失礼ながらいかにも「二匹目のドジョウ」的企画で、しかも書き下ろしではなく対談。普通だったら「やっぱり読まなければよかった」と思う場合が多いのですが、この本に限って言えばそんなことはまったくありません。前作以上に役に立つ本だと思います。
その理由は、この本には前作にはあまりハッキリとは述べられていなかった、これからどうなるかが、何をすべきかが、明確に示されているからです。神谷さんのビジネスに対する思いも、さらに明確になっているように感じました。
昨年秋以来の世界経済の失速は今ちょっと持ち直しているかのようにも見えますが、神谷さんと小幡績さんは、「この程度で済むはずはない」。「資本主義は終わった」のであり、「既に大恐慌が来ている」という恐ろしい認識で一致しています。
また現在アメリカも日本も、財政出動でこの危機を乗り越えようとしていますが、これも間違った政策であり、下手をすると財政出動をし過ぎたことにより財政破綻を起し、通貨が価値を失うと指摘しています。理論的に考えればその通りなのですが、誰もが「そんなことはない」とタカを括っている、あるいは根拠なき楽観で現実を直視していないのでしょう。
それではなんでこんな酷いことが起きたかと言えば、それはアメリカでグラス・スティーガル法が1999年に実質的に撤廃されたことが原因だと喝破します。1933年に出来たこの法律は、銀行業務と証券業務を分けていたのですが、「1999年、クリントン政権で、ゴールドマン・サックス会長から転じたボブ・ルービンが財務長官のときに、(中略)分離条項が廃止され」たのです(p.31)。これにより、商業銀行と投資銀行は競争し、拡大化路線をひた走るようになったことが、すべての問題の始まりだったといいます。
それがこの金融危機の真の原因だというのに(つまり、リーマンの破綻は必然だったわけです)、日本はこの期に及んで銀行と証券の垣根を無くそうとしているのですから... アメリカの失敗にまったく学んでいないというか、その原因に気がついていないと言われてもしかたがないでしょう...sigh
それはともかく、この本が良いのは、これからどうしたらいいかがきちんと提案されていることです。この経済危機で資本主義というものは崩れた、終わったのだから、もう一度すべてゼロから作り直すしかない。そのときに「一番大事なことは、何を救うべきか、ということをしっかり考えて、決めることです。そして、それは社会であり、人間です。散々やりたい放題やってきた金融機関ではないし、ニーズのない車を創り続けるメーカーじゃない。」と断言しています(p.73)。
雇用についても、「既存の破綻した企業を救済するのはやめて、新しい産業が勃興するまで、政府が、警官、教師、医師、看護士などの採用を倍増して、失業の増加を抑えた方が効果的だし、社会のために建設的だ」と提言しています(p.75)。
日本人が戦後、国民全員で焼け野原から復興したように、これからは「自分や家族、友人たちがどうすれば幸せになるか、ということを追求して」もう一度作り直せばいいといいます(p.140)。
そしてこの新しい人間中心の社会の再興を、ルネッサンスになぞらえています。自分の心で感じて、頭で考えて社会を築く。そのためにはお金なんてない方がいい。本当に大切なもの、つまり人間をしっかりと中心に据えた価値観を復興させるのだと言っています。
ですからこの本の最大のメッセージは、自然環境を大事にすると同時に社会環境を整備しよう、それをみんなで一緒にやろうということです。
まさか経済の話から、投資銀行家の口から、そんな結論から出て来るとは俄に信じられないかもしれません。しかしこの本を読んでいると、本来の銀行家(バンカー)とは、社会に必要な事業を育てるのが仕事であり、神谷さんもその本来の役割を続けるためにあえて小さな規模で、顧客と互いに顔の見える関係で仕事を続けられて来たことが納得できました。
日経平均はこの三日間上昇を続けています。しかし、僕もとてもそんなに簡単にこの経済危機が回復するとは信じられません。この数ヶ月の上昇には、なにか人工的な動きを感じます。決して悲惨な状況を望んでいるわけではありませんが、恐らく今後さらに大変な状況を私たちは経験することになるのかもしれません。
それが大変な時期であったとしても、それが新しい、より良い、より健全な社会になることを信じて、そのために私たち一人ひとりの思いと力が発揮できるとしたら、私たちはとてもやり甲斐のある、チャレンジングな状況にいるわけです。
大変だけれでもワクワクしてくる、そんな予感とヒントに満ち満ちた本です。これからの社会が一体どうなるのか、興味のある方にはぜひご一読をオススメします。
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