「公衆と環境研究センター」(Institute of Public & Environmental Affairs、以下IPE)は、2006年に中国の「中国水汚染地図」を作り、インターネットで公開したことで有名です。さらに2007年には、「中国大気汚染地図」も公開しています。
参考:「「中国大気汚染地図」に4千社以上がリストアップ」(「人民網日本語版」2007年12月13日)
中国でそんなことが出来るのかと思われるかもしれませんが、それが出来たヒミツは.. IPEはすべて政府が公表したデータを使用しているのです。ですから政府はもちろん、企業としても反論しようがないのです。
環境基準に違反し、大気汚染の原因になっている企業は、各地方の政府が発表しています。しかしそれは必ずしも使い勝手が良いものでもありませんし、また各地方だけのものです。そこでIPEは中国全土のそうしたデータを一つにまとめ、検索等が容易にできるよう、使い勝手の良いインターフェースを整備したのです。「中国大気汚染地図」では、英語での検索と表示もできるようになっています。
もちろん、それでもIPEに対して直接、あるいは地方政府を通じて圧力をかけようとする企業もいるでしょう。そのようなことはないのかと馬さんに聞いてみたら、やはりあるそうです。ではなぜそうした企業の圧力に屈さずに済むのかとお聞きしてみたら、この活動を20のNGOで共同でやっているところがポイントだと教えてくれました。IPE一つだけであれば圧力をかけることは可能かもしれないが、20のNGOに圧力をかけ、事実をねじ曲げることは難しいからです。
中国のような政治体制下で活動するのですから、政府を敵に廻してうまくいくわけはありません。政府のお墨付きのデータを使い、政府の意向と方向を合わせ、そしてそれを徹底的にオープンにすることで、うまーく目的を達成しているのです。非常に戦略的ですね。
また馬さんは、「インターネットは、中国のような成長途上の巨大な国にとっては福音である」ともおっしゃっていました。「もしインターネットが使えなければ、同じをことするのに莫大な費用がかかり、事実上実行できなかった」からです。
IPEのデータベースは、衛星画像などともリンクできるようになっており、最新の技術を非常にうまく活用しているのです。
ただもちろん、実際にはこうした活動を進める上では様々な困難があったはずです。IPEが成功した秘訣は、一番重要なのは何かとお聞きすると、馬さんは間髪をいれず「諦めないことだ」と答えてくれました。そして、さらに「透明性がもっとも重要なツールである」と付け加えていました。中国だけでなく、どこで何をする場合でも、参考になるのではないでしょうか。
ちなみにこのシンポジウムのパネリストの一人は、パナソニック・チャイナの環境分野の責任者である荒井喜章さんでした。実はパナソニック・チャイナは、従業員の単純ミスによって排水基準を達成できない事故を起こしており、IPEの水汚染地図にも社名が掲載されてしまいました。しかし、その工場の方々の真摯な努力の結果、問題が完全に解決された企業として、ブラックリストから名前を削除された最初の企業にもなりました。
IPEの活動も素晴らしいものですが、ミスとはいえ起こしてしまった問題を、同じような問題が再発しないように徹底的に対処した日本企業の行動も素晴らしいと思います。ただ残念なのは、IPEのブラックリストにはまだブリヂストン、デンソー、ダイキン、ホンダ、味の素など、多くの日本企業の名前が掲載されていることです。(もちろん、欧米や中国企業も多数あります) そして中には、多くの工場で違反をしていたり、地域住民の再三の抗議に対しても無反応な会社もあるといいます。コンプライアンスという点では勿論ですが、自社のブランド、そして日本の評判を守るという意味からも、ぜひ早急に根本的な対応してくださることを期待したいと思います。
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