2007年04月12日

これは大人の問題だ

 先日ちらりと書きましたが、この夏公開される「それでも生きる子どもたち」の試写会に行ってきました。ブラジル、イギリス、アメリカ、セルビア・モンテネグロ、ルワンダ、イタリア、そして中国の世界7ヶ国に生きる子どもたちの今を切り取った短編のオムニバスです。
kodomo120_60.gifそれでも生きる子どもたち」公式サイト(音楽が流れます!)

 どの子どもたちも思わず抱きしめてあげたくなるのですが、中でも良かったのが「ビルーとジョアン」に出て来るブラジルの貧民街に生きる兄妹。妹思いの、優しくて、強くて、機転も利くお兄ちゃん。きっといい男になると思います。

 他にどんな子どもたちが出て来るかというと...
両親の別離、ストリートチルドレン、HIV胎内感染、少年兵士など、7つの国の子供たちの現実を、7つの国の監督たちが
ドラマチックに描く。
子供時代ならではの恐れを知らない逞しさと、劣悪な状況をも新鮮な遊び場にしてしまう想像力。
と公式サイトでは解説するのですが、それでも僕は何ともやりきれない思いを感じてしまいました。

 たしかに「子供たちは、生きることの天才」です。どんな境遇でも、どんな場所でも楽しもうとしています。しかしそれはおそらく、彼らが単にその世界しか知らないから、自分の境遇を相対視する経験も能力も未だ持ち合わせていないからだけのような気がします。子どもたちがどんな場面でも絶望しないとしたら、それはただ彼や彼女にとって唯一の世の中がそうでしかないから、つまり、世界はそういうものだと信じ切っているからなのではないでしょうか。

 このことはまさに、「ジョナサン」という作品のテーマにもなっています。フォトジャーナリストのジョナサンは、自分が戦地でただ写真を写すだけで何もできないことに、激しく自己嫌悪します。しかし、同じ状況の中でも、子どもたちがそんな最悪の状況も少し楽しみながら生き抜いていることを知り、再び自分の仕事を続けようとする。そんなストーリーです。

 「ここに描かれた子どもたちをどうか哀れまないように。」 監督たちは口々にそう言います。たしかに、彼らは哀れまれるだけの存在ではないし、僕たちが彼らを可愛そうにと思ったところで何も変わりません。でも、だからと言って、子どもたちは逞しいで終わらせるわけにはいきません。

 この映画の中ではほとんど描かれていませんが、ここに登場する子どもたちは皆、実際にはとても傷ついているはずです。表面的いくら逞しく生きているようであっても、そうした傷が彼らの人格形成や、人生観に暗い影を投げかけないことがないとは言えないでしょう。

 そして絶対に忘れてはいけないことは、この7つの辛い物語の原因を作っているのは、すべて大人だということです。戦争、HIV感染、離婚、貧困... すべては大人がもたらしたことであり、子どもたちはただそれを受け止け、その状況の中で「生きていくしかない」のです。なのに、子どもたちは誰一人、泣き言なんて言いません。泣き言を言うのは、大人だけです。

 ですから、僕はこれは子どもたちにエールを送る映画ではないと思います。そうではなくて、こんな境遇の子どもたちが生まれないように、僕たち大人がもっと頑張れよ。そういう映画なのだと思います。

 それにしても、7本の作品の子役たち。みんな無茶苦茶にうまいですね。完全に役になりきっているのですが、なぜ小さな子どもたちにそんなことができるのか、不思議です。たしかに、子供には大変な適応力があるのかもしれません。でもね、それに甘んじるのは反則です。頑張るのは、僕たちですよ。

今日も読んでくださって、ありがとうございました。
この映画、見てみたくなりましたか?
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posted by あだなお。 at 23:59| 東京 ☀| Comment(8) | TrackBack(6) | 本・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。sanouaです。
この映画、とても気になっていました。
観にいくつもりです。

書かれていること、本当にそうだと思います。
こどもの適応能力は確かにすごいです。
その環境で生きぬいていかねばならないのですから。
でも、「適応して生きてきたこと」と
「傷ついていないこと」はもちろん同じではない。
でも、なぜかそのことを、大人は忘れがちですよね。
そして、そんなこどもを利用してしまったり
甘えてしまったりする。

世界中の大人は、結局世界中のこどもに責任がある。
そのことを心において行動すれば、
世の中、全て理想通りとはいかないとしても
少しずつでも変わっていくと信じています。

>頑張るのは、僕たちですよ。
本当にそうですよね。がんばります。
Posted by sanoua at 2007年04月13日 09:49
 こんばんは。
 あだなおさんやsanouaさんが言われるとおりだと思います。
まだ観ていないのですが...(^_^;)。
 公式HPを見た限りなのですが、日本語題名が『それでも 生きる子どもたちへ』に対して原題は『All the Invisible Children 』(気づかれない子どもたち)なんですよね。
だから、日本語の題名だけ見たら、子どもたちへのエールに思ってしまうのかもしれませんね。
 あだなおさんも指摘しているように、
「ジョナサン」の監督のひとりであるジョーダン・スコットが語っているメッセージ・・・
「この作品は、これまで大いに貢献してきたのに世間で大した役割を果たしていないと感じている男の物語。でも結局、彼が先に進むことを選ぶことを知ったように、世界の人々がこの映画をきっかけにして、何かを感じて、少しでも先に進んでもらいたいわ。」が、この作品全体を代弁しているんじゃないかなぁ...と、想像しています。
 富山は夏休み前頃の公開なので、いまから楽しみにしています。紹介していただき、ありがとうございました。私も、しっかりしなきゃ!
それでは、また(^.^)/~~~。
Posted by 空っぽの皿 at 2007年04月14日 00:14
あだなお。さん視点での
気づきに富んだ映画のご紹介、
本当にありがとうございます!!

