2006年11月24日

決めるのは消費者

 シンガポールでの会議を終え、帰国しました。シンガポールでは、持続可能なパームオイルのためのラウンドテーブル(RSPO)の第四回目の円卓会議(RT4)に出席しました。

 この会議は様々な立場のステークホルダー(関係者)が集う、文字どおりマルチステークホルダーの会議です。オイルパームの生産者(農園、搾油工場)、精製工場、消費財メーカー、小売、環境系NGO、社会系NGO、金融と関係者が一堂に集まるのはなかなか壮観です。ある原料をめぐってこれだけのステークホルダーが集まる仕組みを持っているものは、珍しいのではないでしょうか。

 そして今回の発表で特に感じたのは、欧州の消費者からの「持続可能なパームオイル(SPO=Sustainabel Palm Oil)が欲しい」という声の高まりです。

 世界最大の消費財メーカーの一つであるユニリーバーの代表はしきりに「消費者からの要求なのだ」を繰り返していました。今までのサプライチェーンは、原料(上流)から商品(下流)への流れがメインだたのですが、消費者からの声が大きくなったことにより、下流から上流へと流れが逆さになったのです。つまり、「農園から食卓へ(farm to fork)」から、「食卓から農園へ(fork to farm) 」へと逆転したのです。あるいは、「運転席に座っているのは消費者だ」とも言っていました。

 ユニリーバー以外のメーカー、小売、果ては金融機関も、口を開けば「SPOはいつになったら手に入るのか? 手に入ったらすぐにでも使いたい」と積極的です。というより、商品化すればすぐに買ってくれる消費者がいるし、逆にSPOを使わなければ消費者に自社(の製品)が支持されないという状況になっているのでしょう。

 今回は昨年とは異なり、日本の主要メーカーさんも参加していました。が、欧米のメーカーとはずい分と温度差があり、まだまだ様子見という雰囲気でした。欧米のように消費者から「SPOに切り替えてくれ」という声が強くないので、企業としてはあまり積極的にはなれないということなのでしょう。

 つまり、消費者の声があるかどうかが、企業の姿勢を大きく変えているのです。ユニリーバーをはじめ、日本のメーカーよりはるかに規模の大きい欧州企業ですら、消費者の声があれば動くのです。一方、日本の消費者はと言えば、まだ自分たちの持っている本当の力を認識していないのではないでしょうか。

 お隣の中国に比べると日本の人口は小さく見えるかもしれません。しかし、1億人超というは世界的にみれば十分に大きな市場です。しかも、高い購買力があるのです。その市場の声が高まれば、企業の行動に与える影響は非常に大きいはずです。

 もちろん日本の消費者の場合には、そもそもSPOの存在や、それが必要な理由が知られていないということもありますが、それにしても自分たちの力をきちんと活用していないのはもったいないことです。どんな社会にしていくかは、結局はそこに暮らす一人ひとりが決めることです。どんな商品が欲しいのか、どんな原料は使って欲しくないのか、日本の消費者に情報を伝え、その意見をまとめることができれば、自分たちがのぞむような社会に近づけることができるのです。

 RSPOの議論を聞きながら、これからどう消費者と企業や社会のコミュニケーションを推進したらいいのだろうと考えこんでしまいました。皆さんには、何か良い考えはありませんか?

今日も読んでくださって、ありがとうございました。
行動はまず発言から。コメントをお待ちしています。
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posted by あだなお。 at 00:26| 東京 ☁| Comment(10) | TrackBack(2) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あだなおさん こんにちは
一つ質問です。
持続可能なパームオイルの定義って
なんでしょうか?
確かに新たに森林伐採をして
そこにプランテーションを作るという作業は
森林に関しては持続可能な利用では
ありませんが、プランテーション自体は
それから15年もの間、フルーツを生産し続ける
わけで、これは持続可能と言えると思うのです。
例えば、過去にゴムのプランテーションとして
使われていた場所に植えた場合を持続可能な
パームオイルと呼ぶとか、そういう定義が
あるのですか?
Posted by アジケト at 2006年11月24日 10:43
あだなお。さん
私は、日本人には潜在的なグリーン・コンシュマーが非常に多いと思います。
それを、どうやって掘り起こしていくかなのですが・・・。
自分自身は大したことは何も出来ませんが、とにかくコツコツと周りの人達と一緒に消費者教育について考えて、啓蒙推進をしてゆきたいと考えています。
Posted by あいか at 2006年11月25日 08:14
>アジケトさん

こんにちは、お久し振りです! お返事が遅くなり、ごめんなさい。

RSPOによる持続可能なパームオイルの定義は、こちらのPDFをご覧ください。
http://www.rspo.org/PDF/CWG/RSPO_P&C_Japanese.pdf
あるいは、原文は、
http://www.rspo.org/criteria.htm
これで本当に持続可能かは議論が必要ですが、とりあえずRSPOではこの原則をクリアしたものをSPOと呼んでいます。
プランテーションについては、2005年11月以降は新規開発は認めていません。転換のみです。
また、オイルパームは植え替えは出来ますが、それを何回繰り返せるかは未知数です。おそらく今までのやり方であれば、そう長くは続けられないのではないでしょうか。つまり、持続不可能だと思います。

