2009年01月04日

派遣切りとCSR

 「派遣切り」なんて嫌な言葉を目にすることが増えてきました。日比谷公園の「年越し派遣村」のニュースなども、聞くたび、読むたびに辛い気持ちになってきます。派遣村を頼りに集まる方は日増しに増え、厚労省の講堂使用期限を明日の朝に控えるというのに、今日500人に達したそうです。厚労省はなんとか都内の学校跡地など代替の宿泊スペースを確保したそうですが、それも12日までなのだそうです。その後は一体どうするのでしょうか?
 東京・日比谷公園の「年越し派遣村」実行委員会は4日夜、厚生労働省が公園や東京・霞が関の厚労省講堂に寝泊まりしている約500人分の宿泊スペースとして、都内の廃校になった学校跡地の建物など4カ所を確保した、と明言したことを明らかにした。期間は12日までの約1週間。

 講堂の使用期限が5日朝に迫り、実行委が衣食住の確保を求め厚労省と交渉を続けていた。実行委によると、支援を求めて集まった人たちはこの日さらに約100人増え、約500人に達した。
出典:「500人分の宿泊スペース確保 学校跡地など都内4カ所に」(47news、2009年1月4日)

 今年3月末までには全国で少なくとも3万人の非正規雇用の方々が職を失うと厚労省は試算しているそうですが、とても全貌は掴むことは出来ないでしょうから、この数値はかなりの過小評価でしょう。日比谷公園の百倍の規模の行動を起こす必要があるのです。路頭に迷う数万人をどう守るか、日本の政治と社会がその力を問われています。
《参考リンク》
■「非正規労働者、3万人が雇用喪失 採用内定取り消しも高水準 」(日経BizPlus 2008年11月28日)

 一方、雇用に対して直接の責任を持つべき企業はと言うと... 御手洗経団連社長は「朝日新聞のインタビューに対し、失業者の住宅確保や就職支援のため、企業が出資しあって基金を創設する構想を明らかにした」そうです。また、それに留まらず「急速に悪化した雇用に対する経済界の事前対応の遅れを認め、しわ寄せを受けている請負会社への支援も発注元企業として検討する考えを示した 」とのことです。
出典:「雇用安定へ「企業の基金」提案 御手洗・経団連会長」(朝日新聞、2009年1月1日)

 遅きに失した感は拭えませんが、本気なのであれば、迅速に、十分に意味のある規模で進めていただきたいと思います。大企業であればあるほど、影響力も、責任も大きいのですから。
《参考リンク》
■「酷使して大もうけなのに 大企業が「派遣切り」マツダ・日産・キヤノン… 各地で強行」(赤旗、2008年11月7日)

 言うまでもなく雇用は企業のもっとも重要な社会的な責任の一つであるはずです。多くの大企業はCSRレポートの中で、正社員に対する待遇については若干述べていても、非正規雇用の従業員についてはその人数すら触れていません

 しかし、今や正社員よりも非正規雇用の従業員の方が遥かに多い企業は珍しくありません。というよりそういう企業の方が多いのかもしれません。百歩譲って非正規雇用も「雇用の多様性」として認めるとしても、だとすれば尚更、その多様な従業員に対する責任を果たす必要があるでしょう。

 そのためにも、まずは情報を開示することです。CSRを喧伝する企業は、CSRレポートを発行する企業は、自社がどれだけの非正規雇用に依存しているのかを明らかにし、またその処遇についても開示すべきなのではないでしょうか。そしてもちろん、どれだけ「派遣切り」したかもです。

 今まで日本のCSRにおいては、あまりに雇用のことが語られずにきました。これからはこの一番重要な課題をきちんと議論していただきたいと思います。それは単に倫理的な問題であるからではなく、企業にとっての競争力の源でもあるからです。

 しばらく前の以下のような記事を読んでいると、派遣の方々を人とすら思っていないのではないかという企業があり、読んでいるこちらまで怒りが湧き上がってきます。派遣だろうが、正社員だろうが、きちんと一人ひとりを尊重し、それぞれの力が発揮できるよう配慮しない企業に明日があるとは思えません。
 「派遣切り」の後に送られてきたのは手取り0円の給料明細だった。関東地方の半導体基板製造工場で派遣社員として働いていた30代後半の男性。11月上旬に契約打ち切りを言い渡された。だが、11月分の給料は、寮の清掃費などを差し引かれて1円も振り込まれなかった。「平気で使い捨てておいて、ここまでするのか」。男性は怒りにふるえている。
出典:「派遣切り、届いた0円の給料明細 「寮費不足分払え」」(朝日新聞、2008年12月26日)

