一つは言うまでもなく、メキシコ湾におけるBPの原油流出事故です。最近の報道では、BPの被害額は61億ドルにも上るとの予測が出ていますし、この油田に10%の権益を持つ石油開発会社には4億8千万ドル、つまり412億円あまりの請求が届いたとのことです。実はこの会社、三井物産が70%出資する三井石油開発の米子会社です。BPの今回の処理コストは61億ドルに達するという別の報道もありますので、この請求書はさらに膨れ上がるかもしれません。
1600mという水深で起きた油漏れが完全に止められたかはまだわからないようですが、その影響はこれまでだけでも非常に深刻なものです。油による影響だけでなく、その被害を食い止めるために大量に使われた化学分散剤が海洋生態系に深刻な影響を与えているのではないかという疑いです。
そもそもなぜ水深1600mなどという危険な場所で操業をすることになったのか。もちろんそれは、もっと浅い、より簡単に採掘できる油井が底をつきつつあるからです。今回の事故はなんとか収束したとしても、今後さらに深海での採掘現場が増えれば、同様の事故の可能性がないとは限りません。本当にそこまでのリスクを追って開発する必要があるのでしょうか。
では、既存の陸上の油井であれば、問題はないのでしょうか。いえ、それとはまったく別のリスクが顕在化しています。商船三井のタンカーが、ホルムズ海峡でテロにあったというのがそれです。
今回は船体が傷つく程度でしかなかったことは幸いでしたが、民間のタンカーがテロのターゲットになるというのはやはり衝撃的です。運んでいるものがものだけに、当たりどころが悪ければ大惨事につながるところです。
ホルムズ海峡と言えば、世界の原油の4割(!)が通るという大動脈です。たとえ航行不能とまではいかなくても、夜間の航行が出来なくなったり、保険料上がったりするなどすれば、経済への影響も甚大です。
問題はそれだけではありません。実はこれは既に長い間問題になってきたのですが、ナイジェリアのニジェールデルタではこれまで数十年にわたって、少なくとも150万トンの原油が流出したと言います。これは、エクソンバルディーズ号が座礁した際に流失した量の50倍であり、BPのメキシコ湾事故の数倍にもなる量です。
日本ではほとんど報道さえされませんが、それほどの流出が50年近くも続いているのです。これほどの環境破壊を起し、リスクを孕んでいるのです。石油が有限で持続可能性がないことは言うまでもありませんが、石油を使い続けることが、私たちの持続可能性を危うくしているのです。気候変動対策としてはもちろんですが、一刻も早く卒業しなければいけないのは明らかでしょう。
なぜそれが出来ないのか。そもそもなぜこの国ではこのような大切な問題が議論されないのか。不思議ではありませんか?
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