>あいかさん
そうですね、コツコツと消費者、生活者に啓発を続ける必要があります。

が、そこで企業に「植物性のパームオイルは環境に優しい」などというミスリーディングなCMを流されると、すべてが水泡に帰してしまいますよね。こういう企業は要チェックです。
Posted by あだなお。 at 2006年12月01日 01:29
あだなお。さん
回答ありがとうございます。
PDF読んでみましたが、
かなり厳密かつ細かいところまで
言及されていますね。
細かすぎで、こんなの出来っこないから
気にしない、みたいな人が出ちゃったら
逆効果だなー、なんてちょっと思いました。
Posted by アジケト at 2006年12月05日 00:29
アジケトさん

厳密というか、境界はちょっと曖昧なところも残っているような気がしますが、方針としては非常に厳しいですよね。厳格に運用すると、これにパスするのはとても大変だと思います。

今はこれをどうやって認証するか、その制度作りを議論しているところです。

「こんなの出来っこないから」という人に対しては、やはり消費者がしっかり注文をつけるということが有効なのではないでしょうか。
Posted by あだなお。 at 2006年12月07日 01:53
マレーシアはパーム油産業はオランウータンなど絶滅危惧種に害を加えていないという声明を出したそうです。これだけNGO、国連機関や科学者がデータをとって警告しても、受け入れられないのでしょうか。警告より対話のほうが発展性があるのかもしれません。

http://www.forbes.com/feeds/ap/2007/04/16/ap3616469.html
Posted by ゆず at 2007年04月18日 18:30
こんばんは。
あだなおさんが、2006/10/15「企業の良心とは?」で紹介された、
小榑雅章さんの『「良心ある企業」の見分け方』の中に・・・
「使い捨てや環境汚染をやめさせるには、政治の流れを変えなければならない。政治を変えようとするなら、まず企業を変えることだ。企業を変えようと思うのなら、消費者を変えることである。われわれはその消費者を変えよう。持続可能な世界を築くために、つぎの世代に美しい環境を残し引き継ぐために、・・・」と、パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードの言葉を紹介されています。そして最後に、「最後に問われるのは、あなた自身の向社会性です」と結ばれています。

ある調査によれば、日本にはグリーンコンシューマは1%しかいないと言われています。これでは企業も政治も変わりません。アルビン・トフラーが『第三の波』で予言した「プロシューマー(生産する消費者)」ではありませんが、大切なことは、グリーンコンシューマが増えることです。
そのためには、「あなた自身の向社会性」が問われる訳ですよね。
ここではパームオイルが取り上げられていますが、例えば洗剤だと必ず成分表示がしてあります。単に界面活性剤としか表示されていませんが、環境省の67種類の環境ホルモンの一つであるノニルフェノールが使われていることをご存知ですか?洗剤や歯磨き剤に使われているラウリル硫酸ナトリムが、たった15秒で心臓に達することをご存知ですか?洗濯洗剤と柔軟剤が使われると、LASコンプレックスと呼ばれる猛毒が河川で合成されてしまうことをご存知ですか?赤ちゃんの肌着に蛍光増白剤入りの洗剤をなぜ使用してはいけないのでしょう?
要は、消費者一人ひとりが自ら学び、賢い消費者になることしか道はないのでは、と思います。情報を得るには情報を発する、という法則もあるそうですよ。

■ 『「良心ある企業」の見分け方』小榑雅章 著 宝島社新書
■ 雑誌「暮らしの手帖」掲載記事 著者:小榑雅章
 http://www.ipr-research.org/kurashi/
それでは、また(^.^)/~~~。
Posted by 空っぽの皿 at 2007年04月19日 01:43
続きです(^_^;)。
スタバのCSRは、確かに素晴らしい。
でも、「本日のコーヒー」はある。スタバでは1時間毎に淹れ換えるんだけど、酸化の始まる10分後と前の値段が同じ。味が全然違うのに、なんで?
マックに対抗して、化学合成物質まみれの朝食メニューを充実させた、なんで?
「わたしがクールビズを提唱しました」と言う、元環境省大臣の小池さん、ご自身のお化粧はクールビズされないんですか、なんで?(^_^;)。河川が泣いています(^_^;)。
日本のペットボトルはリサイクルを考えて薄い、ドイツのペットボトルはリユースを考えて厚い、なんで?
・・・・・・・etc,etc,etc.
難しい石油系化学合成物質の名前を覚えなくても、
『決めるのは消費者』のあなたです。
それでは、また(^.^)/~~~。
Posted by 空っぽの皿 at 2007年04月19日 11:34
>ゆずさん

こんにちは。興味深いニュースをご紹介いただき、ありがとうございました。

記事も拝見しました。欧米のNGOの攻撃に大部苛立っているようですが、問題ないとは言えないでしょうね。確実にオランウータンの住み処である森は減っているのですから。

>空っぽの皿さん

そうです。決めるのは消費者ですし、けれども、日本ではその消費者の反応が鈍いのです。残念ながら。

化学物質の名前やその危険性を消費者が覚えたり、一つひとつチェックするのは現実的ではありません。それは専門家や専門性の高いNGOに任せればいいことです。

あとは、そうした情報にどう反応するかですね。

消費者は企業の行動を見て、企業を評価することができます。企業も消費者の行動を見て、消費者を判断しているのです。
Posted by あだなお。 at 2007年04月20日 00:53
ありがとうございます。
普段から一つひとつチェックすることをしていないから、情報がもたらされても関心がない。反応の鈍い消費者は企業の行動を見て、企業を評価することができない。企業もそんな消費者の行動を見て、消費者を判断している。結果、電力会社のような隠蔽体質が蔓延る。詭弁ですかね(^_^;)。悲しいことです。
消費者が企業を評価する力を持たなければなりませんね。
それでは、また(^.^)/~~~。
Posted by 空っぽの皿 at 2007年04月20日 03:00
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