ガラパゴス諸島やアマゾンでのエコツアーも大きな産業ですが、一番大きな外貨獲得原は石油で、輸出額の約4割を占めるそうです。
その「産油国」のエクアドルが、今とてもユニークな提言を国際社会に行っています。同国東部のアマゾン山中のヤスニ国立公園には大量の石油資源が眠っているのですが、これを採掘することを永久に放棄する代わりに、この石油を採掘していたら得られていたであろう利益の半分を、環境保全のための資金として国際社会に拠出を求めるというアイディアです。
この油田は推定8億5000万バレルもの埋蔵量があり、同国の埋蔵量全体の1/5にあたるそうです。それを放棄するというのは大変なことで、そのことで60億ドル以上の利益がフイになるというのです。
一方、国際社会はこのことで、4億トンもの二酸化炭素の放出を未然に防げますし、生物多様性の豊かな貴重な森林も無傷で保全することができます。だから、36億ドルを同国が持続可能な発展のための資金として提供して欲しいというのです。
集められたお金は再生可能エネルギーの開発や、森林保全のための費用として使われるそうです。このヤスニITTプロジェクトがうまく行けば、エクアドルは森を破壊せず、二酸化炭素も出さずに、自分たちのお金も使わずに持続可能なエネルギー社会へとシフトできるのですから、すごいアイディアです。
そうは言っても、直接的な見返りなしに36億ドルも払うのは高いと思いますか? でもちょっと待ってください。私たち先進国がいつも言っているのは、「石油を使う量を減らして、二酸化炭素の発生を抑制しよう」、「豊かな生物多様性を擁する貴重な生態系を保全しよう」ですよね? それを実現してくれるというのですから、その対価を払うのはむしろ「当然」であり、エクアドルの言っていることは正論なのではないでしょうか? この基金に資金を提供しないことを正当化するのは、なかなか難しそうです。
それに、エコカー補助金や家電エコポイントにいくら使われたか、皆さんご存じですか? 3週間繰り上げて7日に打ち切られたエコカー補助金の予算総額はなんと予算総額は5837億円、家電エコポイントの予算総額は5267億円。両者をあわせると、なんと1兆1104億円ですよ! 一方、エクアドルが求めている36億ドルは、3000億円強です。単純に数字だけ比較しても意味はないのですが、それでも十分に実現性のある、その気になれば拠出可能な数値であることがわかるでしょう。そして、CO2削減だけで見ても、どちらが効果があるんでしょうか?
そう考えれば、石油開発をしないから36億ドル出して欲しいというエクアドルの提案は、むしろいい提案なのではないかとも思えてきます。
ちなみに、すでにドイツ、スペイン、ベルギーなどが出資を約束しており、フランスやスウェーデンも出資するであろうということです。今週、エクアドルのコレア大統領らが日本にも資金拠出を求めに来日したのですが、COP10の議長国である日本は、これにどう応えるのでしょうか?
それにしても、この逆転の発想おもしろいですよねぇ。実は僕はこの話を、大統領と一緒に来日された同国のDr. Maria Fernanda Espinosa文化庁官とDr. Marcela Aguinaga環境大臣から直接お聞きしたのですが、二人とも女性! しかもAguinaga環境大臣はかなり若い方でびっくりしました。こんな人事にも、あるいはこんな人事だからこそ、大胆な発想ができるのかもしれませんね。
<参考リンク>
■"Yasuni ITT Project"
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僕も何か社会に役に立つ仕事をして、しかもきちんと食べていけるようにしていきたいものです。
スペイン語圏関連で何かお話があればぜひよろしくお願い致します。(微笑)
ね、びっくりするぐらいに若いですよね?
この提案が国際社会からどう受け入れられるか本当に楽しみです。スペイン語圏はふだんはあまり縁がないのですが、発想も違うんでしょうかね?(笑) Buenafe2005さんも、なにかおもしろい事例を発見したら、ぜひ教えてくださいね。