2006年09月29日

ミッションが人を動かす

 一日遅れでなんとかフィリピンから帰国しました。昨日も書いたように、ホテルの中ではなんともなかったのですが、空港へ行く道端ではいたるところで大木が倒れ、空港はまだ停電中。必用最小限の明かりしかなく、薄暗く、エアコンもなく、どこも長蛇の列で、かなり悲惨な状況です。やっと飛行機に乗れてヤレヤレでしたが、出発は一時間遅れでした(^^;)

 その飛行機の中で読んだ「日経ビジネス」(06年9月25日号)がおもしろかったので紹介しましょう。「グーグルはなぜタダのか」という特集で、Googleが大躍進している秘密に迫ったものでした。

 Google は自らのミッションを、「世界中の情報を体系化し、アクセス可能で有益なものにすること」としています。そしてそのために、その目的だけのために、あらゆるものを検索可能にしているのです。ウェブサイトはもちろん、今では地図も、本も、どんどんデジタル化しています。

 そしてそれを世界中の人が使うようになり、そこに広告を出したいと思う会社が増え、Googleは今や世界有数の広告媒体です。Googleの収入のたしか99%が広告によるものだそうですので、Googleを広告会社だと考えれば、その売上はなんと電通の2倍にも達するそうです。

 このようにビジネス的にも大成功しているGoogleですが、Googleの社員はビジネスを、利益を生むことは意識しなくてもいいし、していないのだそうです。最高の環境の中で「世界中の情報を体系化し、アクセス可能で有益なものにする」というミッションのことだけを考えて、楽しく仕事をする。どれだけ素晴らしい検索ができるようにするか、使いやすいサービスを提供するか、それだけを目標にみんなが仕事をして、その結果として利益がついてきているのです。

 すべての企業が同じことをできるかどうかはわかりませんが、少なくともそんな企業が存在するのだということが、企業とは何なのか、働くとはどういうことなのかということを考えさせますし、また希望を持たせてくれるようにも思います。インタビューに答えている一人のセリフが印象的でした。「僕たちは金持ちになりたいんじゃない。幸せになりたいんだ。

 そしてさらに、インターネットによるこうした情報の民主化が、中国をも変えるかもしれないという記事も掲載されていました(「グーグルが中国を変える日」)。いや、そんなことはない。Google中国版は、中国政府にとって都合の悪い記事を表示させないように「検閲」することを認めたではないかという反論も聞こえてきそうです。しかし、これもGoogleにしてみれば、中国に入り込むための方策に過ぎないのだそうです。Googleの便利さが中国でも理解されれば、必ずGoogleは中国の国民の中に浸透し、内側からそれを変えるはずだと見ているようです。しかも、中国からでも英語サイトは検閲なしのものを見られるそうですから、だとすれば、そもそも大した問題ではないのかもしれません。

 「あらゆる情報を整理したい」、その思いで世界が変わっているのです。そして、それを支持しているのは、世界中のユーザーです。グーグルがタダでばらまく整理された情報とソフトのおかげで、個人はこれまでにない力を得、既存のビジネスや権力者は、今までのやり方を大きく変えざるをえないことになるのかもしれません。いや、きっとそうなのだと思います。これこそ、ネット民主主義と言うべき新たな枠組みなのでしょう。

 これを読みながら、今回のAFCSRでも似たような話を聞いたことを思い出しました。アメリカのホール・フーズ・マーケットの役員で、AFCSRの主催者のAIM(アジア経営研究所)の共同創設者であるラルフ・ソレンソン博士の講演です。

 ホール・フーズ・マーケットは有機野菜などの自然食品小売業です。1980年創設とまだそれほど古くはありませんが、今では全米に155店舗、カナダやイギリスにも進出しています。スーパーマーケット業界の中では驚異的と言えるほどの急成長を遂げている企業です。

 しかし、ここも利益を上げることや、店舗数を拡大することが目標なのではありません。自分たちの考えを忠実に遂行しているだけです。ホール・フーズ・マーケットが大切している価値観(Our Core Values)は次の5つです。
・入手できるもっとも質が高い自然のあるいは有機の商品を提供する
・顧客を満足させ、喜ばせる
・チームメンバー(職場の仲間たち)が能力を発揮し、幸せであることを支える
・利益と成長を通じて富を生み出す
・私たちの地域社会と私たちの環境を守る
出典:http://www.wholefoodsmarket.com/company/corevalues.html

 このことをしっかりとやっているだけで、ホール・フーズ・マーケットは成功しているのです。しかし、それは易しいことではないのだと思います。もっとも質が高い商品を提供するために、お客様に満足をしてもらうために、様々な苦労もあるはずです。環境を守るために、ホール・フーズ・マーケットで使っている電気は100%が風力発電によるものであり、地域社会を守るために純益の5%はフィランソロピーに使っているそうです。これだけでも、普通の会社だったらできないことでしょう。

 しかし、それが出来るのは、ホール・フーズ・マーケットは、まず重要なのはお客様を満足させることであり、そして従業員が幸せになれることであり、株主を喜ばせるのはその次だと考えているからでしょう。それでも、いやそれだからこそ、顧客はホール・フーズ・マーケットで買い物をしたいと思い、従業員は努力を重ね、投資家も安定した利益を得ることができるのだと思います。

 多くの人に受け入れられるしっかりしたビジョンやミッションがあれば、結果は後からついてくる。そう信じていいんだと思わせてくれる話です。単なる偶然かもしれませんが、今回の2社はアメリカの会社です。アメリカというと資本主義、自由市場経済の総本山のような気もしますが、そこでこのような企業が成り立つことも興味深いですね。問題は場所や、文化ではなく、マジョリティに受け入れられるということがポイントなのでしょう。そしてマジョリティを動かすのは、お金ではなく、思想なのです。

今日も長文におつきあいいただき、ありがとうございました。
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posted by あだなお。 at 23:59| 東京 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も最近この雑誌 読み始めました。
難しいところもあるが おもしろいです。
Posted by ikeo at 2006年09月30日 08:31
ミッションがたいせつですね。また楽しくなければ、個人的に昨年の愛・地球博に仕事として携わり、今はその理念を継承できる活動を仕事としてではなく、しています。
楽しくて、ためになる。がモットーです。
自分の思いが再確認できました。
Posted by kawada at 2006年09月30日 18:52
>Ikeoさん

コメントありがとうございました。さすが、日経ビジネスは読者が多いですね。

>kawadaさん

こんにちは。愛・地球博、最近またその続きのプロジェクトがあるのですよね? よかったら、話をおきかせください。
やりがいと、楽しさ、やはりこれが基本ですね。
Posted by あだなお。 at 2006年10月04日 01:38
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