
ナンヨウアブラギリ(学名:Jatropha curcas)は、熱帯アメリカ原産トウダイグサ科の植物で、インドネシアではjarak pagarと呼ばれています。
種子からとれる油が、ディーゼル燃料の代替になるというので、インドネシアでは、第二次大戦中に日本軍が栽培を奨励していたそうです。日本軍は、なんとこれを零戦の燃料にしていたのです!
しかし戦争も終わると、安く潤沢な化石燃料が入手できるようになりましたから、そんな用途はすっかり忘れ去られ、葉っぱが赤ちゃんの胃の薬として使われるぐらいだったようです。
ところが、このところインドネシアはエネルギー危機とも言える状況にあり、ついに今年1月にはバイオディーゼルを代替燃料として位置づける大統領令が発令されて、すっかり状況が変わりました。将来の代替エネルギーとして、ナンヨウアブラギリがにわかに再度脚光を浴びるようになったのです。
BPPT(the Agency for Assessment and Application of Technology、科学技術庁みたいなものでしょうか)のバイテク研究部門長によれば、ナンヨウアブラギリはバイオディーゼルの原料としてうってつけだそうです。
というのも、この植物は乾燥に強く、植えてからわずか半年で実をつけるようになるのです。収穫量が最大になるのは6年後ですが、その後、20年生に達するまで、毎年3〜4回果実を収穫可能だそうです。1haに2500本植えられ、条件が良ければそこから毎年10トンの果実を得られます。12.5トンの果実で1900リットルの油が取れるそうなので、1haでは年間1500リットル取れる計算です。
350万haにナンヨウアブラギリを植えれば、インドネシアで使われているディーゼル燃料の20%を代替することが出来るそうです! 取れた油は 石油から作られたディーゼル燃料と似ているので、既存のディーゼルエンジンをほとんど改造なしに使えるそうです。おそらく硫黄や窒素の含有量も低いでしょうから、SOx, NOxも出さず、夢のバイオディーゼルというわけです。
が、ちょっと待ってください。
350万haと言えば、日本の国土面積の約1/10、九州より少し小さいぐらいの面積です。ただでさえ、違法伐採やオイルパームのプランテーションの開発で森林が減少しているのに、さらに350万haのナンヨウアブラギリのプランテーションですか? 先日も書いたように、西カリマンタンに今あるオイルパームのプランテーションは100万ha、今のところ世界最大のパームオイルの生産国であるマレーシア全土のプランテーション面積がちょうど350万haです。もしパームオイルに加えて、ナンヨウアブラギリが大量に植えられることになれば、さらに大規模な自然破壊になることは明白です。
そしてオイルパームもそうですが、ナンヨウアブラギリも、外国からの移入種です。こうした植物を栽培することによって、周囲の生態系に悪影響を与えることが懸念されます。
実は、バイオディーゼルとして期待されているのは、ナンヨウアブラギリだけではありません。オイルパームも油をたくさん作るので、食用や石鹸の材料としてだけではなく、バイオディーゼルの原料として最近注目を浴びています。
ヨーロッパの企業が、バイオディーゼルの原料としパームオイルに目をつけているのです。中国やインドにおける食用油としての需要の増加に加え、バイオディーゼルの原料にもなりそうだということで、今後ますます需要が伸び、その結果、価格も上昇するだろうと、パームオイル業界は色めき立っています。
しかしその結果、ますます熱帯林は減少し、またもしバイオディーゼルとして売る方が食用油としてより高く売れることになれば、先進国が「地球に優しい」ディーゼル燃料を使うために、途上国、中進国の人たちは食用油を入手しにくくなるという状況も生じかねません。
ジャカルタポストはナンヨウアブラギリを好意的に紹介していましたが、こんなことを考えると、僕はちょっと憂鬱な気分になってしまいました。
今日も読んでくださって、ありがとうございました。
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私も最近、業界の方にお話を伺っているとバイオディーゼルが今後の鍵になる、というようなことが必ず出るので気になっていたところです。
