2006年06月23日

本当にいた「ナイロビの蜂」

 実は全編を観たわけではないのですが(^^;)、大胆にも紹介しちゃいます。飛行機の中で途中まで見て、帰りの便で後半を見ようと思っていたら、帰りはやっていなかったんですよ(;_;) 

 映画の原題は"The Constant Gardener"(堅実な園芸家)。わけのわからん題名ですが、これは主人公であるジャスティンの趣味を言っているのでしょう。では邦題の「ナイロビの蜂」とはどういう意味なのかですが、この物語の影の主人公である製薬会社のロゴがハチなんですね。そして、映画の舞台がナイロビなので、「ナイロビの蜂」にしたのでしょう。え、余計わけがわからなくなりました?(^^;)
ナイロビの蜂(日本語版)
The Constant Gardener(英語版オリジナル)

 では少しだけストーリーを紹介しましょう。今日お伝えしたいことを説明するための最小限の粗筋に留めますが、ネタバレの嫌な方はスキップしてくださいね。(予告編と同じレベルですけどね)

 この映画でゴールデン・グローブ賞助演女優賞を取ったレイチェル・ワイズが演じるテッサは、正義のためには何を犠牲にすることも厭わない、果敢な女性です。思ったことはなんでもすぐに実行しないと気が済まない性質なのですが、それが文字どおり、命取りになります。

 彼女の夫であり、世間知らずのお坊ちゃま外交官のジャスティンは、妻の突然の事故死の原因を調べるうちに、とんでもない事実を知ることになります。国際的な製薬会社が、新薬のテストを安くあげるために、アフリカで「人体実験」をしていたのです。テッサはそのことに深く関わり過ぎ、殺されたのでした。

 で、この「人体実験」が今日のテーマです。フェルナンド・メイレレス監督自身が、この映画を撮りたかった理由として「製薬会社の陰謀について描きたかったから」と述べていますが、驚いたことにアフリカでは、実際にこうした人体実験もどきの新薬テストが今も行われているのです!

 もちろんその理由は、費用が安いからです。十分なインフォームド・コンセントもなされないまま、というよりそもそも自分たちが何の薬を与えられているかすら知らないまま、アフリカの人々はモルモット代わりにされているのです。そして幸運にもその新薬が有効であることがわかり、めでたく発売されることになったとしても、まず確実に、その新薬はそのアフリカの人々には経済的に手が届かないでしょう。自分たちには手が届かない薬のために、自分たちの身体を提供しているのです。

 そんな話はにわかに信じられないという方は、ぜひ以下の記事をお読みください。
新薬のモルモットにされるアフリカの人々(Le Mondeの記事の日本語訳)
原文はこちらです。
L'Afrique,cobaye de Big Pharma(アフリカ、巨大製薬企業のモルモット, Le Monde)

 なお、この記事に出て来るGilead Siences,Inc.は、タミフルの製造権を持っている会社だそうです。

 ジャスティン役のレイフ・ファインズも、「映画を観た後には、この愛の物語に感動し、そしてその後でいいので、自分の世界以外で起こっていることに興味を持って欲しい、企業の権力について知って欲しい」と語っています。

 ところがですよ、この映画の日本の公式サイトでレビューを見てみると... 「壮大なラブストーリー」なんて感想ばかりです。いったい何を見ているんでしょう? おまけにレビューのコーナーの見出しは「感動のハチミッツ!!!」 この映画が伝えたかったことを、本当にわかっているんでしょうか... うーむ。

 もう一つ、僕が後から知って驚いたことも書いておきましょう。映画の中には、テッサがスラムを訪れるシーンが頻繁に出てきます。これ、本物のスラムなのだそうです。なんでそんなところで撮影できたのかと言えば... 

ちなみに、テッサがアフリカ支援に打ち込むシーンが、
たくさん出てきますが、
これは、テッサ役のレイチェル・ワイズ(アカデミー助演女優賞)や、ジャスティン役のレイフ・ファインズをはじめ、
この映画の制作スタッフが、
実際に、ケニアの飢餓状態のスラムの村に行き、
"Constant Gardener Trust"というNGOを作り、
そこに橋と水施設を作り、インフラを整備し、
その姿をドキュメンタリー手法で撮ったものです。

出てくるアフリカの子どもたちは、
実際に、そのスラムの村の子どもたち。
テッサと子どもたちの交流は、
演出ではありません。

それから、この映画の収益、
そしてドネーションは、
"Constant Gardener Trust"を通じて、
アフリカのスラムに送られます。
出典:http://blog.kansai.com/rebelblog/121


■The Constant Gardener Trust
http://www.constantgardenertrust.org/

 自分たちの世界以外のことに、日本人は本当にこんなに無関心でいいのでしょうか。知らないのはしかたがありませんが、同じ映画を見た後の反応の違いが気になります。

 と、あまり嘆いてもしかたがありません。まずは観てみてください。映像も音楽も美しく、それだけでもいいですよ。僕ももう一度、きちんと始めから終わりまで観ようと思っています。


今日も長文を読んでくださって、ありがとうございました。
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posted by あだなお。 at 23:55| 東京 🌁| Comment(12) | TrackBack(4) | 本・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お久です。ナイロビの蜂、ウチも機内上映で見ました。医療に多少関わっている身としては見逃せない問題ですよね。(映画評ではほとんど<恋愛映画>として扱われてますが。)
ちなみに本文中に出てきたGilead Siences(本文スペルミスしてますぜ)、なんとアメリカ国防長官のラムズフェルドが元会長&現在も大株主で、鳥インフルエンザ騒動でかなり大もうけしてます・・・
Posted by げん at 2006年06月24日 00:16
私はギャガの試写室でこの映画を見ました。テッサはアムネスティの活動家という設定だったし、彼女が暴こうとしたことが企業がおかす犯罪ということで、人権団体のスタッフである私と活動担当職員の2人で見に行くことになりました。

