出典:違法伐採問題はどの程度の問題? 世界銀行の報告書(持続可能な森林経営のための勉強部屋)
またこの報告書の中では、極度の貧困層12億人のうち90%以上が、生計上なんらかの形で森林に依存していることも報告しています。だからこそ、林業の良いガバナンスを作ることが貧困削減という世界銀行のミッションにも不可欠ですし、腐敗との戦いという世界銀行の重点項目にも関係してくるのです。
世銀の森林アドバイザーであるジェラルド・ディエテルル氏の言葉によれば、「違法伐採は生計のために必要に迫られてということもあるし、利益のために欲に駆られてということもあるが、滅多にはないけれども告発されるときには、貧しい人びとがターゲットにされる」と言います。ですから、「単に法律を整備したり、厳しく執行するのではなく、森林に依存せざるを得ない貧しい人たちのニーズを認識するように修正しなければ、公平と正義を欠く最悪のものになってしまう」のです。
しばしばアジアなどでの環境問題は、法律はかなり整備されているものの、その施行が不十分であると言われます。しかしこの話を聞くと、単に厳しくすればいいということではなく、貧しい人たちの事情を十分に理解した上で行うのでなければ、余計世の中の不公正を増し、単なる弱いものイジメになってしまう危険性があることがわかります。森林保全のために法令の完全施行を推進していかなければならないことは勿論ですが、このことには十分に注意する必要がありそうですね。
林業が重要な国で見てみると、なんと2/3以上の国々では、50%以上が違法伐採なのだそうです! ちなみに日本と関係が深そうな、アジアなどの国々における、違法伐採の推定値は以下の通りです。
カンボジア 90%
インドネシア 70−80%
マレーシア 最大35%
ミャンマー 50%
パプアニューギニア 70%
極東ロシア 50%
タイ 40%
ベトナム 20−40%
以上出典:World Bank: Weak Forest Governance Costs Us$15 Billion A Year(World Bank)
もし皆さんが会社で、あるいは自宅で使っている木材が、こうした国々からのものであれば、あなたも違法伐採に加担している可能性があります。企業であれば、これは非常に大きなリスクです。合法かつ持続可能な木材・木材製品のみを使う体制を整えたいですね。ちなみに日本政府は既にそのような政府調達方針を出し、今年4月から実施になっています。政府に納入するためには、合法木材であることが必須条件になったわけです。
これに伴い、「木材・木材製品の供給側の関係者はもとより、これを利用する調達側の企業、一般消費者の方々の間で違法伐採対策に関する情報を共有する」目的で、「合法木材ナビ」というサイトが10月6日にオープンしています。林家、木材輸入業者、流通・加工業者、調達担当者、一般消費者向けの情報が掲載されています。なかなかよくまとまっていますので、興味のある方は是非どうぞ。
今日も長文におつきあいいただき、ありがとうございました。
違法伐採の現状、いかがでしたか?。

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TBとリンクさせてもらいました。
具体的な数字が多いのは説得力が
あっていいですね。
引き続きコメントをありがとうございます!
具体的数字が多いのはいいんですけれど、計算根拠はどうなんでしょうね?(笑) まぁ、直感的にはこんなもんかなという気もしますが....
マレーシアだと盗伐や違法伐採は「ときどきある」と聞くぐらいですけれど、インドネシアだとそんな話ばっかりです。それだけでも、両国でどのぐらい差がありそうかは、おおよそ想像できそうにも思いますが...
ちなみに、最近の衛星画像を使えば、熱帯林であれば一本一本の木までほぼ特定できます。これを使えば、かなり正確に盗伐等のモニタリングを出来そうですね。かなりオカネがかかるのと、事後的にしかわからないのが難点ですが...