2011年02月21日

なぜTPPは問題なのか?

 このところやや鳴りを潜めているようにも思えますが、TPP、すなわち環太平洋戦略的経済連携協定へ参加するかどうかは、これからの日本の命運を大きく左右する問題です。経済に非常に大きな影響を与えるのはもちろん、下手をすると、持続可能な社会が構築できるかどうかという根幹を揺るがす大問題です。

 私個人としては基本的にはTPPへの参加は見合わせるべきだと考えていますし、もしどうしても参加を検討しなくてはいけないのだとしても、慎重の上に慎重を重ねる検討を行い、決して拙速に判断すべき問題ではないと考えます。管総理は「APEC首脳会議までに基本方針を決定する」と期限を切った指示をしていますが、難問に対して自らこのように期限を切ることが外向的に果たして正しいやり方なのか非常に疑問に思います。昨年の、鳩山前首相の失敗が思い起こされてしかたがありません。

 したがって、この問題については、その影響をじっくりと検討する必要があると思うのですが、今日はそのために参考になりそうな意見をいくつかご紹介したいと思います。

 TPPに参加すると何が問題なのか? 前原外相が言う「日本の国内総生産(GDP)における第1次産業の割合は1.5%だ。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっているのではないか」を信じる方には、まず以下の反論が参考になるでしょう。98.5%というのが、まったくまやかしの数字であることがわかるはずです。
■「自動車・家電輸出がそんなに重要か」(三橋貴明のTPP亡国論、日経ビジネス、2011年2月21日)

さらに、なぜTPPはダメなのか、何が本質的な問題なのかについては、内橋克人さんのお話が非常に参考になると思うので、ご紹介いたします。けっして農業だけの問題ではないことがわかるでしょう。
■「異様な「TPP開国論」歴史の連続性を見抜け 内橋克人氏講演会」(農業協同組合新聞、2011年2月21日)


 それでも、もし日本がTPPに参加したときに、何が起きるのか。それについては、ビル・トッテンさんがNAFTA導入によってメキシコで実際に起きたことを例に警告していることが参考になるでしょう。実際に起きたことだけに、説得力があります。
■「No.947 不公正もたらす“自由”」(アシスト:コラム Our World、2011年2月15日)

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posted by あだなお。 at 14:35| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | 政治・政策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月04日

写真でいまのエジプトを見よ

 日本のメディアは表面的にしか報道していませんが、写真で見れば、今本当にカイロがどのような状態なのかが伝わってきます。以下のサイトをご覧ください。

 なぜ日本のメディアはこうした写真や映像を放映しないのか、まったく不思議です。

■"A harrowing, historic week in Egypt(エジプトの痛ましい、歴史的な一週間)"(bosoton.com)

■"Secret police blamed as peace protesters are gunned down in the siege of Cairo(カイロ包囲の中、秘密警察が平和を求める抗議者に発砲)"(The Daily Mail)

■"Photos from the Protesters in Egypt(エジプトで抗議する人々からの写真)"(The New York Times)

 以下のアムネスティの特設ページも是非ご覧ください。

■「変革を求めるエジプト デモ参加者を襲撃から保護し、情報の流れを自由に」(アムネスティ・インターナショナル日本)


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posted by あだなお。 at 00:23| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 平和 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月03日

シンポジウム満載の2月

 2月はシンポジウムが多いですね。生物多様性関連のものも多数あり、直接関わっているものだけでも3件あります。COP10後は、個別企業さんからのお問い合わせや対応の方が多かったので、オープンのシンポジウムはちょっと新鮮です(笑)

 まず2月17日(木)に国連大学で開催されるのは、国際シンポジウム「生物多様性を測る〜企業で使える生態系サービス指標〜」です。

 東北大学の生態適応グローバルCOEの主催による3回目の国際シンポです。昨年は生物多様性オフセットについて各国からの紹介があり注目を集めましたが、今年は生物多様性や生態系サービスをいかに計るか、指標についてのシンポジウムです。企業の方々はいま一番興味があるところではないでしょうか。

 具体的には、WBCSDによるCEVや、UNEP-WCMCの独自の指標プログラム、あるいはGRIと共同で開発中の指標、またBirdlife Internationalなどが開発している指標についてご紹介いただき、後半では日本企業の皆さんとその活用や課題について議論します。僕はパネルディスカッションでコーディネートをします。


 翌週の2月23日(水)には、日本企業に生物多様性の重要性を目覚まさせたとも言ってよい、三井住友海上の「企業が語るいきものがたり」、今年はついにPart 4となりました。今年もJBIBが協力して、いま日本の先進企業が何をしているのか、何を目指しているのかが紹介されます。一番の注目は、JBIBが開発した「土地利用通信簿」でしょう。

