2010年03月16日

バルジャック村訪問

 欧州出張の途上、南仏の小さな農村を訪ねました。モンペリエから北に向かって2時間近く車を走らせると、なだらかな丘の中腹に、中世からの町並みがそっくりそのまま残っているいるかのような村がありました。「未来の食卓」という映画の舞台になった、ガール県のバルジャック村です。人口1330人ほどの小さな村なのですが、 2006年9月から、学校給食をすべて地域産の有機食品、フランスで言うビオ(bio)に切り替えたところです。
《参考リンク》
■「未来の食卓は給食から」(サスラボ)

Barjak.jpg
村長さんの執務室から見た、村の風景

 ちょうど日曜日だったということもあり、これまた古いカソリックの教会をのぞけば出かけるところもほとんどなさそうですが、この日はちょうど全仏の統一地方選で、昔のお城(シャトー)を改築した村役場には、三々五々、村人たちが投票に訪れていました。

 昼過ぎの段階で投票率はおよそ3〜4割程度ではないかとのこと。案外低い数値に、最終的にはどのぐらいを予想しているのですかと係の方に尋ねてみると、毎回5割を目標にしているそうです。なんと、日本とたいして変わらないのですね(^^;)

 映画にも登場した村長さんからゆっくりとお話をすることが出来ましたが、一番驚いたのは、彼が村長になった25年前には農業に従事する方が村民の85%もいたのに、今ではなんと25世帯のみ。人口は少しずつ増えているというのに、農業は高度に集約化され、その結果、農業従事者は極端に減り、しかも今従者している方々はまるで農業機械のオペレーターのようで、生きものを育てる仕事ではなくなってしまったそうです。

 集約化された農業はエネルギー源として大量の石油を使うだけでなく、農薬も大量に使用します。村に来る道すがら、道端には梅のような白い可愛らしい花をつけている樹をたくさん見かけました。アーモンドです。しかし、このアーモンドにも、大量の農薬が噴霧されています。

 当然そのような仕事に喜びを感じる人は少なく、また何よりも、そんな風にして作った農作物場安全であるわけがありません。映画の中でもあったように、農家を含めて地元の人たちは集約農場で作られた野菜は食べません。これはすべて、都会や海外に送られるのです。村人たちが食べるのは、近郊の村で作られたビオです。

 え、近郊の村で作られた? そうなのです、給食でビオを宣言した村なのですが、村では集約的農業をするごく少数の農家だけとなってしまい、ビオな食材はすべて近郊の村から買っているのです! つまり、バルジャック村にはビオな農業で自給自足の理想郷があるわけではなく、反対にこの数十年で急速に近代化が進んでしまい、その弊害と危機感が、村長や村人たちをビオな給食に走らせたのです。

 もちろんだからと言って、現状を良しとしているわけではありません。村では組合が作られ、この組合が25haの新しい土地を買って農地にし、それを有機農業に取り組みたい人々に貸し出す計画が進行中です。

 子どもの頃から土いじりをして、給食ではおいしいビオを食べ、もう一生マクドナルドに行こうなんて思わない。そんな健康な子どもを育てることが、村長さんの目標なのだそうです。

 村役場となっているシャトーを含め、村の建物は400〜500年前のものばかり。お店の看板が新しくなり、細い道を自動車が走るようになったことを除けば、おそらく村の景色も400〜500年間、ほとんど変わっていないのだと思います。村長さんは1640年代の村の行政の記録が残っているという、立派な本を見せてくれました。一ページ、一ページが丁寧に補修され製本された記録には、細かい手書きの文字でびっしりと記録が書かれています。古い言葉なので、何が書かれているのかはわからないそうですが、それはたしかに400年近く前にこの村に人々の生活があったことを感じさせてくれます。

 「今の集約的農業がこの先ずっと続くとはとても思えない。」だからビオへを始めたという村長さんは続けます。「今私たちがやろうとしていることは、昔に戻ることではない。新しい発展への第一歩なのだ。」

