2007年05月25日

誰が得をしているのか?

 最近立て続けに、似たような質問をなさる方を見かけました。一人の方は「エビの養殖でマングローブが破壊されるとは言っても、エビの養殖という新しい産業ができて、地元の人も潤うのではないか?」とおっしゃり、もう一人の方は「バイオ燃料に使われるために穀物の値段が上がれば、利益が大きくなり、生産地の人たちも潤うようになるのではないか?」と訊ねられていました。

 たしかにそういう面がまったくないとは言えません。しかし、それを理由にエビの養殖を進めたり、穀物をバイオ燃料の原料に転換することはとても危険だと思います。

 まずエビの養殖の場合ですが、マングローブを切り拓いて養殖池を作っても、そこで持続的にエビの養殖ができるわけではありません。多くの場合は5〜10年の間に、池は餌や抗生物質で汚染され、それ以上同じ場所で養殖を続けることはできなくなってしまいます。残るのは疲弊した不毛の土地だけです。下手をしたら、餌や薬品を買った際の借金だって残されるかもしれません。

 仲買人は仕入れ先を別の村に変えればいいだけです。仕事を続けていくことはできます。しかし、今まで何百年、何千年と暮らしてきた土地が、わずか数年から十年の間に使い道のない土地になってしまったとき、村人たちはどうやって生活を続けていけばいいのでしょうか。

 穀物の価格が上昇した場合はどうでしょうか。もしその土地が農民のもので、収穫した穀物を市場価格で自由に売ることができれば、穀物を作る人々も価格上昇の恩恵を受けることができるかもしれません。しかし、小作農にとってはもちろん、自分で自由に市場に売ることができない農民の場合※、たとえ市場価格が上がっても、仲買人や商社には、買い叩かれることも珍しくありません。そしてもちろん、穀物を輸出できる国より、輸入しなければいけない国の方がずっと多いのです。輸入しなければならない国では、価格上昇によって困る人の数の方が多いでしょう。
※市場への輸送手段がない、特定の工場に売るしかないなど、市場で自由に作物を売ることができない場合は多くあります。

 つまりポイントは、少し時間が経った後でも、情勢が変化したときでも、そこでコツコツ働く人たちが本当に継続して利益を得ることができるかです。利益が得られるのはごく短期間だけであったり、ごく一部の立場の人だけである限りは、開発や用途の転換は、危険な変化であると言わざるを得ません。

 熱帯林の伐採も同様で、「地元の人はそれでしか収入を得られないのだから、伐採を禁止するのは地元の人の生活を困窮させることだ」という主張もあります。しかし実際には、伐採で利益を得ているのは他所から来た伐採業者(企業)だけで、本当にもともとそこに暮らしていた人たちは伐採で大した利益をえていないし、持続可能な形で活用してきた森林資源を自由に使うことができなくなりむしろ困っている場合も多いのです。

 そういうケースが多いからこそ、生産者の手にきちんと利益が渡る「フェアトレード」が必要になるのです。もし生産地の人たちがきちんと利益を得ているのであれば、そもそもフェアトレードなんて必要ないのではないでしょうか。

 だから「地元の人にも利益があるはず」という言葉には十分に注意をする必要があります。「地元の人」とは、本当にもともとそこに住んできた人たちのことなのか? 利益は継続的に得られるのか? それらが確かでない限りは、とても持続可能な開発とは言えないでしょう。

 結局誰が得をしているのか? その状態は持続的であるのか? これらのことを考えるだけでも、おかしな開発や議論を防ぐことができるはずです。

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posted by あだなお。 at 06:00| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あだなお。さん

私がエビの養殖を持続可能でないことを知ったのは…
シンポジウムであだなお。さんが某経済学の教授にパネルディスカッションにて説明されていた時の事です。
それまでそんな背景を気にせず夕飯用の安いエビを調達することに一生懸命だった私には、本当に衝撃的な事実であったと記憶しています。

それ以来スーパーの海外ものの安いエビには手を出せなくなりました(>_<)

こういった事は地域のオバチャンやママ仲間に言っても真に受けてくれる方はそうはいないのですが(逆に「変わったことに拘りがあるのねぇ」と流されてしまう)、
これは良い情報に触れる、また勉強する機会に恵まれていないため…
もちろんインターネットにもご縁のない方が多いので、折りに触れ、とても分かりやすいサステナ・ラボの紙印刷攻撃を試みたいと考えています(^-^)b
Posted by あいか。。 at 2007年05月25日 13:55
あいか。。さん

いつも読んでくださって、応援してくださって、ありがとうございます!

実は僕は逆に不思議なのですが、エビの養殖池の話って随分前から問題になっていたようにも思います。「エビと日本人」(村井 吉敬 (著) 、岩波新書)という名著もありますしね。

でも、その某教授であったり、企業の環境関連の方であったり、某大新聞の論説委員であったり、意外な方がそうした途上国の現実を知らないということは、やはりまだまだ日本ではごく一部の人にしか伝わっていないということなのでしょうね。

僕もいろいろな話題提供に努めますので(あまりこういうネタがあるのもどうかとは思いますが...(^^;))、あいか。。さんもママ仲間への普及をお願いします。

本当はこういうネタを女性誌に連載で書けたらなぁと思っているのですが、業界の知り合いに「商業誌ではムリ!」と言下に却下されました(^^;)
Posted by あだなお。 at 2007年05月30日 00:08
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