英国政府の依頼を受けてニコラス・スターン卿が2006年に発表したスターン・レビューは、私たちが何も対応策を取らなければ、気候変動によるリスクと費用の総額が将来の世界のGDPの5%強にもなるという衝撃的な可能性を示し、これに対して対策費用は世界のGDPの1%程度で済むことから、経済的に考えても気候変動対策は十分に意味がある合理的行動であることを示しました。その結果、イギリス国内をはじめ、欧州各国の政治と経済が、気候変動防止に向けて総力を上げて動き出し始めたのです。
このスターンレビューの生態系版とでも呼ぶべきレポートが、先の生物多様性条約(CBD)第9回締約国会議(COP9)で発表になったTEEB(The Economics of Ecosystems & Biodiversity、「生態系と生物多様性の経済学」)です。
■"TEEB Report"(EC)←PDF
5月に発表になったのはフェーズ1をまとめた中間報告ですが、もし私たちが今のままの経済活動(Business as usual)を続ければ、2050年までには以下のような変化が起きると予測しています。
・2000年に残っている自然地域の11%が、農地への転換、インフラの拡張、気候変動などによって失われる。
・現在は比較的インパクトの少ない農業形態で使われている土地の40%が、集約的農業に用いられるようになり、生物多様性が失われる。
・サンゴ礁の60%が、漁業、汚染、病気、侵入種によって、2030年までに失われる。
そしてこうした変化による経済的損失は、森林生態系の生態系サービスだけを考えても、当初は毎年280億ユーロ相当、将来的には毎年1兆3500億〜3兆1000億ユーロ相当の現在価値と計算されます。これは世界のGDPの約6%に相当し、まさに生物多様性の危機は、気候変動と同様の重大性を持つことがわかります。
TEEBであえて困難な経済評価を行っているのは、これまでは生態系サービスは「タダ」だと思われていたために、私たちは毎日生態系サービスに強く依存しているにも関わらず、その価値を正当に評価してこなかったからです。
生態系サービスの経済価値を知れば、市場メカニズムを通じて適切な保全がなされるであろうことを期待しているのです。
フェーズ2ではさらに多くの生態系サービスについての試算や、様々な市場メカニズムの検討、また、政策立案者向けのツールの開発などが予定されており、その結果は2010年のCOP10あるいは国連総会で発表の予定だとのことです。
その頃までには、世界が生物多様性を見る目もすっかり変わっているかもしれませんね。
今日も読んでくださって、ありがとうございます。
生物多様性の価値が、なんとなくでも伝わりましたか?
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2008年09月25日
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