 どのような社会を理想とするかについては、あまり具体的なイメージは語られませんでしたが、良いものは古くても守り、間違ったと思ったことは直し、未来を作っていく。たしかにこのまま放っておけば「私たちの子どもたちは、私たちを告発する(映画の原題)」かもしれませんが、だから今のやり方を変えるのではなく、誰にとってもより良い「未来の食卓(同じく邦題)」を作るために決断をした。そんな村長さんの思いを直接感じることが出来た、とても有意義な一日でした。

 組合を作り、村でビオを作れるようにするプロジェクトは、現在制作中の映画の第二弾の中で詳しく紹介されるそうです。バルジャック村の試みはまだ始まったばかりですが、映画などを通じて、こうした動きが各地に広がることに期待したいと思います。

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posted by あだなお。 at 08:39| 東京 🌁| Comment(7) | TrackBack(0) | 暮らし・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。渥美誠一と申します。
北海道で中学校の教師をやっています。

『未来の食卓』をネットで調べているうちに、こちらのサイトにたどり着きました。貴ブログの示唆に富む記事は勉強になることが多く、読んでいて元気づけられる気持ちにもなるものでした。
 さてそんな私ですが、教えていただきたいことがあって厚かましくもコメントを出す次第です。
 それはバルジャック村の財政についてです。『未来の食卓』では、農業の補助金を学校給食に回し、オーガニック食品を買うという政策が提起されていました。バルジャック村でもオーガニックを推進するために、補助金を使っているのでしょうか。
 もしわかることがあったら教えてください。
Posted by 渥美誠一 at 2010年09月12日 05:05
渥美誠一さま

はじめまして。
補助金のことですが、すみませんが聞きそびれました。(というか、同行者が聞いていたかもしれませんが、僕はいま記憶していません)

ただ、村全体でのプロジェクトであるので、なんらかのインセンティブは作っていると思います。

「未来の食卓」の続編である「地球のなおし方」が間もなく公開されるようです。こちらで最近の様子がわかるといいですね。
Posted by あだなお。 at 2010年09月14日 14:23
早速のご返事、ありがとうございます。
突然の私のような見ず知らずの者に回答いただき、感謝しています。

バルジャック村のような取り組みは、持続可能な社会を作っていくために有効な一つの手段ではないかと注目しています。

今後も貴ブログを楽しみにしています。

Posted by 渥美誠一 at 2010年09月14日 20:08
こんにちは!田中と申します。
現在大学二年生です。


今年の二月に、インドのマカイバリ茶園という所を訪問してきました。この茶園では、バイオダイナミック農法やバイオガス、パーマカルチャーを取り入れており、まさに自然との共生がなされていました。

そして、先日「未来の食卓」の映画を見て、ぜひバルジャック村を訪れてみたい!と思いました。
どのようにしたら、村長さんにお逢いできるのでしょうか…?
よろしければ、ぜひアドバイスをお願いします!
Posted by 田中 at 2010年09月18日 12:30
田中さん

こんにちは、はじめまして。

バルジャック村へは、映画の公開後、訪問者も多いようです。
村役場に手紙を書いて、アポを取ればいいと思います。
ただし、英語は村長さんにも周りの人にもあまり通じませんでしたので、連絡も、当日のやりとりもフランス語が話せる人が必要です。
Posted by あだなお。 at 2010年09月20日 19:54
あだなおさま

お返事、ありがとうございます!

映像からも、バルジャック村のゆったりとした雰囲気が伝わってきますね。村全体でオーガニックに取り組もうという試みに感動しました。

来年の春からフランスに留学を考えているので、その時にぜひバルジャック村を訪れたいと思います!
いろいろなアドバイス、ありがとうございました。
Posted by 田中 at 2010年09月21日 11:54
そうなんですか、フランスへ留学なのですか!

だったら、ゆっくりと時間をかけて見て来てくださいね。
バルジャック村もそうですが、その周りも本当に美しいところでした。四季ごとに訪ねてもきっと楽しいと思います。
羨ましいなぁ...
Posted by あだなお。 at 2010年09月24日 01:11
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