2010年06月14日

ミツバチは地球を動かすか?

 先日、鎌仲ひとみさんの最新作「ミツバチの羽音と地球の回転」を観て来ました。上関(かみのせき)原発の建設で揺れる瀬戸内海の小島、祝島(いわいしま)と、再生可能エネルギーへのシフトを着実に進めているスウェーデン、二つの地域を取材したドキュメンタリー作品です。
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 上関原発や祝島のことは、サスラボでも何度か取り上げて来ました。僕は残念ながらまだ現地を訪れたことがなく、これまで伝聞で状況を聞くだけでした。今回、現地でゆっくりと取材したこの映画を観ることで、島の自然、人々の暮らし、原発を巡る状況ということを立体的に理解できたように思います。

 祝島、あるいは原発のために埋め立て予定となっている田ノ浦は、瀬戸内海に残された、いや日本でも数少ない、海の生物多様性の宝庫です。そしてそれは単に美しかったり、珍しい生物が生息しているというだけではなく、何よりその自然が人々を養っている、そのことに改めて感動します。

 祝島は漁業と農業の島です(農業は国の政策のミスリードもあって、かなり衰退してしまっていますが...)。島の漁師の方が漁師に出ると、立派な鯛が釣れる、釣れる... 次々に美しい鯛が上がるのです。それ以外にも、ヒジキ、ビワ... 様々な自然の恵みのお蔭で、島の方々は暮らして来ました。

 その恵みの豊かさを肌身で知っている祝島の原発反対派の漁師さんは、「海は絶対に売らん!」と漁業補償金の受け取りを一切拒否しています。「海さえあれば生きていける」ことを知っているから、「子や孫のためにこの海は守り続ける」と言うのです。

 それを中国電力や地元行政は、力づくで変えようとしています。これは僕の勝手な想像ですが、自然の恵みを直接受け取るのではなく、間にお金を媒介にして生活している人々にとっては、将来にわたって豊かな恵みを提供してくれる自然よりも、目の前の小金の方が魅力的なのでしょう。

 祝島の村民をなんとか説得しようとする中電社員の「一次産業でいつまでやっていけると思うんですか?」という言葉に、そのことが象徴されています。本当に一番大切で必要なものは一次産業が産んでいるのに、そのことすら忘れてしまっているのです。一次産業がなくなった世の中で、人間が生きていけると思っているのでしょうか?

 一方のスウェーデンはというと...  脱原発を国民投票で決め、風力やバイオマスなど、様々な再生可能エネルギーへのシフトを着々と進めています。人々は自分が応援したい種類のエネルギーを自由に選択して買うことができるので、日本のように地域の電力会社が電力販売を「独占」している状況は信じられないのです。

 実は僕は、鎌仲さんがこの映画のためにスウェーデンに取材したちょうど同じときにスウェーデンを訪問し、いくつかの場所をご一緒しました。映画にはそのときに話をうかがった方々も登場して懐かしかったのですが(笑)、そこで見たスウェーデンの方々の生活は、持続可能な社会を目指すためにいろいろなことを切り詰めたものではなく、むしろ、とても豊かで穏やかなものに感じられました。

 風、バイオマス、廃棄物、今まで使われていなかったそうしたものをうまく利用すれば、石油や原子力に頼らなくても、十分に快適な生活が実現できることを彼らは実証しているのです。気候条件を考えれば、日本の方がもっと可能性があると言っていいかもしれません。なぜ、それが日本ではできないのか...

 いろいろと理由は考えられますが、最大の理由は、私たち自身がそれを自分の問題だと思っていないことにあるのではないかと思います。再生可能エネルギーにシフトすることも、どこでどういう生活をするかも、自分たちの子供や孫にどんな社会を残すかも、すべては自分たちの問題であり、自分たちで決めることができ、そして自分たちで実現できる。決して誰かから押し付けられるものではないのです。自分たちで決め、自分たちで解決することなのです。

 ですから、自分たちの希望を実現するために、人に無理を押しつけるのは「解答」になり得ません。たとえば上関原発を作ろうするのは、祝島や田ノ浦周辺の地域の方のためではありません。他の地域のエネルギー需要を賄うためです。祝島だけであれば、原発なんてなくてもやっていけるのですから。

 この映画の中で、印象に残った言葉が二つありました。一つは、スウェーデンの持続可能性へのコンサルタントの方の「成功させるコツは簡単なことだよ。一つひとつの課題を、自分がやると引き取る人が現れるまで絶対会議を終わらせないんだ。」という言葉、なるほどです。

 もう一つは、この映画の主人公と言える祝島の若き村民、"孝くん"の「やろうと思えばたいていのことは出来るんですよ」という言葉。彼はその言葉どおり、自立する祝島を目指して、一つひとついろいろなことを積み重ねています。そして、祝島をエネルギーが自給できる島にしたいと考えています。素晴らしい心意気ですね。きっと出来ると思いますし、そのために僕も応援したいと思います。

 正直に言えば、映画を見終えたときにはせつない気持ちになりました。僕たちのような都会で生活する人間たちのために、これまでの生活とその場所を暴力的に奪われようとしている人々。かと言って、僕たち一人ひとりの力では、あるいは祝島の皆さんの力だけでは、どうにも出来ないように思えてしまう今の日本の状況。

 現状ではかなり分は悪いかもしれません。でも、これは自分の問題だと認めるところから始めるしかないのでしょうね。これは自分の問題であり、自分が望む方向に変えるんだ、そういう意志をもって一人ひとりが行動を始めたとき、初めはまったく動かないように思えた大きな岩が、少しずつ動き始めるのだと思います。

 だから僕も、自分でこのことに何が出来るかを考え、実行することにしました。詳しいことはまた後日、このブログでご紹介したいと思います。

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 今回映画は「完成」して公開となりましたが、おそらくこれはまだ本当の「完成」ではないはずです。きっと、途中の経過地点でしかないはずです。

 「ミツバチの羽音と地球の回転」という不思議なタイトルは、ミツバチの小さな羽音が、地球の回転にも影響を与えるのだという鎌仲さんの思いが込められたものだそうです。ハチがブンブンと羽音を立てることを英語ではbuzzと言います。そしてこの言葉にはもう一つ、口コミで伝えるという意味もあります。私たちがこの映画のことを話し、伝えていくことが、日本の、いえ地球のエネルギーのあり方を変えることにつながっていくはずです。

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posted by あだなお。 at 13:10| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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