2006年10月13日

銀行にノーベル平和賞

 今年のノーベル平和賞は、銀行とその総裁が受賞することになりました。なぜ銀行が? そう思った方も多いかも知れません。しかしこれは、受賞したのはちょっと変わった銀行です。

 銀行の業務は言うまでもなく金融。金融とは、文字どおりお金を融通することです。事業を始めるのに、当座のつなぎ資金に、不慮の支出に。理由はさまざまでしょうが、お金が必要な人にお金を融通し、その利用料として利息を受け取るのが銀行の仕事(のはず)です。

 ところが、お金があるところにもっと使えとお金を貸して、お金がなくて困っているところには貸さない、これが日本の多くの銀行の実態かもしれません。晴れている時に傘を貸し、雨のときには傘を貸さないどころか取り上げるなどと揶揄されることもあります。

 そんな銀行を見慣れていると、なぜ銀行がノーベル平和賞をと思うかもしれません。しかし、銀行の本来の役割を忠実に行い、社会を変えた銀行があるのです。その名はグラミン銀行、バングラディッシュで30年ほど前にできた銀行です。

 グラミン銀行は、本当にお金を必要としている貧しい人にお金を貸しました。貧しい人たちはそのお金で商売を始め、自分の手で稼ぐことができるようになり、極貧から脱出できるようになったのです。最初に貸したお金はわずか数ドル程度です。しかしそのお金のお蔭で、今まで自分で自分の運命すら決めることができなかった人々が、自立し、新たな人生を歩むことを可能にしたのです。自らの手でお金がかせげるようになった人たちは、自信を持ち、自尊心を持ち、自分だけでなく自分たちの社会の未来を自分たちで考え、作るようになったのです。

 貸したお金も98%が返済されているといいます。この数値は、日本のどの銀行よりも高いのではないでしょうか? グラミン銀行のやり方はマイクロクレジットと呼ばれ、今では先進国も含め、世界中の国々で活用されるようになりました。人を信じ、必要な人にお金を渡すことで、社会が再構築される力が生まれたのです。まさにノーベル平和賞に値する偉業でしょう。

 グラミン銀行のことは、さまざまなサイトでも紹介されています。検索してみればいろいろな記事が見つかると思います。
 
ムハマド・ユニスさんにノーベル平和賞!(rebel blog)
グラミン銀行、たった6ドルで人生が変わった(お茶の間から世界を変えよう)

グラミン銀行訪問(一橋大学水岡ゼミ海外巡検報告)

 もちろんグラミン銀行にも課題はあります。光だけでなく影もあるのだと思います。ホントのところはどうなんでしょう? そう思う方には、以下のコラムが面白いかもしれません。

マイクロファイナンスと、高利貸しのポジティブな役割 (HotWired Japan Altbiz)


 今回のグラミン銀行の受賞で、僕はこの世の中が確実に変わりつつあることを強く感じました。なぜなら今回の受賞は、

・ほんのちょっとしたアイディアで、社会は変わる
・一人が始めたことで、社会は変わる
・ほんのわずかなお金で、一人の人生が変わり、その積み重ねで社会は変わる
・比較的短い期間で、社会は変わる

ことを実証してくれたからです。

 このように社会にとって本当に必要なことは、意義があることは、多くの人が認め、広まっていくのです。こうした活動が社会に受け入れられ、正当に評価されることに、僕は大きな希望を感じます。

 グラミン銀行のことをもっと詳しく紹介したいなと思っていたら、いつもいろいろな情報を提供してくださる行徳のマグマ大使さんが、今回グラミン銀行と共にノーベル平和賞を受賞した同行総裁のムハマド・ユヌス氏のことを紹介したBSのテレビ番組の要約を送ってくださいました。転載可とのことですので、やや長いのですが、ご紹介したいと思います。ぜひご一読ください。

ムハマド・ユヌス。
バングラディシュのグラミン銀行の創設者です。
世界中の王族や指導者なども彼に一目を置いています。

ふつう,銀行は今,裕福な人にしか金を貸しません。
担保になる物件をもっていなければ,貸してくれないのです。
だから,世界中の半数の人は銀行からお金をかりることができない。
でも,貧しい人こそ金が必要なのです。
ムハマド・ユヌスは貧しい人に無担保で金を貸しました。
その結果どうなったかー。

