ところが「田んぼの生物多様性指標・企画委員会」の調査結果によれば、田んぼには5668種もの生きものがいるというのです。特に多かったのは植物の2075種、そして昆虫の1726種です。いずれもすごい数ですが、もちろんこれはすべてを網羅したものではなく、実際にはもっともっと、いろいろな生きものがいるはずです。例えば、昆虫が植物より少なくてすむはずがありませんから(笑)
この話は先日、調査にも参加したNPO法人田んぼの理事長である岩淵成紀さんからお聞きしましたのですが、そもそもこれまで、田んぼの生物の徹底的な調査は行われたことがなかったのだそうです。案外、盲点だったのです。そしてさらに面白いのは、今回の調査もプロの研究者だけがしたものではなく、虫好き、植物好きの市民を巻き込んで、大勢の方々の手で調査したということです。農家のおいじいちゃんやおばあちゃんだけでなく、家庭の主婦や普通の会社員が、みんなで力を合わせて調査したのです。分類学者のことをタクソノミスト(taxonomist)と呼びますが、こういう玄人はだしの協力者をパラタクソノミスト(parataxonomist)、略称パラタクと岩淵さんは呼びます。
田んぼをはじめとする里山は、少なくともかつては、私たちの生活の場でした。そこにはイネ以外にどんな生きものが暮らすのか。そこで暮らす人々は、みんなそれを知っていたのです。もちろんそれは農家の方々だけではありません。田んぼで見かける代表的な植物の葉を図案化したポスターを見せてもらいましたが、どれも馴染みがあるものばかりでした。一つひとつの名前まではわからなくても、皆さんもきっとその形に見覚えがあることでしょう。
私たちは本来、実に多様な生きものに囲まれていたということを如実に語る数値であり、事実です。こういうことを数値で見せつけられると、私も里山に対する評価を上げずにはいられなくなりました。
そしてさらに面白いのは、NPO法人田んぼでは、単にそこに棲む生物種の数だけではなく、「田んぼの底力」と呼ぶ農家の工夫、農家の方の土を作る努力(土力)を数値化した「土壌活性数値」の3つの指標を使って、多くの生きものと共生する田んぼの独自の新しい活動評価システム「田んぼのいきものとの約束」を作ったのです。この指標は、生きものと共生するために「農薬を使ってはいけない」というようなこれまでのような減点方式ではなく、役に立つことをすればどんどん点数が上がっていく、加点方式。点数も100点が満点というわけではなく、青天井です(笑) 実に前向きで、楽しくなる指標ですね。
この「田んぼのいきものとの約束」のことも含めて、詳しくはぜひ以下の記事をご覧いただきたいと思いますが、こうした自由な発想と活動から、田んぼの価値が再評価され、単なる「お米製造工場」ではなく、イネ以外の5667種の生きものを育む環境としての田んぼが増えることに期待したいと思います。
■「おいしいお米と生物多様性を両立させる「ふゆみずたんぼ」の底力」(地球リポート)
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