2008年08月13日

ゾッとした景色

 先週、青森を訪れたときにびっくりしたことがあります。道路がとてもよく整備されているのです。たしかに主要幹線の国道ではあるのですが、それほど大きくない町と町をつなぐだけの交通量もそう多くない道なのに、片道2車線、場所によっては3車線の、実に広々とした立派な道がまっすぐに続いていました。そして道路の脇には屋上に巨大な看板を掲げた郊外型の安売店が並びます。

 こんな言い方をすると失礼かとは思いますが、青森の片田舎まで、こんな光景になってしまったのかと、驚きと恐ろしさを禁じ得ませんでした。お店のさらに後ろには美しい水田やリンゴ畑が広がっているのですが、道路沿いは無機質できわめて醜悪な光景です。

 ガソリンスタンドと大型スーパー、そしてハンバーガーショップにチェーン展開のレストラン。生活している人がいることが感じられない、砂を噛むように味気ない乾いた景色。そんなアメリカの風景がいつの間にか日本のしっとりした田園風景を置き換えてしまったようで、一瞬、自分が今どこにいるのかわからなくなったほどです。

 そしてその時に思い出したのが「ファスト風土化する日本―郊外化とその病理」という本です。バイパスが整備され、郊外に大型のショッピングセンターができ、そこへ車で買い物に出かけるようになり、消費することが唯一のエンターテイメントになる。そのことが都市だけでなく、人々の心を空洞化させ、コミュニティは液状化する。そんな日本の地方の姿を描き出した衝撃的な本です。「下流社会」がベストセラーになった三浦展氏の2004年の作品ですが、今なお、いや今いっそうリアリティをもって迫って来ます。

 以下は表紙の裏に書いてある説明と目次です。
のどかな地方は幻想でしかない!
地方はいまや固有の地域性が消滅し、大型ショッピングセンター、コンビニ、ファミレス、カラオケボックス、パチンコ店などが建ち並ぶ、全国一律の「ファスト風土」的大衆消費社会となった。
このファスト風土化が、昔からのコミュニティや街並みを崩壊させ、人々の生活、家族のあり方、人間関係のあり方もことごとく変質させ、ひいては人々の心をも変容させたのではないか。
昨今、地方で頻発する不可解な犯罪の現場をフィールドワークしつつ、情報社会化・階級社会化の波にさらされる地方の実情を社会調査をもとに探り、ファスト風土化がもたらす現代日本の病理を解き明かす!

<目次>
第1章 のどかな地方は幻想である
第2章 道路整備が犯罪を助長する
第3章 ジャスコ文明と流動化する地域社会
第4章 国を挙げてつくったエセ田園都市
第5章 消費天国になった地方
第6章 階層化の波と地方の衰退
第7章 社会をデザインする地域

 すべてがある特定の大型ショッピングセンターが出来たことのせいのように断定しているのはちょっとどうかと思いますが、バイパスと大型ショッピングセンターなどが出来たことにより、「地方」が大きく変化し、そこに住む人々の生活にも、人間関係にも大きな変化をもたらしたことは十分にあり得ることでしょう。

 私たちはその影響を考えることなく、実はとんでもない間違いをおかしてしまったのかもしれません。自分たちはどんな生活をしたいのか。どんな社会に暮らしたいのか。そのことを今きちんと考えなければとんでもない社会になってしまうという恐ろしさを感じました。

 そして冒頭の青森県の景色。それを目にしたとき、もうここまで事態は進行しているのか。そういう暗澹たる気持ちに襲われたのです。

 しかしもはやまったく希望がないというわけではありません。三浦さんも同書の最終章で、社会をデザインする地域づくりをすることが問題を解決する道だと、具体的な提案をしています。地域にコミット(関与)することで新しいコミュニケーション(関係)を生み出していく、そういう生活と仕事の場としての街を再生していくことを三浦さんは提案しています。