すべては,1970年代半ばのチッタゴンで始まりました。
ムハマド・ユヌスは大学で経済理論を教えていました。
その年は史上まれに見る大飢饉。教室を出ると,バタバタ死んでいく人ばかり。一握りの米を手に入れることができなくて,弱っていく人。でも,自分達の力ではどうにもならないのです。
ムハマド・ユヌスは経済学の無力さを感じました。
知識だけでは死んでいく人を助けられないのです。

彼は町の人に何が必要なのか,聞き取り調査を始めました。
そして,聞き取りをした42人全員がお金が欲しいことが分かりました。総額で27ドルです。

彼は自分の持っているお金を彼等全員に貸しました。
無担保で,しかも返済期限を決めずに,少しずつ返済するように彼等に言いました。
彼等はその金をもとに小さな商売をするようになりました。
そして,金は全額返ってきたのです!

彼は自分の銀行をつくるにしました。
それがグラミン銀行です。
グラミンとは現地の言葉で「農村」という意味。
従来の銀行は,銀行に借り手が行きます。
グラミン銀行は銀行員が「農村」まで人々に会いに行きます。

しかもグラミン銀行は男性だけでなく,女性にも金を貸しました。
女性への融資は,当時,男性達は否定的でした。
イスラム教もヒンズー教も保守的な社会だからです。

女性達に話をしようとしても,彼女達は逃げてばかり。
そんな彼女達の反応が変わるまで長い時間がかかりました。
「いろんな噂があるけれど,グラミン銀行の人は信頼できる」
と分かってからは,彼女たちはやっと話を聞いてくれるようになりました。
それがなんと,今では融資を受けている人の95%が女性です!
彼女達は米を買い,脱穀して売っています。
女性たちの方が貧困から抜け出したいという気持ちが強いそうです。

返済するとさらに高額の融資が受けられます。
そうして,数百ドルの融資が受けられるようになった人も出てきました。
グラミン銀行の返済率は,実に95%に達します。

でも,グラミン銀行の役割はもっと大事なことにあります。
お金を返済すると,その人に自尊心が芽生えてくるのです。
とるに足らない人間とみなされていて,自分もそう思っていた人が自信をもって,世の中に伍していくように変わっていく。
それは劇的な変化と言えます。
それを演出しているのがグラミン銀行なんです。

グラミン銀行は今や巨大な組織に成長しました。
融資を受け付けるセンターは7万5千ケ所設置され,1日に実に100万ドルを貸し付けるまでになりました。
チッタゴンだけでも17万6000人がお金を借りています。
彼等に会いに行く銀行員は200人を超えました!

ムハマド・ユヌスは当初,公的な財政的な援助を受けていましたが,今はすべて自己資金で運営しています。
グラミン銀行が始めたマイクロクレジット(少額無担保融資)は,ベトナムやアメリカなど,さまざまな国に広がっていきました。

当然,既成の組織や銀行からグラミン銀行への批判が出てきました。既成の制度をぶちこわすのがこの銀行の目的の一つだったから当然です。
やれ,利率が高いとか,やれ返済率は誇張されているとか。あるいは「最も貧しい人にお金が届いていない」とかです。
そのような批判にムハマド・ユヌスは一笑して答えます。
「グラミン銀行は万能薬ではありません。人生は諦めずにがんばってみるべきだ。そのためにグラミン銀行を利用してほしい。解決策は示すことができるのです」

彼は,最も貧しい人に貸し付けを行うという新たな制度を始めました。
物乞いをしている数千人の人に,20ドルずつ渡したのです。
もちろん,担保をとらないだけでなく,返済計画も必要ありません。
ムハマド・ユヌスは,自分が27ドルで始めた最初の地点に返
り,リスクをともなうことを始めたのです。

マイクロクレジットは融資制度を変えただけでなく,社会の変
革ももたらしました。
お金を借りた人が集まる集会所では,みんなで16カ条の決意が読み上げられます。勤勉になること,責任をもつこと,健康であること,教育を受けさせること。
それだけでなく,正義や衛生についても人々は決意するのです。

マイクロクレジットによって女性と男性の役割が変わりました。
女性が自信をもって生きることにより,子どもが立派に成長するようになりました。ムハマド・ユヌスはその変化を見て,自分がやってきたことが報われたと思っています。

「貧しい家に生まれた人には何も罪はない。もともとは優秀な人々なのです。人は誰にも心に希望をもっている。でも貧しいと,心にふたをしてしまうんです。そのふたをとることがマイクロクレジットの役割なのです」最後に,ムハマド・ユヌスはそう言いました。