ギャガの担当者は製薬会社についての犯罪、企業犯罪、アフリカの問題など調べていましたが、結局この映画の売り方を「夫婦愛」ということにしたようです。

この映画にちらっと出てくるのが、アムネスティの年次報告書です。ジャスティンが「アムネスティ?」とか言って手に取るやつです。

Posted by 谷口玲子 at 2006年06月24日 01:00
うちもこの映画みました。
すっごく重くって、ラブロマンスどころじゃなかった!!
うちは看護学生で、国際救援に興味があったのでこの映画を見たのですが、
いろいろ考えさせられる映画でした。
治験のために犠牲にするなんて…と思ったし『救援』ってなんだろうって思います。
今でもまだその思いは消えません。
もしよろしければこの記事をうちのブログで紹介したいのですがよろしいですか??
Posted by you at 2006年06月24日 16:55
>元ちゃん

お久です。そうですか、飛行機の中で見ましたか? スペルのご指摘、ありがとうございました。さらりと直しておきました(笑)
ふーむ、ラムズフェルドが大株主なのですか。儲かることには、なんでも手を出すのですね(^^;)

>Reykoさん

コメントありがとうございます!
へー、そういうお誘いがあるのですね。しかし、日本のマーケティング的にはやはり「夫婦愛」なのですか... 社会派では受けないんですかねぇ。
ところで、アムネスティのオススメ映画コーナーはなくなってしまったのでしょうか? もしあったら、これでもきっと入りますよね?

↓皆さんもどうぞ
アムネスティ・インターナショナル・ジャパン
http://www.amnesty.or.jp/

>youさん

はじめまして、こんにちは。
youさんのような受け止め方をする若い人がいることを嬉しく思います。ぜひ、学校のお友だちと話しをしてみてください。簡単に答えが出るものではないですけれど、いろんな人の考えを聞くといいと思いますよ。

ブログでのご紹介、もちろん大歓迎です。リンクでも、TBでも、ご自由にどうぞ!
Posted by あだなお。 at 2006年06月24日 23:43
はじめまして。
知り合いからあだなおさんのブログを教えてもらいました。
興味深い記事が多いのでお気に入りに入れて読ませていただいています。

まだ映画を観ていないのですが、宣伝から「ナイロビの鉢」は恋愛映画として興味を持っていましたよ。
あだなおさんの記事を読んで、とても観たくなりました。
Posted by さごち at 2006年06月25日 11:14
さごちさん、こんにちは。

ま、たしかに「恋愛映画」でもあるのですが、観ていただければ、単なる恋愛映画でないことはお分かりいただけると思います。

是非ご覧になってみてください。そして、感想を聞かせてください。
Posted by あだなお。 at 2006年06月25日 23:10
あだなおさん
私もこの映画見ました。
その感想をブログに書こうと思いながら、とっても気が重くなってしまって・・・
鳥インフルエンザもそうですが、私には、もっと恐ろしいHIVの起源の謎がどうしても頭をよぎってしまうのです。
映画、人には薦めているのですが、やはり見る人によっては、怖い恋愛映画として捉えられちゃうみたいです(^^;)
Posted by Vickie at 2006年06月29日 09:41
Vickieさん

こんにちは〜
たしかに気が重くなりますよね。でも、だからこそ知ってもらいたい、そう監督も、出演者も思っているのだと思います。

それにしても「恋愛映画」としか受け取れない日本のメディアは...

どこかのブログに恋愛を超えた、もっと大きな愛情という意味でのlove storyだと書いている方がいましたが、せめてそのぐらいの紹介をしてもらいたいですよねぇ。
Posted by あだなお。 at 2006年06月29日 23:58
すいません。上記のコメント、ななしで送付してしまったので、お手数ですが消してください。

おひさしぶりです。TBさせてもらいました。そんなNGOのうごきがあったなんて・・・

最近、米国のPARTICIPANT(HPアドレスは下記参照)という映画会社は社会を少しでもよくするような映画をつくって、アクションを促しています。
日本もこういう動きあるといいのになぁ。
http://www.participantproductions.com/


Posted by あずーる at 2006年07月04日 01:08
あずーるさん

こんにちは!

そんな映画会社があるんですね、素晴らしい!

と思ってさっそくリンクを辿ったら...
なんと"An Inconvenient Truth"を作った会社なのですねぇ。なるほどねぇ。

"Fastfood Nation"もおもしろそうだし、ああ、そういえば"Good Night, and Good Luck"は見る機会を失していました。

これからは、この会社のことをチェックしますね。よい情報をありがとうございました。
Posted by あだなお。 at 2006年07月04日 01:20
あだなおさん、"North Country"邦題スタンドアップ、ジョージクルーニーの"Seriana"と”Good Night, and Good Luck"もこの会社のものです。どれもお勧め映画です。
ブログでかいてるので、またよかったらよってください。
Posted by あずーる at 2006年07月10日 23:13
あずーるさん

情報をありがとうございます。
"Good Night, and Good Luck"はちょっと興味があったのですが、見逃していました。"Seriana"はどんな内容なんでしょうね。

これからはPARTICIPANTの作品はみんな見逃せませんね!
Posted by あだなお。 at 2006年07月11日 01:36
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