2007年08月26日

何が特攻を続けさせたのか?

 久しぶりに映画を観ました。本当は昨日から公開のマイケル・ムーアの新作「Sicko(シッコ)」も観たかったのですが、今日はしばらく前から予定していた「TOKKO-特攻-」へ。

 日系アメリカ人の監督のリサ・モリモトが製作した、日米双方の特攻から生き残った兵士たちのインタビューをまとめたドキュメンタリー映画です。

 「カミカゼ」に攻撃され、乗り組んでいた船を撃沈され、なんとか生き延びた米兵たち。彼らのカミカゼに対する恐怖も生々しかったのですが、やはり僕にとって印象的だったのは「生きたかったよ、死にたくはなかったよ」と告白する特攻から生き残った元少年兵たちです。

 戦争が終わったから「死にたくなかったよ」と言えるようになったわけではないのです。戦争が終わってからも、ずっとそのことを心の奥底にしまい込み、自分だけが生き残ったことに負い目を感じ、自分が特攻隊であったことを家族に話すこともせず、そうやって長い間ずっとそのあまりに重い経験を一人で背負ってきた元特攻隊の方々。それが今になって、モリモト監督に促されて、やっと正直に「死にたくなかったよ」と言えたのです。

 「言いたいことを自由に言えない。」「おかしいと思っても、そうするしかなかった。」 誰もが同じことを繰り返していました。「もう負けることはわかっていた。」「(特攻に)行きたくなかった。」それでも、誰一人、それを人前では言えない。そんな異常な状態が、戦争というものなのだとつくづく思いました。

 インタビューの中である方が、「もう少し早く終わっていれば。せめてあと半年早く終わっていれば」と悔しそうに言っている言葉も、深く胸をつきました。同じ敗戦だったにしても、半年早く終わっていれば、原爆投下はもちろん、東京大空襲も、沖縄戦もなかったのです。特攻隊の犠牲者もごく少数で済んだことでしょう。しかし、その半年間、誰も「もう止めよう」とは言えなかったのです。

 海軍で組織的な特攻作戦を発令したとされる大西中将自身も、それが無茶苦茶な作戦だとわかっていたのだという話にも驚きました。こんな無茶苦茶なことをすれば、「もうよかろう。それならば、戦争はもうやめよう」と天皇が決断することを期待しての作戦だったというのです。残念ながら、その真意は伝わりませんでしたが...

 生き残った方々のそんな声を聞いているうちに、これはリーダーの問題だと感じました。最大のリーダーはもちろん天皇ですが、それだけでなくあらゆる階層のリーダーが、少しでも自分の立場の影響力を考え、これはおかしい、これではダメだと事実を受けとめる、勇気を出して発言する、それができなかったことが最大の悲劇だったのではないかと思いました。

 それが言えない異常な状態であったということはわかります。しかしだからこそ、リーダーは言わなければいけなかったのです。部下は発言できないのですから、自分が勇気をもって言うしかないのです。それができるかどうかが、本当のリーダーの資質でしょう。自分にしか言えないことを自覚していないとしたら、その時点でリーダーとしては失格なのではないでしょうか。

 そしてこれは、何も戦争中に限ったことではないはずです。今の社会であっても、会社などさまざまな組織においても、言いにくいことを言い、困難な決断をすることこそ、リーダーの重要な役割のはずです。退却の決断のできないリーダーが、組織に悲劇をもたらすのです。

 しかし平和な今の世の中でも、それが出来ていないケースは多いように思えます。退却の決断はリーダーにしか出来ないという教訓を、私たちは学べなかったのでしょうか。

 「そんなことは今だから言えるんだよ。」「その立場にいたら、とても言えないよ。」「そんなことはわかっているって....」いろいろなご意見があるのはわかります。しかし、そういうあたり前のことを言わないうち、それが言いにくくなる、言えない雰囲気になる。そうやっているうちに、気が付くといつか来た道を歩いていないとも限りません。

 自分が感じるとおりに発言する。思ったとおりに行動する。その当り前のことを一つひとつすることが、当り前でない状況を作り出さないことにつながるのです。ましてや少しでも影響力のある立場のある方であれば、ちょっと余計かなと思われるぐらいに、一つひとつ発言し、行動することが必要なのです。

 こんなことをエラソウに書くのは、僕だってちょっと(いや、かなり)気恥ずかしいのです。それでも、感じたことを素直に書くことが、なんでも自由に話せて好きなことができる社会を作るモトだと信じて、書いてみました。

《参考リンク》
特別攻撃隊(Wikipedia)
沖縄戦(Wikipedia)
東京大空襲(Wikipedia)

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《追記 07/08/27》
 同じく特攻隊からの生還者の証言にスポットをあてた素晴らしい作品に「月光の夏」があります。以下、ご参照ください。

■「月光の夏」(劇団東演)
■「ピアノソナタ「月光」による朗読劇 月光の夏」(電子書籍による台本)
■「ピアノソナタ「月光」による朗読劇「月光の夏」を上演するまで」(行徳のマグマ大使さんのブログ)
■「月光の夏に思う」(サスラボ)
■「「月光の夏」」(サスラボ)

また、戦争以外の問題解決方法をさぐる平和省設立の動きにもご注目ください。
■「平和省を創ろう」(サスラボ)


posted by あだなお。 at 23:59| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 平和 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>>「言いたいことを自由に言えない。」「おかしいと思っても、そうするしかなかった。」 
こういうの状況は、戦争だけじゃなく、どんな社会でも問題になるのだなと思います。
昨今の賞味期限や原材料の表示偽装の問題然り、原発などでの事故隠し然り・・・
Posted by ube at 2007年08月30日 01:53
ubeさん

こんにちは。コメントありがとうございました。

そうですよね、まさにそれが僕が言いたかったことです。
そしてそういう状態を打破することが、過去の悲劇から教訓を学ぶということだと思いませんか?
Posted by あだなお。 at 2007年08月30日 23:17
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