おいしいものなら何でも好きですが、最近は和食がいいなぁと思うことが増えてきました。もっと若い頃にはわからなかったしみじみとした味がわかるようになってきたということもあるでしょうし、胃にもたれないサッパリとしたものの方が良くなってきた(^^;)ということもあるかもしれません。いずれにしろ歳を取ったことと関係がある気もしますが(^^;)、それにも加えて最大の魅力は季節性があって飽きず、健康的であることでしょう。
そんなことを考えていたら無性においしいお鮨が食べたくなり、とあるお店へ出かけてきました。以前も書いたことがありますが(「季節を食べる」参照)、このお鮨屋さんは、親方が全国の漁師さんや業者さんとのネットワークを持ち、その季節に本当においしいものを、おいしい方法で出してくれるのです。
今回は能登からの材料が多かったのですが、最初にツマミでいただいたのは茶ぶりナマコ。茶ぶりとは、番茶で洗う手法だそうで、そうすることでナマコが柔らかくなるのです。普通はカリコリとかなり硬めのは歯ごたえがするナマコが多いのですが、たしかに茶ぶりしたナマコは大きくぶつ切りしてあるのに、スッと歯が通ります。それに自家製のコノワタ(ナマコの腸の塩辛ですね)を乗せ、火を通した米酢を使って酢の物にしてあるのです。もちろんお味も申し分なく、申し訳ないほど手が込んでいるだけのことはあります。それにしてもこんな食べ方、誰がどうやって考えたのでしょうか?
あるいはホタルイカ。春が旬かと思っていたら、もう食べられるのだそうです。ただし足が早いので、生で出せるのは届いた日だけ。一日経った今日はスミイカのスミに漬け、さらに少量のクリームチーズと一味唐辛子を加えたものが供されました。不思議な取り合わせだなと思いながら口にしてみると、これが想像以上のハーモニー。親方は日本と西洋の発酵食品の取り合わせだと悦に入っていましたが、なるほどこれは意味のある組み合わせです。
今はコハダが旬でおいしいよということで、お鮨はまずコハダから出していただきました。もちろん酢で〆てあるのですが、その酢が4種類。白酢のほかに、赤酢、柚酢、そして赤酢とスペイン産ジンの組み合わせの4種類で合計4貫いただきました。なるほど、それぞれにコハダの違った持ち味が引き出されるようです。ちなみに僕が一番気に入ったのはジンと赤酢の組み合わせで、コハダの香りがぐっと引き立つのです。そうそう、後半にはコハダを有明産の今年の初摘み、一番海苔で巻いてもらったものも試してみましたが、これもなかなかオツでした。
こんなことを書いているとキリがないのでこの辺で止めますが、江戸前の古い仕事をしたネタから、ご自分で開発した最新の技まで、実に多種多様なネタが、手を変え、品を変え登場し、本当に飽きることがありません。結局この日は、全部で30種近い魚介類をいただたことになります。多様で豊かな海の幸とそれを活かす多様な技の競演です。
ただ気になるのは、いつまでこの鮨を楽しむことができるのか、ということです。例えば有明の海苔にしても、諌早干拓の影響で、毎年質も量もどんどん悪くなっているそうです。いつもは嬉しそうにネタの自慢をする親方の顔が、そういう話になると決まって曇ります。手間ヒマかけた古い仕事の技は、「こんなことをする店はもうほとんどなくなっちまった」と言いながらも、少なくともこの店では次の世代に受け継がれています。しかし、肝心の魚がいなくなってしまったら、もはや鮨として成立しません。
あー、おいしかったと思いながらも、「いつまでこんな鮨を楽しむことができるのだろう?」と考えると、切ない気持ちになってきます。百年、二百年とかけて伝えられた味と文化の行く末は、私たちの社会、いえ私たちの行動次第なのです。
今日もおつきあいいただき、ありがとうございました。
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2009年02月14日
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