2008年11月06日

なぜユーカリが?

 ユーカリと言えばコアラを連想する方も多いと思います。実際それは正しい連想で、いわゆるユーカリと呼ばれるフトモモ科ユーカリ属(Eucalyptus)はオーストラリア原産の樹木です。

 ところがそのユーカリを、オーストラリア以外の場所でもときどき見かけることがあります。先日タイの東北部を訪問した際にも、田圃の中にときどきユーカリが数本並んでいる光景をよく見ました。

 同じ熱帯域とはいえ、タイにはもともとユーカリは生えていないはずです。しかも、田圃の中。植林にしてはあまりに小規模ですし... 不思議に思って案内してくれたPDAのスタッフに聞いてみたところ、製紙会社が農家の人に呼びかけて植えてもらっているのだそうです。

 ユーカリは成長が早く、病害虫への耐性が強く、苗も大量生産出来、造林技術も確立されていることから、オーストラリア以外の地域でも、パルプチップ用に栽培されることが多いのです。

 しかし同時に、様々な弊害も指摘されています。例えば、病害虫への耐性が強いというのは、ユーカリに含まれる製油成分が殺菌作用を持つからであり、周囲で他の植物が育ちにくくなるアレロパシー(多感作用)があると言われています。そして外来種であるということは、もちろん地域の生物多様性にとってはヨロシクナイ存在です。

 そうした弊害があることを知らないわけはないと思うのですが、タイの大手製紙会社ダブルエー(aA)社(正式名称はAdvance Agro)は、農家の人たちに副収入になると言って、ユーカリの植林を進めているのだそうです。
■「タイの上場企業066 アドバンス・アグロ(AA)」(新興国のタイ株 海外投資♪)

 ユーカリは成長が速いので、熱帯であればわずか3-4年でかなり大きくなりますし、7年もすると立派な大木になります。aA社は3-4年ほど育った材を1トンあたり1万バーツ(約3万円)程度で買い取るそうです。年間の平均現金収入が3万バーツ足らずの地方農家にとっては、庭先にユーカリを10本も植えておけば、たしかに馬鹿にできない収入になります。

 aA社はユーカリを植林すれば、CO2を吸収して気候変動の防止にも役立つし但(これはどんな木でも同じことですが)、農家の副収入になってタイの社会問題の解決にもなるとし、これを同社のCSR活動と称しているのだそうです。同社のWebサイトによれば、既に参加している農民は150万人に上るのだとか。
■"Double A Paper from Farmed Trees”(Advance Agro Public Co., Ltd.)

 おそらく自分たちで植林するよりも、農家に頼んだ方が安上がりなのでしょうね。うまいところに目を付けたなというは思いますが、こうやってタイ中に外来種が広がっていくのはちょっと心配な気もします。

 タイの水田は、そこかしこに大きな樹が残っていることも多く、それが独特の美しい景観を作っています。なのにそこにヒョロヒョロとしたユーカリが並んでいるのは、ちょっと違和感があるんですよね... 

 PDAでは農家の人たちにユーカリの弊害を訴えているそうですが、やはり副収入に釣られてユーカリを植える人もおり、止められないとのことです。個人的には出来れば止めた方いいのになと思うのですが、どこまでダメと言えるのか、難しい問題でもあります。こうやって外来種が広がっていくのかなぁと、複雑な気分になりました。

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
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posted by あだなお。 at 23:59| 東京 ☀| Comment(5) | TrackBack(0) | 生物多様性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あだなお様

ご無沙汰しております。
ちょうど別の植林事例で、あだなおさんがお感じと同様の懸念や‘違和感’を覚えておりました。

当事者には必ずしも悪意があるわけではないだけに、どんな言葉を選べばよいのか、代わりにどんな選択肢を提案できるのか、悩ましく感じています。
Posted by miyagawa at 2008年11月07日 10:42
丁度その直前バンコクで開かれていたCSR Asia SummitでダブルAの広報責任者による活動紹介を聞きました。確かに問題が無い訳ではないし、これをCSRと呼ぶか!っという思いもありますが、日本の製紙メーカーがオーストラリア以外で行っている大規模産業植林を考えると、「どうせやるならまだこの方がまし」という気分になったのも事実です。

ちなみにそのセッションの質疑応答は専らダブルAに集中し、結構批判的ムードも漂っていました。ただし、そういった批判的質問を出したのは欧米人。アジアの人たちからは出ないというのが、現実ですよねぇ。
Posted by 古女房 at 2008年11月14日 10:25
miyagawaさん

こちらこそ、ご無沙汰しています。お元気ですか?

ダブルエーの場合には当事者(会社)はプロですから、どんな意識でやっているのか... 多少成長は遅くても、在来種を植えるのはどうでしょうか?

>古女房さん

そうでしたか。興味深い話をありがとうございました。

CSR Asiaの会議は僕も興味があったのですが、今回の視察とバッティングしてしまい、参加できずに残念でした。

アジアの方から批判が出ないのは... まずは経済優先なのか、大人なのか、それともそこまでは意識していないのか? ちょっと理由を聞いてみたくなりますね。
Posted by あだなお。 at 2008年11月18日 00:15
最近、たくさんの大企業が森作りなどのCSR活動をしていますが、そんな中、こんなブログを見つけました。こういった意見について、足立様はどう思われますか。
Posted by 企業のCSR活動について at 2009年02月11日 06:22
東南アジアの熱帯雨林の保護も勿論大切ですが、日本国内に自然の森を取り戻すことも、日本人としてはもっと大切なのではないでしょうか。
森林保護と林業の違いをどうお考えですか。CO2も大切ですが、森林の機能はそれだけではないと思います。
Posted by 企業のCSR活動について at 2009年02月16日 00:05
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