2009年02月02日

忘れてはいけない40年間

 今や環境問題と言えば気候変動を始めとする地球環境問題のことを指すのが普通ですが、かつては環境問題とは公害とほぼ同義でした。途上国のことを話しながら「日本にも昔は公害があったけれど、日本はそれを克服できた」と言ってしまうこともあります。

 しかし本当に公害は既に過去の問題なのか? 過去の話にしてしまっていいのか? そう私たちに迫ってくるのが樋口健二さんの写真集「環境破壊の衝撃1966-2007」です。

 帯には「自然破壊が止まらない」とありますが、写し取られたのは自然破壊だけではありません。「人間破壊」、「自然破壊」、「開発という破壊」、「原発安全神話」、「労働者災害」の5章に分かれ、1966年から2007年までの40年にわたる日本社会の愚行を、これでもか、これでもかと見せつけます。

 写真を見ながら、本文を読みながら、記憶を辿ってみれば、たしかに今から30年前は、まだ毎日のように公害のことが新聞やテレビで報道されていたのです。

 もちろん今はその頃に比べれば、公害はかなりコントロールされるようになり、当時のような社会全体の問題として話題になることはなくなりました。しかし、この本に出てくるような実に多くの方々の犠牲があって初めて、私たちはその問題を認め、状況を改善する必要を感じ、ようやく行動を起こしたのです。そのあまりに大きな犠牲を振り返れば、とても「今はもう克服したのだから」と喜ぶ気にはなれません。

 私たちはあまりに鈍感で、無責任であったことを認めなければいけません。そしてさらに恐ろしいことは、40年前、30年前に発生した公害で健康を害した方々にとっては、今なおその問題は続いているということ。その時代に失われた自然は、二度と再び戻って来ないということ。そして、原子力発電所や新たな開発など、今なお、同じことが繰り返され続けているということです。

 私たちの社会の発展と、毎日の豊かな暮らしが、実に多くの人と自然の犠牲の上にはじめて成り立っていることを見せつけられ、その業の深さに慄然とします。

 特にそれを強く感じるのは、4章の「現発安全神話」です。「絶対に安全」、「CO2削減の切り札」と喧伝される原発が、実は放射能を浴びながら点検、清掃、修理する下請け労働者の存在なしには一日たりとも動かないという事実。私たちはそんなことはほとんど知らされずに、毎日、原発の発電した電気にどっぷり依存しています。日本全体では約30%、東京電力、関西電力、四国電力、九州電力においては、約半分が原発です。

 170万人の労働者がこれまでに原発に関わり、35万人は放射線を被爆しながらの作業をしてきたと言います。半減期が数万年という廃棄物を出しつづけながら、今後さらに原発を増やすのか? 運転し続けるのか? そのことを決める前に、ぜひこの本の4章だけでも読んで欲しいと思います。
《関連記事》
■「原発でなぜ児童労働が?」(サスラボ)

 樋口健二さんは「あとがきにかえて」の中で「自分のテーマをつきつめてみると、日本のエネルギー産業が引き起こした問題であることに気づきました」と書いていらっしゃいます。「石炭、石油、原子力という図式のなかで社会問題がさまざまな形で発生していったのです」と言われると、なるほど、これはエネルギーの消費を増やしていく、私たちのライフスタイルの問題なのだと気づきます。この本の中には出てきませんが、もちろん巨大ダム開発も、日本の自然を壊滅的に破壊した原因の一つでした。

 昨年来の世界経済危機は私たちに世界経済のあり方を見直すことを迫りました。しかし、そんなことになる前から、こんな形での経済発展はそもそもあり得ないことは、私たちは知っていたはずなのではないでしょうか。

 とても重い本ではあるのですが、私たちの生活の影を知るために、ぜひともご覧いただきたい本です。「環境のためにこんなに頑張っているんです」と胸を張る社会が、企業が、ちょっと前までやって来たことを忘れるわけにはいきません。学ぶべき、伝え続けるべき教訓は、まだまだ残っています。

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
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posted by あだなお。 at 23:59| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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