 人間は関係性の動物です。であればこそ、モノではなく、関係性が豊かな街や景色こそ、私たちが求めているものであり、安心できるものなのだと思います。これも持続可能な社会を考えるときの要件になりそうです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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posted by あだなお。 at 23:59| 東京 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | 本・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お久しぶりです。
あだなおさん、こんにちは。
豊かさとはなんでしょうね。
物が豊富になると心が貧しくなるなんて、皮肉なことです。
もしかしたら、自分の心の中にも空洞化した部分があるかもしれないと、そっちにゾッとしてしまいました。
でも、物欲に疲れた都心の人たちが、限界集落などに逆流して癒しを求めたりしているので、本当の豊かさを日本人は欲し始めていると考えて良いですよね?
ここ何日間かの青森の記事、私は青森に3年間いたことがあるので、懐かしく読んでいました。
いつも興味深い内容をありがとうございます。
Posted by ふぇるまーた2号 at 2008年08月14日 11:44
>地域にコミット(関与)することで新しいコミュニケーション(関係)を生み出していく、そういう生活と仕事の場としての街を再生していくこと

まさに、それが一番重要だと考え、動いている最中です。
その中心にいるのが「子どもたち」ですが、自分が今いる地域を
持続可能(社会的に立場の弱い方の負担にならない)で
楽しい子育てが可能な場に創り変えてゆこう、そう思っています。
Posted by プチeco at 2008年08月15日 00:09
>ふぇるまーた2号さん

こんにちは、お久しぶりです。

そうですね、あえて田舎に戻る方々が増えてきたのはおもしろいことですね。これこそまさに、モノではなく、生活することこそが豊かさだと人々が直感的に理解するようになったことの証左なのだと思います。

今日(8/14)の記事にも書きましたが、自分たちの手で自分たちの地域を作ろうと皆が考えるようになれば、僕はまだまだ再生のチャンスはあると信じています。

>プチecoさん

をを、動いていらっしゃいますか! それは素晴らしい。

ぜひ、お父さんたちも巻き込んでくださいね(笑)
Posted by あだなお。 at 2008年08月15日 01:10
初めてコメントさせていただきます。
わたしの出身地である秋田も同じような状況です。
まったく同じ問題意識を多くの同郷の友人・知人が持っています。
東京だけで暮らしていると見落としがちですが、
地方の変質はここ数年著しいと思います。

秋田では、草の根的に、
空洞化した市街地に人を呼ぼうとジャズフェスティバルが企画されたりしています。
個人から始まった活動です。
(リンクを貼らせていただきました)

>地域にコミット(関与)することで新しいコミュニケーション(関係)を生み出していく

ほんとうに、同感です。
このような考えが日本全体に実現されていくといいですよね!

仲小路ジャズフェスティバル
http://www.nakakojijazz.com/
Posted by mayumignon at 2008年08月15日 03:16
>あだなお。さん

え、も・もちろん(私に脅されたからじゃなくて)積極的に参加されているお父さんもいらっしゃいますよ〜(笑)

う〜ん。ただ、実際動いてくださっているのはシングルのパパさんたちだけですね。

どれだけ、当事者意識があるのかというのが非常に大きいと思います。
仲間はずれにするつもりはありませんよっ(^^;
ということでお父さん方には是非こちらでも本領を発揮されることを切にお待ち申し上げております(笑)


Posted by プチeco at 2008年08月17日 00:12
>mayumignonさん

こんにちは、はじめまして。
秋田からのアクセス、ありがとうございます!
日本中いろいろな場所から(ときには世界でも(笑))読んでくださっている方がいるかと思うと、元気が湧いてきます。

しかし、そうですか。秋田もそうなのですね...

それでもジャズフェスティバルなんていいじゃないですか! 僕も近くだったら参加したいなぁ。
まずは皆さんで思いっ切り楽しんでくださいね。
それが、地域にコミットすることの第一歩です。

ブログもちょっと拝見しました。サスラボのこともご紹介いただき、ありがとうございます!


>プチecoさん

自主参加のお父さんたちもいらっしゃいますか! それは素晴らしい。

お父さんたちも、一度参加すればきっと楽しいはずですからね。
Posted by あだなお。 at 2008年08月19日 00:11
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