先週、英国大使館で行われたとある集まりに参加した際、ちょうど来日していたイギリス政府の気候変動問題担当の特別代表(大使)のジョン・アシュトン氏と少しお話をする機会を得ました。
アシュトン大使の話で印象的だったのは、今の不況の出口には、low carbon economyとhigh carbon econmyの2つがあるというのです。 もちろん大使は、low carbon econmyという出口を目指しているわけです。オバマ大統領なども、明らかにこれをキッカケにlow carbon economyに転換することがわかります。
※日本のメディアにはほとんど低炭素経済のことは報じられていなかったのですが、londonsummit.gov.ukで発表された最終コミュニケにあたると、しっかり書いてありました。ゴメンナサイm(__)m
政治家(※)がどう考えているにせよ、それでもやはり、出口の先には今とはまったく違う世界があるのではないかと思うのです。なぜならこの一年間の大変化を経て、今や多くの人々が、これまでのやり方は続かないし、しかし同時に、それ以外にもっといろいろなやり方があることに身をもっと気がついてしまったからです。例えば、日本の若い人たちが、モノを所有することに興味を示さなくなり、農業に興味を示すなど、自分たちの手を使って、自分たち自身の力で、等身大の暮らしをすることにシフトを始めたことなどが、それを象徴していると思います。
※追記:というわけで、これもどうやら「日本の政治家」と限定した方が良さそうです。
ですから単に経済を刺激して、経済成長を復活させるというだけでは、あるいは多少金融規制を強化したところでは、根本的な解決にはならないでしょう。もちろん僕も、少しでも早く世界がこの危機から脱出して欲しいとは願っています。しかしその出口は、今までの延長にはなく、むしろ今までとはかなり違った方向から、明りが見えてくるように思えてなりません。
そんなことを考えながら今日の記事を書いていたら、まったく偶然に、グラミン銀行総裁ユヌス氏の記者会見の記事にぶつかりました。ユヌス氏の言うように、「最大の危機は最大の好機」であり、「今こそは、これまでは手のつけられない聖域だと思われていたことも、調査、公開、改革できるグッドチャンス」ということは忘れてはいけないと思います。
そして、金融システムを再編するためには、「誰もが問題なくサービスを利用できるようにすること」と「実体経済に根ざしていること」が必要と指摘していますが、これもその通りです。
人々の生活が地に足の着いたものに回帰しようとしている中、経済や金融も当然そうならなくてはおかしいでしょう。今回の世界的金融危機でも、実体経済に即したグラミン銀行は一切その影響を受けなかったということが、ユヌス氏の指摘の正しさを実証していると思います。
《参考リンク》
■「グラミン銀行総裁ユヌス氏「危機こそ変革の好機」」(JanJan、2009年3月24日)
■「ムハマド・ユヌス グラミン銀行総裁 会見 映像・音声」(JanJan、2009年3月24日)(※このスピーチ、オススメします。)
G20では500兆円もの財政出動が合意したそうですから、これが世界経済の復活への大きな刺激になることは期待したいと思います。しかし、出口は今までの延長上ではなく、もっと地に足の着いた生活や経済にしかあり得ないことは忘れてはならないでしょう。
これを企業の立場から言えば、景気が回復しても、以前と同じ商売を同じスタイルで続けることは出来ないかもしれないということです。私たちが生活していく上で本当に必要なこと、役に立つことはビジネスとして成り立つのでしょうが、本質的なニーズから外れるものは、あるいは持続可能でないものは、まったくなくなることはないにしても、縮小せざるを得ないのではないでしょうか。
身を縮めてじっと嵐が過ぎるのを待っていても、嵐の後に現れるのは、以前とはまったく違った光景ではないかと思います。つまりこの嵐、この危機は、新たな出口に向かって方向転換をし、出口の先に待ち受ける新しい世界に適応するための準備期間なのではないでしょうか。私たちが今この暗いトンネルの中にいる意味を、改めて考えてみたいと思います。
今日もお読みいただき、ありがとうございました。
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