使われるそうです。このヤスニITTプロジェクトがうまく行けば、エクアドルは森を破壊せず、二酸化炭素も出さずに、自分たちのお金も使わずに持続可能なエネルギー社会へとシフトできるのですから、すごいアイディアです。

 そうは言っても、直接的な見返りなしに36億ドルも払うのは高いと思いますか? でもちょっと待ってください。私たち先進国がいつも言っているのは、「石油を使う量を減らして、二酸化炭素の発生を抑制しよう」、「豊かな生物多様性を擁する貴重な生態系を保全しよう」ですよね? それを実現してくれるというのですから、その対価を払うのはむしろ「当然」であり、エクアドルの言っていることは正論なのではないでしょうか? この基金に資金を提供しないことを正当化するのは、なかなか難しそうです。

 それに、エコカー補助金や家電エコポイントにいくら使われたか、皆さんご存じですか? 3週間繰り上げて7日に打ち切られたエコカー補助金の予算総額はなんと予算総額は5837億円、家電エコポイントの予算総額は5267億円。両者をあわせると、なんと1兆1104億円ですよ! 一方、エクアドルが求めている36億ドルは、3000億円強です。単純に数字だけ比較しても意味はないのですが、それでも十分に実現性のある、その気になれば拠出可能な数値であることがわかるでしょう。そして、CO2削減だけで見ても、どちらが効果があるんでしょうか?

 そう考えれば、石油開発をしないから36億ドル出して欲しいというエクアドルの提案は、むしろいい提案なのではないかとも思えてきます。

 ちなみに、すでにドイツ、スペイン、ベルギーなどが出資を約束しており、フランスやスウェーデンも出資するであろうということです。今週、エクアドルのコレア大統領らが日本にも資金拠出を求めに来日したのですが、COP10の議長国である日本は、これにどう応えるのでしょうか?

 それにしても、この逆転の発想おもしろいですよねぇ。実は僕はこの話を、大統領と一緒に来日された同国のDr. Maria Fernanda Espinosa文化庁官とDr. Marcela Aguinaga環境大臣から直接お聞きしたのですが、二人とも女性! しかもAguinaga環境大臣はかなり若い方でびっくりしました。こんな人事にも、あるいはこんな人事だからこそ、大胆な発想ができるのかもしれませんね。

<参考リンク>
■"Yasuni ITT Project"

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posted by あだなお。 at 01:24| 東京 ☔| Comment(2) | TrackBack(1) | 政治・政策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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