子供を取り巻く様々な世界の問題、
おっしゃるとおり全て大人たちが
作り出したものだと思います。
親として身の引き締まる思いです。

>登場する子どもたちは皆、実際にはとても傷ついているはず・・・人生観に暗い影を投げかけないことがないとは言えないでしょう。

そうですね。
今の大人たちだってみな昔は子どもだった。
人間積み重ねて歩んできたとおりにしか
生きて行くのは難しいと思います。

だから、
問題を直視できない
「大人になりきれない大人」を
たくさん作り出してしまう
「負の連鎖」を
勇気と知恵を出して皆で断ち切って行きたいですね。

現時点で気付いている「本当の大人」の責任だと
思います。
Posted by あいか。。 at 2007年04月14日 00:32
P.S
原題から私がタイトルを付けるとしたら.....
『気づかれない子どもたちに、大人は気づけ!!』
まさかこの映画にまで・・・それはないですよね。(^_^;)
Posted by 空っぽの皿 at 2007年04月14日 01:18
あだなおさん

いつもながらに、いいこと書きますね〜。
同意同意同意です。

TBさせてたいだきました。^^
Posted by めぐみ@離島 at 2007年04月14日 07:50
東京書籍印刷の浅川さんのご紹介で拝見いたしました。
百世瑛衣乎(ももせ・えいこ)と申します。
私はジェンダーを中心に本などで、やはりどうすれば社会が良くなっていくだろうかに挑戦しています。
http://plaza.rakuten.co.jp/gomomose

この映画、観にいきます。
ご紹介ありがとうございます。

>こんな境遇の子どもたちが生まれないように、僕たち大人がもっと頑張れよ。そういう映画なのだと思います。

同感です。
「子供時代ならではの恐れを知らない逞しさと、劣悪な状況をも新鮮な遊び場にしてしまう想像力。」という言葉に、私もちょっと抵抗感を覚えました。
賛美できることじゃないなって。
大人が子どもに甘えちゃいけないですね。

自分が子どものころ、親に殴られるのは当たり前だと思っていました。毎日、傷ができても、そういうものだと思っていました。
一見、たくましいと見えるかもしれないけれど、
他のみんなはそうじゃないと知ったときにショックでしたし、うらやましくもあったし。(笑)
ドモリで無口だった自分は、家を出て、表面的には見違えるほど変わったけれど、深い部分にトラウマはありますよね。
「自分から何かを求めることができない(自分の要求を出すと殴られるという潜在的な恐れ)」とか、トラウマに気づいて、少しずつ勇気を持つようにしています。

自分は日本という環境のおかげで、自分の力で変えられる部分も多いこと、幸運に思います。
けれどもそうではない環境の子どもたちもたくさんいる・・・何かできることはないかと思っています。
まずは、上映が近づきましたら、この映画をブログでご紹介しますね。
Posted by 百世瑛衣乎 at 2007年04月15日 10:25
>sanouaさん

こんにちは、お久しぶりです。
映画に興味を持ってくださって、ありがとうございました。
ご覧になったら、是非また感想をお聞かせください。そして、いろいろな方にもご紹介してくださいね。


>空っぽの皿さん

あっ、原題は"All the invisible children"でしたか... そのことを見落としていました。いや、これはうっかりしていました。

Invisible childrenとは、「この世に存在していないことになっている子どもたち」というような意味ですね。つまりは、僕たち大人がきちんと向き合っていないことを戒めているタイトルなのでしょう。

その問いかけに対して、僕たちがどう行動できるのかということですね。

>あいかさん。。

そうなんです、問題はその「負の連鎖」をどうやって絶ち切るかです。

実はこの映画を見ながらもう一つ思ったことがあります。たまたまこの映画は日本以外の国の話だけだったのですが、もしこの監督が今の日本の子供を取り巻く環境を見たら、どう描くのだろうかと。

今回はたまたま含まれていなかっただけで、実は僕たちも目をつぶっていることが、あるいは連鎖を絶ち切ることに成功していないことが、たくさんありそうです。

>めぐみさん

おひさしぶりです!
ご紹介ありがとうございました。

めぐみさんのサイトの読者の方にも、興味を持っていただけるといいのですが....


>百世瑛衣乎さん

はじめまして、こんにちは。

わざわざいらしてくださって、ありがとうございます。

また、百世さんご自身のお話も、説得力があります。

たしかに日本の子どもたちは相対的には恵まれているのでしょうが、もっともっと、良い環境を整えたいですよね。

百世さんのブログでご紹介を期待しています。
Posted by あだなお。 at 2007年04月16日 00:06
こんばんは、お久しぶりです、sanouaです。昔の記事へのコメントですみません。

やっと観ることができたので、TBさせていただきました。記事にも書いたのですが、「ジョナサン」を私はすっと理解することができず、あだなおさんの記事を読んでなるほど!!と思いました。ありがとうございます。

あだなおさんの記事でこの映画を知り、観ることができて良かったと思います。これからもよろしくお願いします。
Posted by sanoua at 2007年07月15日 03:16
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