■「シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜パーム油の現場から」」(地球・人間環境フォーラム)
午前中、HSBC在日副代表の山田晴信さんからは、HSBCグループが生物多様性の保全のために非常に厳しい投融資基準や運用体制を持っていることや、社員による生物多様性の保全活動のためにきわめて多額の予算を使っていることをご報告いただきました。おそらく日本の企業の方にはかなり驚きではなかったかと思います。
地球・人間環境フォーラムの満田夏花さんによる世界各地の現状のレポートは、プランテーションの開発が地域の方々、特に先住民の方々にどのような影響を与えているかをわかりやすく示すもので、これで一気に問題がリアルに感じられるようになったのではないでしょうか。
午後は、パームオイルを例にした具体的な報告が続きました。昨秋の6回目の円卓会議(RT6)頃からいよいよ持続可能なパームオイル(SPO)が登場し、2008年末までには認証済みSPO(CSPO)は150万トンですが、今年2009年は一年間で300万トンが出荷されるという嬉しい報告から始まりました。
しかし現実には、CSPOの量はパームオイルの全体量に比べればまだまだ少ないわけですし(300万トンでも8%前後)、CSPOが供給されるようになったからといって、プランテーションの開発にストップがかかるわけでも、野生生物の住み処が守られるわけでもありません。問題は問題として存在し続ける中、小さな第一歩が刻まれたに過ぎないのです。
昨年一年のパームオイルの価格の急騰(今は逆に非常に安い価格になってしまっていますが)、BDFの需要をあてこんだプランテーションの急速かつ大規模な開発。一向に改善されることがないと言ってもいいような、先住民の生活や地域社会への壊滅的な悪影響。ますます明らかになる気候変動や野生生物への深刻な影響。
そんな報告を聞いていると、SPOが世に出るようになったからと言って、とても安心してはいられないなと感じます。SPOの誕生はゴールではなく、出発点に過ぎないのです。
ただそれでも、6年以上に渡り、立場の異なる様々な方々が多数集まり、より良いパームオイルの生産方法の確立に向け、SPOの誕生に向け、真摯な努力が積み重ねられて来たことは、やはり大きく評価されるべきでしょう。そしてあらためて、消費国の人間としての、企業としての責任を深く考えざるを得ません。
というのも、日本は世界でも有数のオイルパームの輸入国ながら(どなたかが、たしか8位と言っていたかと思います)、オイルパームの生産現場の様々な問題のことはほとんど知られていないと言っいい状態だからです。私たちの生活や、ビジネスが、非常に大きく依存し、また影響を与えているのにも関わらずです。
そしてそれを解決しようという国際的な動きにも、残念ながらほとんど貢献できていません。「責任」を感じるべきである人も企業も、まったく無関心なのです。
RSPOの顧問であるチャンドランさんは、生物多様性が豊かな国は経済的には貧しく、生物多様性が貧しい国が経済的には豊かである矛盾と、西欧の先進国の豊かさが、実は途上国の生物多様性の豊かさに依存したものであることを指摘していました。非常に耳の痛い言葉です。
日本は先進国ですが、その中ではかなり生物多様性にも恵まれた国です。しかし、やはり途上国の生物多様性を収奪していますし、それにも関わらず自分のやっていることに無頓着・無関心です。この事実をしっかりと認識しないことには、COP10どころではないかもしれません。
今のところまだ日本の企業からはSPOを原料とした製品は出ていないと思います。おそらく今後少しずつそうした製品も出て来るでしょうし、出て来て欲しいとは思いますが、SPOを使えばそれでいいということではありません。問題を根源から捉え、本質を考えることが必要なのではないでしょうか。今日のシンポジウムが、そうしたことを考えるキッカケになればと強く思います。
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