さて、その「生態系と生物多様性の経済学」のセッションでキーワードとなったのは、PES(Payment for Ecosystem Services)、つまり「生態系サービスへの支払い制度」でした。
「生態系サービス」はこれまで無償と思われて来ましたし、実際私たちはその対価を払わずに使ってきたのですが、それを維持するためにきちんとお金を払おう、費用負担をしようという考え方です。
ただよく誤解されるのですが、これは生態系サービスの価値を測定して、その対価を払うというのは少し違います。生態系サービスを維持するために必要なコストを払いましょうというものです。
支払う相手も、その生態系にというわけではなく(当り前ですが(笑))、その生態系サービスを維持してくれる人に対してです。たとえば、水源を涵養する森林があったとしたら、その森林を維持管理してくださる方に、そのコストを支払おうというものです。
そのような支払いを行うことで、これまではなかなか引き受けてがいなかった、あるいはボランティアでするしなかった生態系の維持や管理を、喜んで引き受けてくれる方が出て気安くなるだろうという発想なのです。生態系を保全するインセンティブを作って、生態系の保全を促進しようという、経済的手法(あるいは市場メカニズム)の代表的なものです。
生物多様性条約やミレニアム生態系評価などの中でも今後広めていくべき手法として取り上げられていたのですが、それがいよいよアジアでも動き始めたのです。ただ若干キナ臭いのは、たとえばアジアで大々的に始めたのはアメリカの援助機関です。もしかして何か深い考えがあるのでは?と、ちょっと勘ぐりたくなります。
まぁその疑問は横に置いておくにしても、もう一つ興味深いのは、今回紹介されたいくつかのPESの事例において、これが単に生態系を保全するための手法としてだけではなく、貧困削減のための手段としても期待されているということです。
地域の貧しい住民の皆さん方に生態系の維持管理を委託し、その対価を支払うことにより、生態系と生物多様性の保全が図られ、同時にそうした方々への現金収入も発生するので一石二鳥だというわけです。実際、ベトナムの成功事例を聞きつけて、我が国でもという相談が実施した団体にはかなり舞い込んでいるそうです。
PESは、今までタダであったものに、きちんと価値を認める、少なくともそのために働く人間の努力は認めようということです。さらに、その対価を支払う主体を継続的に作ることができれば、外部不経済を内部化することにもつながります。
日本ではまだあまりPESの適応例は聞きませんが(森林環境税が少し似ていますが...)、今後かなり広がりそうなメカニズムですし、ひょっとしたらグローバルに採用される手法になるかもしれません。今のうちから慣れておく必要もあるでしょうし、また日本の生態系を保全する手法としても、活用を検討する価値がありそうです。
今日も最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
よろしかったら、応援のクリックをお願いします!
読んだら一緒に、Click me!
【生物多様性の最新記事】






