2006年04月21日

BDFにご用心!

 BDFと言われてもなんのことやらわからない方がほとんどだと思います。BDFはバイオ・ディーゼル・フューエル、つまり生物由来のディーゼル燃料のことで、おもに植物性の食用油や廃食用油などを原料に、ディーゼル エンジンの燃料とするものです。

 化石燃料と違って、再生産可能な植物から作られた燃料であり、大気中のCO2の量も増やさない(カーボン・ニュートラル)であるため、最近にわかに着目されています。

■拡がるバイオディーゼル燃料(BDF)利用
http://www.npobin.net/hakusho/2005/topics4.html

 日本では、京都市の廃食油燃料化事業や、滋賀県で始まった菜の花プロジェクトネットワークなどが、廃食油を回収して、BDFを作っています。これは、使い古した食用油を再利用する、とても賢い利用の仕方ですね。

 しかし、最近はちょっと気になることがあります。こうした廃食油を使うのではなく、BDFを作るだけの目的で、大規模に作物を作る動きがあるのです。このようなことをしたのでは、大量の土地を必要とし、新たな環境問題を引き起こしたり、今まで食用に使っていた油の値段がつり上がったり、使えなくなる人が出てきてしまうことです。

 現在特に問題になりつつあるのは、東南アジアにおけるパームオイルや、南米の大豆油などです。いずれも元は熱帯雨林だったところを切り拓き、広大なモノカルチャーのプランテーションを作り、BDFを生産しようとしています。

 今週発行の環境新聞の一面トップの見出しは、「輸入BDFにも波及は必至」でした。これは、先日NGOが「パーム油は環境に優しいと言わないで」とライオンにテレビCMの表現変更などを求めたことと絡めて、日本が大量にBDFを輸入することになれば、さらに大きな問題が生じ得ることを指摘したものです。

 実際、僕がマレーシアやインドネシアで調査したときにも、BDFとしての需要でオイルパームのプランテーションがさらに拡大し、プランテーションをめぐる問題もより深刻になることを懸念する地元関係者の声を多く聞きました(農園関係者はビジネスチャンスと、逆に喜んでいましたが...)。

 フロンやPCBのように、発明されたときには夢の化学物質と大称賛されたものが、時間が経ってから環境にきわめて悪影響を与えることがわかったものもあります。ですから、私たちが事前にすべての影響を考えることは不可能です。しかし、どのような悪影響が発生しそうか予想がつくものについては、十分に慎重になるべきではないでしょうか。

 BDFも、カーボン・ニュートラルという一点を取り出して見れば、気候変動を防止する夢の燃料かもしれません。しかし、川上の生産現場まで遡って考えると、実はいくつもの落とし穴があることがわかります。環境影響を考えるときには、使用段階での影響だけではなく、製品のライフサイクル全体で考えなければいけない所以です。

 一方、菜の花プロジェクトのように、製品のライフサイクルを延長するよう、再利用するしくみを作れば、環境負荷は減らして、私たちにとっての効用は増やすことができます。

 製品のライフサイクル全体で、環境や社会にどのような影響があるかを考えながら使えば、より持続可能な仕組みが作れそうですね。ある一面だけ見て飛びつくのではなく、常にライフサイクル全体を意識することが、持続可能な社会のためには重要そうですね。


今日も長文を読んでくださって、ありがとうございました。
今日の記事は役に立ちましたか? 少しでも参考になったら、人気blogランキングへの投票をお願いします。
banner_04.gif応援してくださる方は、Click me!
posted by あだなお。 at 23:59| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(3) | エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お話の通りと思います。@廃油の回収からのBDFは価値があります。A油脂植物の生産から直接BDFを生産する場合、種々のアセスメントが必要なことは理解できます。  Aに関する情報とさらに高度な複合技術を加えることで環境への配慮が進んだ手法が見つかるのではないかと考えます。  今後とも環境問題の地球的視野での議論をよろしくお願いします。
Posted by 古川俊夫 at 2007年02月24日 18:01
古川俊夫さん

コメントありがとうございました。

BDFはまだ案外無批判なのですが、食物原料からエタノールを作ることについては、さすがに各方面から懸念が出てきましたね。食品原料の残りを活用する動きになりつつありそうで、これは歓迎すべきことです。

パームオイルやナンヨウアブラギリなどについては、これからもウォッチしていきたいと思います。何か情報がありましたら、ぜひ教えてください。
Posted by あだなお。 at 2007年02月25日 23:38
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

食物・エネルギーの自給と発展途上国
Excerpt: 最近は食の安全という言葉が流行のようで、まるで国外の食品が危険であるかのように言われることもあります。またフード・マイレージという概念を使って国産の農作物の方が環境負荷が低いと盛んに主張している人も..
Weblog: 持続可能なチャンネル
Tracked: 2006-04-22 04:25

BDFで農業拡大?
Excerpt: 「環境はビジネスになる」と言われますが、こういう方向には向いて欲しくないものです。
Weblog: 鯵、環境民俗学ヲ嗜ム
Tracked: 2006-04-22 22:44

「パーム油は環境にやさしい」と言わないでby地球・人間環境フォーラム
Excerpt: 「パーム油は環境にやさしい」と言わないで ライオン「新トップ」のCMに関する要請書を提出 というホームページがあります。 「パーム油を使用しているから環境にやさしい」というライオン社のCMの表現は正..
Weblog: 温暖化いろいろ
Tracked: 2006-04-27 11:16
Google
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。