そんなことを思ったのは、「キング・コーン」という映画を見たからです。アメリカ人が食べているほとんどのものが、元をただせばコーン、つまりトウモロコシに由来していて、現代の平均的なアメリカ人の身体はまさにコーンで出来ているのだそうです!
■「キング・コーン公式サイト」(エスパース・サロウ)
■予告編
だからと言って、アメリカ人が毎日トウモロコシばかり食べているわけではありません。いやむしろ、彼らだってそれがトウモロコシだと意識して食べているのは、ポップ・コーンぐらいのものでしょう。たしかにアメリカで売っているポップ・コーンは笑っちゃうぐらいに巨大だったりしますが(^^;)、実はそれぐらいどうということはないのです。
というのも、アメリカの国民食と言ってもいいハンバーガー。ハンバーガーのパテの牛肉は、実はトウモロコシで育った牛ですし、フライドポテトはコーン油で揚げてあり、炭酸飲料はトウモロコシから作った糖(コーンシロップ)で甘味を付けています。そして、ハンバーガーショップでもらうビニール袋も、今やトウモロコシ製です! こんなことになっているのは、もちろんそれが一番安いからです。
それ以外にも、豚肉、鶏肉、パン、スパゲッティソース、何を作るにもトウモロコシが原料になっているのです。だからアメリカ人の身体を分析すると、それがトウモロコシ由来であるということがわかるほどなのだそうです。
この映画は、間もなく大学を卒業して社会人になる二人に学生が、「自分たちがふだん食べている食べ物についてもっと知っておきたい」と考え、実際に自分たちでトウモロコシを育て、それがどこに行くのかを追跡するというものです。
農業経験のない若者がそんなに簡単にトウモロコシを作れるのかと思うでしょうが、日本では広大と思える1エーカー(4047平方m)の農地も、アメリカの田舎であればわずかなお金で借りることができます。遺伝子組換えされた種子は大型農業機械を使えばわずか18分で播種完了、その後も強力な除草剤を使うなどしてわけもなく大量のトウモロコシを収穫します。
もっとも収支を計算してみると、二人の人件費を入れなくても、赤字。しかし、心配はご無用。国からの補助金をもらえば、ちゃんと黒字になるのです。つまり、大量のトウモロコシを作るというのは国策であり、その用途を作り出すために、トウモロコシが牛の餌になったり、コーンシロップが開発されたのです。
当然ですが、もともと牛の餌はマグサであって、トウモロコシではありません。トウモロコシだけを食べて育った牛はわずか半年で出荷可能なほどに急速に肥育するのですが、これは牛の自然な生理を無視していますので、当然病気にもなります。ですから、今やアメリカで生産されている抗生物質の7割は家畜に与えられているのだそうです。
脂肪たっぷりのハンバーガーと、コーンシロップでカロリーたっぷりの炭酸飲料を毎日摂取していれば、人間だって病気になります。肥満と糖尿病です。こうしてみると、アメリカの異様な肥満は、トウモロコシ生産を過大に推進した政策の結果とさえ言えるかもしれません。
主人公たちがトウモロコシを作ってみたアイオワ州は、アメリカでも最大のトウモロコシ生産地です。見渡す限りのトウモロコシ畑が続きますが、不思議なことにこの地域は「自給自足」できていません。作っているトウモロコシは飼料用だったり、コーンシロップの原料用だったりして、人間が食べられる品種ではないからです。「俺たちはトウモロコシを育てている。おれたちはクズを作っているだよ」、そう自嘲気味に言い放つ農家の方の表情が忘れられません。
しかし、この事実を知っているのはごくわずかな人々だけです。アメリカの食生活が全面的にトウモロコシに頼っているのも、それが肥満の原因であることも、ほとんど知られていない、というより秘密なのだとか。知らないうちに、トンでもないことになっちゃっているんですね。
たしかにアメリカ人も、私たちも、飢えることを心配しなくてもよくなりました。しかし、今度は別の原因で、アメリカの人々は命を縮めています。このままでは日本がそのような運命をたどる日も、案外近いのかもしれません。
「キング・コーン」は渋谷のシアター・イメージフォーラムほかで、4月25日からロードショー開始です。
《参考リンク》
■「キング・コングじゃなくて「キング・コーン」」(ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記)
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