1日13時間以上働き、残業手当は時給わずか350円−−。「外国人研修・技能実習制度」を利用し、青森県三沢市の縫製会社で働いていた中国人女性3人が、過酷な労働と低賃金に耐えられず逃げ出した。構造不況の繊維業界で働く彼女たちは、今や「現代版女工哀史」とまで言われている。ここ数年、同様なトラブルが全国各地で相次いでいる。出典:「外国人研修:過酷な労働に耐えきれず逃走 中国人女性」 (毎日新聞、2007年 05月13日)
350円というのはもちろん最低賃金をはるかに下回っています。13時間以上の労働というのも常軌を逸しています。そもそも、この「外国人研修・技能実習制度」は就労ではなく、研修なので、1日8時間以上の労働は認められていません。残業イコール違法なのです。
しかしこうした例は、この記事で紹介された工場に限ったことではありません。
全国47都道府県の労働局が05年、「外国人研修・技能実習制度」で来日した外国人労働者が働く866事業所を監督指導したところ、その8割にあたる694事業所で、長時間労働や基準外賃金の未払いなどの違反があったことが、毎日新聞の調査で分かった。開発途上国の人材育成を図る目的で政府が推進してきたこの制度を利用して来日している外国人は現在約16万人。研修、実習を名目にしながら、「格安の労働者」扱いをされている実態が浮かんだ。出典:「外国人研修:8割の企業で、長時間労働や基準外賃金未払い 」(毎日新聞 、2007年05月13日)
研修生だちは一体どんな約束で日本にやって来たのか。少なくとも、現実はその夢に遠く及ばぬものであったのでしょう。彼女たちのことは気の毒に、また申し訳なく思いますし、いくつも違反を重ねる工場経営者の責任は重いと思います。
しかしその一方、単純にこうした工場経営者を責めればいいとも思えないのです。問題の工場の社長はこう本音を漏らしています。
74年、三沢市内の実家近くに小さな工場を構えた。80年代後半は売り上げが伸びたが、90年代に入り、中国などアジア諸国との低価格競争で、経営が行き詰まった。「中国の工賃が安いので、日本の工賃も下げざるを得ない。県の最低賃金額が上がれば、家族の給料はほとんどなくなる」。(中略)「切羽詰まって研修生を受け入れた。最低賃金以上を払うのなら、そもそも彼女たちを雇わなかった」
出典:「外国人研修:過酷な労働に耐えきれず逃走 中国人女性」 (毎日新聞、2007年 05月13
もはや、最低賃金で労働者を雇っても、経営が成り立たない状況にまで追い込まれているのです。もちろんこの社長はやってはいけないことをしてしまったのですが、もし自分がその社長の立場だったら、なんとか会社を存続させようと、同じようなことをしていたかもしれません。いや、自分だったらそんなことは絶対にしない、と言い切れる自信はありません。時代が変わったと、簡単に言い切れる問題ではありません。
大企業であれば、状況は変わります。国内工場での採算が厳しくなれば、海外に工場をシフトすることもできるでしょう。そして新天地で、もっと高収益を上げることができるかもしれません。日本よりはるかに安い賃金しか払わずとも、進出先の人々には歓迎され、もちろん法律に違反することもありません。
しかし、すべての中小企業が同じことをできるわけではありません。さらには、一番困るのは地元の普通の人たちです。工場は移動できても、働き手は移動できません。仕事のなくなった地元に、自分たちだけ取り残されてしまうのです。
なんでこのようなことになってしまったのでしょうか? もちろん一義的には経済のグローバル化と、それにともなくコスト競争の激化が原因でしょう。しかし、そうやってコストが下がった製品を、安い、安いと喜んで買ったのは誰でしょうか? 当の私たちが安い外国製品を好んで買い、さらに競争は激化する。そしてついには、日本で製造することは成り立たなくなってしまったのです。
つまり、それが自分で自分の首を絞める、職を奪うことにつながるとは想像もせずに、そのことを加速させてしまったのではないでしょうか。日本から逃げ出したのは、中国からの研修生だけでなく、自分たちの仕事も逃げ出していたのです。
だからと言って、途上国からの研修生を格安で働かせることが正当化できるとも思いません。日本国内で働くかぎり、日本国内の法律に従って、適正な賃金を支払う方向に改善されることでしょう。となれば、結局こうした労働集約的産業は日本では存続できないことになります。
あるいは、国際競争力を復活させるためには、日本の労働者の賃金を大幅に切り下げざるを得ないかもしれません。しかし、ただでさえ二極化が進み、ワーキングプアが増えている中で、そのとき何が起こるのか。想像するだに恐ろしいものがあります。
残念ながらこれがグローバリゼーションの行く末であり、既にその方向に向かってかなり加速度はついているように思います。方向修正をするためには、私たちは本当にどんな社会を望んでいるのか。そのためには、何が必要であるのか。真剣に考えて、発言し、行動する必要があります。
ここでもまた、私たちの投票(=何を買うか、どんな企業を支持するか)が、私たちの未来を左右しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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もう何度読んだことか分からないのですが、読むたびにヒントをもらえます。
そして、解決していくための戦略(ストラテジー)を思索します。
今日、自身のブログでも書いたのですが、
私たちが未来を能動的に作れるのです。
こんな素敵なミッションに出会えるなんて、こんな楽しいことはありません。
みんなも楽しい作業を一緒にしませんか。
『ラダック 懐かしい未来』読んでいない方には、お奨めします。
海外の困窮者には連帯できても自国民には妙に冷たいのがこれまでの日本のサヨク運動だったけど、これからは国内困窮者との連帯がテーマになってくるんじゃないだろうか。
そうですね、未来は私たちの手中にあります。ただし、行き当たりばったりでは、トンでもないところに行き着いてしまう可能性大です。
どんな社会を目指したいのか。まずそのことを考えて、常にそれを念頭に、着実に進んで行きたいですね。
>エースケさん
実は、他の国はみんな自国の産業保護を国全体でやっていますよね。WTO体制になると、国家も自分の国を守れない局面すら多くなってきています。ご指摘の通り、あとは国内で連携して、消費者が日本製品を選択するというようなことを進められるかどうかが鍵になりそうですね。これは、日本企業だって歓迎でしょうしね(笑)
肝に銘じて、慎重にかつ大胆に動きたいと思います。