長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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posted by あだなお。 at 23:59| 東京 🌁| Comment(6) | TrackBack(2) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
『今まで自分で自分の運命すら決めることができなかった人々が、自立し、新たな人生を歩むことを可能にした』
人々の生活に本当に寄り添った知識だけではない知恵と、ほんのちょっとの援助が・・・
貸したお金以上の価値を社会に生み出したという事実にすごく感動しました。
Posted by あいか at 2006年10月16日 10:07
あいかさん

でしょ? しかも、今までは誰もが「極度な貧困にあえぐ人にオカネを貸しても、返済されっこない」って信じていたんですよ。

人間の行動はほんのちょっとした壁で邪魔されてしまうこともあるけれど(貧困層にとっての数ドルがまさにこれですね)、ちょっとしたアイディアと、ちょっとした手助けがあれば、それを乗り越えることができる。そして、自分を信じることができるようになれば、その何倍もの力を発揮できるんですよね。これこそ、自立の支援というものです。

今の日本だったら、どんな制度があればいいんでしょうね?
Posted by あだなお。 at 2006年10月18日 01:28
あだなお。さん
『今の日本だったら、どんな制度があればいいんでしょうね?』

確かに人間自分の可能性を信じることが出来れば、何倍もの力を発揮して強く自立の道に進めるようになると思います。
宿題として・・・持ち帰らせていただきますね(^^)
すごく難しい問題ですけれど身近な自分の問題として自分の出来ることを真剣に考えたいと思います。
Posted by あいか at 2006年10月20日 16:49
あだなおさん,転送いただき,ありがとうございました!
Posted by 行徳のマグマ大使 at 2006年10月21日 21:59
日本の大手銀行では新生銀行のマイクロファイナンスへの取り組み(http://csrfinance.cocolog-nifty.com/mirai/2006/09/post_a9a1.html)がありますが、銀行本体ではなく、NPOへの側面サポートの位置づけですね。

でも、日本の銀行としては画期的かつ意義深いことだと思ってます。企画から立ち上げまで関係者の方々には多大な抵抗や苦労があったことは容易に想像できますが、実現までこぎつけられたことに敬意を表します。

日本の大手銀行はいまも尚、貧者には見向きもせず、富裕層を顧客として取り込むことによりより多くの「収益」を上げることを目的として事業活動を行っています。

そこには「お金が貧しい人々の生活を変えられる、人々の暮らしを変えられれば社会を変えられる、そして、銀行がそれをやろう」という発想も意志もありません。

残念ながら、人命担保融資を行うような高利貸しに巨額の融資をして収益を稼いでいるのが銀行の実態です。

お金の使い方を変えれば、社会を変えることができる。それを現実のものにする最も大きな影響力を持つのがメガバンクですが、その経営はグラミン銀行の対極に位置するものです。それを変えることができれば日本の社会は大きく変われるのに・・・。変わらなければならないのは銀行だけではないですけどね。

「可能性を信じることができれば変われる」というユヌス氏の言葉を胸に刻み、銀行を変えるための挑戦を続けて行きたいと思います。
Posted by ペンギン at 2006年10月21日 23:20
>あいかさん

はい、あいかさんの回答、楽しみにしています。僕も同じことを、考えてみます。


>マグマ大使さん

マグマ大使さんの文章はとてもわかりやすくて、思わず転載させていただきました。お礼を言うべきは、こちらの方です。

>ペンギンさん

出自の違うグラミン銀行と、日本の商業銀行を直接比較するのは難しいかもしれません。しかし、こういう銀行があるんだ、それで世の中を変えることができるんだということは、すべての人に伝えたいですよね。

日本の銀行も、どうやったら利益を上げられるかではなく、どうやったら社会に貢献できるかをまず考えられないものなのでしょうか。銀行はそもそも、社会や人の役に立つ仕事のはずなのですから。
Posted by あだなお。 at 2006年10月22日 21:03
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ノーベル平和賞にバングラデシュ「グラミン銀行」とユヌス総裁
Excerpt: ノルウェーのノーベル賞委員会は13日、2006年のノーベル平和賞をバングラデシュの貧困層への金融支援を実施したグラミン銀
Weblog: 持続可能な社会と金融CSR
Tracked: 2006-10-14 03:28

みんなのちょっといい話
Excerpt: みんなのいい話。まとめました。教えてくれてありがとうございます。優しい気持ちになれるエントリーは
Weblog: スローライフしながらRICH
Tracked: 2006-10-14 12:24
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