 おっとあまりネタをバラしたり、特定の話題だけ強調してはいけませんが(笑)、COP10の総括や、社内推進の方法、また、定量化手法についてなど盛りだくさんです。企業人の方は必ず参加すべきシンポジウムと言って良いと思います。僕は最後のパネルディスカッションのコーディネートを行います。


 さらにその翌日24日(木)には、再び国連大学で、シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜 認証パーム油製品の動向」が開催されます。

 いよいよ認証パーム油が上市し、欧州のトップブランドは、メーカー、小売とも、一斉に認証パーム油の使用へのコミットを表明しています。RSPOの認証パーム油とは何なのか、欧州市場はどのように動いているのか、残された課題は何なのか。多くの消費剤メーカーや小売業、さらには商社の方々や消費者の方にも、ぜひご参加いただきたいシンポジウムです。

 関連業界にとって重要なのは当然ですが、パーム油は制度作りがうまくいっている原料でもあるので、生物多様性に配慮した原材料調達を考えているあらゆる業種にも役立つと思います。僕は基調講演とパネルディスカッションのコーディネートを担当します。


 それ以外にも、例えばABSについては、「2011 ライフサイエンス知財フォーラム ライフサイエンス分野における生物多様性条約(CBD)〜 あなたの研究や特許は大丈夫ですか? 〜」というちょっと扇情的なタイトルのフォーラムも開催されます。こちらは2月10日です。製薬はもちろん、食料、飲料、化粧品など、生物原料をお使いのメーカーの方は必見でしょう。


 企業の方々には、こうしたシンポジウムで最新の知見を入手して、新年度からはさらに本格的に生物多様性の保全に取り組んでいただければと思います。


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posted by あだなお。 at 11:37| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 生物多様性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月02日

2011年に食料危機が起きる10の理由

 アース・ポリシー・インスティチュートのレスター・ブラウンの最近のリリースに、2011年に、いやこれから継続的に食料危機が生じる原因が要領よくまとめらていました。
出典:"The Great Food Crisis of 2011" (Earth Policy Institute, Plan B Update, 2011年1月14日)
 これを読むと、いま起きつつある食料危機がきわめて構造的なものであることがよくわかります。つまり、食料(穀物)の需要は増大を続けるのに対し、供給はむしろ減少気味であるので、両者のギャップは拡大し、これからこの危機的状況はますます厳しくなるからです。

 具体的に需要を押し上げる要因は以下の通りです。
・人口増加
・富裕層の増大(肉の消費の増加)
・バイオ燃料の使用増加

 一方、供給は以下の要因で制限ないし減少を始めています。
・土壌流失
・帯水層の枯渇
・耕地の農地以外への転用
・潅漑水の都市への転用
・農業の進歩による増収の限界
・気候変動(熱波、氷河融解)

 いずれもこれまでも言われてきたものばかりですが、こうして並べてみると改めて、これまでのトレンドがこれからも変わりようがない、いやむしろ強くなるということがよくわかります。

 興味深い数字をいくつか上げておくと、世界の人口速度は1970年代の毎年2%というピークからは減じており、1.2%に落ちています。しかしそれでも今なお年間8000万人、つまり、21万9千人の食いぶちが毎日増えているのです。毎日21万9千皿の食事を増やしていかなければならないと想像すると、クラクラしてきませんか?

 また農業技術の進歩について言えば、日本は農業生産性が高い国の一つですが、日本のコメの単位面積あたりの収量は、過去14年増えていない、つまりもう限界に達しているということです。もちろん途上国はまだ改善の余地はあります。しかし、日本のような農業は、大量のエネルギーと水を注ぎ込んだ集約的なものであり、エネルギー収支的にはむしろ悪いし、持続可能ではないことも忘れてはいけないでしょう。

 それ以外にも、 2008年の食料危機がそうであったように、世界的に余ったお金が投機的に穀物市場に流れ込んでくるリスクを指摘をする方もいます。投機が高値を作り、さらにそれが投機マネーを呼び込むという悪循環です。バブルがはじけて痛い目にあう投機家は自己責任でしょうが、それとはまったく無関係の普通の人がその影響で食料を買えなくなってしまうというのは大問題です。

 以上10の要因を考えれば、食料価格の高騰はけっして一時的なものではなく、もちろん多少のバラツキはあるにしても、長期的には確実に続いていくのがトレンドであることがわかります。

 エジプトの政治不安もあり、石油価格も再び急上昇し始めました。食料価格にはますます注意を払う必要がありそうです。

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posted by あだなお。 at 14:25| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | 食べ物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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