 こんな仕打ちは問題外ですが、そうでなくても、派遣について、非正規雇用について、きちんと説明できない企業が、いくらCSRと言っても、そんなものは誰も信じないでしょう。

 それにしても、様々なサイトで「派遣切り」の記事を読んでいると、記事に「派遣」という言葉含まれるために、自動的に派遣会社の広告が表示されることが多いですね。かえって逆効果なのがわからないのかと、失笑を禁じ得ません。

長くなってしまい、ゴメンナサイ。最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。
皆さんのご意見もお聞かせください。
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posted by あだなお。 at 23:23| 東京 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | 労働・雇用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あだなお。さん

本当に辛く、悲しい状況です。

自虐したくはありませんが、今の私たち日本人に不足しているのは他者(村意識の外に存在する)に対する想像力と本当の当事者意識なのかもしれませんね。

こんなことになることは容易に想像ができなかったのか?労働者はめぐりめぐってすべて消費者であり経済に当然インパクトを与えるものなのに・・・と思うのですが、
実際さまざまな現場における個々の状況判断がいくつも重なり本当に単純ではないのですが、安易な派遣切りという結果に繋がっていったように思えます。
ガバナンスの問題でもあるのでしょうか。

でも世界に名だたる大企業には、長期的視点と賢明な判断・行動力をこういう時こそ見せつけてもらいたいと思います。もちろん政府にもですが。
Posted by プチeco at 2009年01月05日 13:10
はじめまして、かなと申します。
一企業人です。

いつも楽しく拝見させていただいております。

環境問題も含め、私にとってこのラボは本当にラボのようなものです。

私は、毎日、仕事以外に一つの議題について考えていこうと決めています。
その私にとっては、このラボの記事がすばらしい議題になっています。

大学を卒業し若かった私は、環境問題や企業のあり方について、希望をもって企業人になりました。たくさんの理想論を持って・・・。
しかし、社会人入りして、多くの矛盾とギャップにもぶつかりました。
しかし、矛盾にぶつかりながらも理想値に近づけるよう日々努力しています。

自己紹介はさておき、派遣の問題ですが。
企業も目先の利益にとらわれ派遣という形をとるのではなく、将来の会社・将来の財産になる社員をしっかり育てて行って欲しいものです。
恐ろしいことに、今や企業は安易な考えだけで、重要な部分にまでも派遣にまかせ、本当の社員が把握しておかなければならない部分まで任せてしまっている企業も少なくないと思っています。
将来、自分の会社の存続の危機に陥るかもしれないことまで計画されてないのかもしれませんね。

財産である社員を誰を採用するか決めるのも企業。
将来像を見据え、どう育成するかも企業。
そして、遺憾なく力を発揮できるよう個々人も努力していかなければならないと思います。

今回の派遣の記事で、
自分のため、強いては企業のため、大きくは国家のため、しっかりと個人が考えていって欲しいです。
Posted by かな at 2009年01月08日 12:09
あだなお。さま

こんばんは。いつも勉強になります。

「雇用は企業のもっとも重要な社会的な責任の一つ」

ほんっとにそうですよね。大きな声で言いたいです。

なにか買い物をするとき、人権と環境に配慮されて倫理的に作られたものを選ぼうとしてますが、人権についてはいつも途上国の労働者のことばかり考えていて、日本製のものは勝手に安心して買っていました。

実は日本にもこのような労働者の人権の問題があったんですね。恥ずかしながら今回の大々的な報道で初めて気がつきました。

法律にも問題があるのでしょうが、これからは企業が正社員・非正規社員をどう扱ってるか、も商品を選ぶときの基準に入れたいと思います。

そういう視点で商品を選ぶための消費者向けの情報誌があればいいんですけれど、日本にはまだないので、私も情報収集して少しでも発信できればいいなぁと思います。
Posted by まる at 2009年01月09日 00:02
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