温暖化対策としてはバイオディーゼルはいい話ですが、これ以上森は壊してほしくないですね。政策的な解決方法も当然必要ですがやはり業界の人が責任をもって森を守ることを考えていってほしいですね〜。また来ます。
インドネシア国内には砂漠はないかもしれませんが、、
既存の緑地を開拓せずに栽培できるといいのに。
砂漠を擁する国は、産油国だったりもするので、まじめに取り組んでくれないかなぁ。。
各国に適した産業を延ばして、国家間で相互扶助できると理想的ですよね。
そのためには先進国の援助も当然必要ですね。
なんとかできないですかねー。
持続可能な世界を作るのって一筋縄ではいかないですね。でも、だからこそ取り組まなければという気がします。
コメントありがとうございます。
先週までインドネシアで、今週は香港です。
で、アブラギリですが、そうですね、たしかに砂漠の緑化に使えればいいのかもしれませんが、さすがにそこまで乾燥には強くないでしょうね。成長が早いということは、それだけ水分もたくさん使うはずです。
いずれにしろモノカルチャーの大量栽培というのは、必ず問題を引き起こしますし、また、一つの目的のために栽培するというのも無駄が多いように思います。穀物を作り、食べる分以外をエネルギーや他の産品の原料として利用する、そういう使い方をしないともったいないと思うのですが...
JATROPHAの燃料化について、ITB及びNTB農業局と関わりのあるexpellerです。
12.5トンの果実で1900リットルの油が取れるそうなので・・・現実的な数字ですネ。楽観的な人々は12.5トンから3500リットル採取などとおっしゃるので驚かされます(笑)
こんにちは、はじめまして。
専門家の立場から、記事の検証をありがとうございます!
で、僕が気になるのは、試算結果の妥当性以上に、ナンヨウアブラギリを大量に栽培した場合の、環境影響、社会影響なのですが、この点についてはどう思われますか?
考えられる懸念は、まずナンヨウアブラギリの大量栽培によって今以上に森林破壊が進むことです。廃棄物の利用ではなく、新しく作物を育てる以上、その土地が必要になりますよね。
そのために土地を追われる先住民も出て来るでしょうし、オイルパームのときと同様に、世界経済の荒波に呑み込まれる農民もたくさん出て来るでしょう。オイルパームのプランテーションでも、実際には生活がより厳しくなった農民の方も多いようなんです。
エネルギーと環境、社会の両立。難しいですね。
はじめまして、コメントをありがとうございました。
そうですか、ナンヨウアブラギリは荒地で栽培しようということなのですね。となると、たしかにオイルパームのように熱帯林を切り開いてという開発とは異なりますね。少し安心しました。
一方、そうは言っても、インドネシアの荒地というのは、たぶん森林火災や過去の開発の後に放置された場所なのではないかと思うのですが... 荒地にしておくよりは緑化した方がいいとも言えますが、生物多様性の保全という観点からは、外来種による大規模モノカルチャーというのはやはり気になってしまいます。
これからもまたいろいろ教えてくださいね。
TB及びリンクをお許し頂きたく,よろしくお願い申し上げます。
はじめまして。コメントありがとうございます。
ナンヨウアブラギリは最近いろいろなところで話を聞くようになりましたね。
地域の植生や事情をよく配慮しながら、上手に活用してもらいたいですよね。
詳しくは、チェンマイ環境通信
http://koichi.chaocnx.com/?eid=424331
まで
また来ます。
こんにちは、はじめまして。
すっかり返事が遅くなり申し訳ありません。
そうですか、タイでもですか...
その後僕もいろいろな方にナンヨウアブラギリのことを聞いているのですが、小規模な栽培でうまく活用すれば、それなりにメリットもあるみたいですね。ただ、もしうまみが大きいとなれば、すぐにまた大資本によるモノカルチャーのプランテーションになりかねません。この点のウォッチが必要ですね。
タイからの情報、今後ともよろしくお願いします。
これからも楽しみに読ませていただきます。