2007年12月09日

本気な人

 最近は普通の雑誌の記事などの中にも社会起業家(ソーシャル・アトレプレナー)とか、フェアトレードとか、そういった話題をよく見かけます。特に若い人々がそういう仕事に興味を持ち、実際に取り組んでくれることは本当に素晴らしいことです。心から応援したいと思います。

 その一方で、実際にそれをやり遂げるのはとても大変だし、またそのやり方が危なっかしくてみていられない...という場合も多くあります。実際、成功する人はホンの一握りですしね。

 そんな中で、僕がこれまで見聞きした中でも最高に危なっかしく、でも心の底から応援したくなった、いや、応援するなんて偉そうなことなどとても言えません。本当に頭が下がる方を、ご紹介しましょう。

 バングラディッシュでジュート(黄麻)を使ったバッグを作り、それを日本で売るというビジネスを確立したマザーハウスの山口絵理子さんです。「裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記」という自著も売れていますし、マスコミでも何度も取り上げられているので、ご存じの方も多いかもしれません。

 実は僕も最初から注目していたわけではなくて、知人が書いたレビューを読んで、それなら読んでみるかと思ったのがきっかけでした。しかし、彼女の自伝的なこの本を読むだけで、そのスゴサ、普通でなさが十分に伝わってきました。

 23歳でビジネスを立ち上げてわずか数年で成功なんて聞くと、よっぽど運がいいのか、それともバックに強力なサポーターでもついているのかと思ってしまいます。しかし、彼女の場合にはその両方とも当てはまりません。ただただ、ひたすら体育会系的な頑張りで、地べたを這うようにして、愚直に突き進んだだけなのです(実際、もすごい体育会系なのですが...(^^;))。

 本当は「だけ」なんてとても言うのがはばかられるほどに強烈な頑張りなのですが、そのやり方は戦略的どころか、ほとんど何も考えずに直情径行そのものです。それだけに経験の密度は大変なもので、普通だったら10年かかっても出来たかどうかわからないようなことを、わずか数年の間で成し遂げてしまたのです。

 ですから「わすか数年で成功」ではなくて、本当は「十分な苦労と経験を重ねて、幾多の失敗を乗り越えた上での成功」なのです。

 そんな中、僕が一番いいなと感じたのは、今までフェアトレードの名で売られていたものは本当にお客さんが欲しいと思っていた商品なのかという疑問です。それが故に彼女は、自分が単純に「かわいい! 欲しい!」と心から思えるものを、バングラディッシュで作り、発信することに挑戦したのです。

 生産者は、うつむきながらミシンを縫うのをやめ、「誇りとプライド」を持ってモノ作りにあたる。そうしてできた商品を、先進国のお客様は使い、満足する。それはNGOや生産者を支援するという目的ではなく、企業としてのビジネスとして行うべきで、デザイン、品質管理、すべてを徹底する。
出典:「裸でも生きる」p.120「フェアトレードはフェアーじゃない」より

 それが「途上国発のブランドを創る」という夢のような、しかし見事に実現したコンセプトに昇華していきます。ですから「裸でも生きる」は、彼女の壮絶な体験記として読むのだけではもったいないのです。たしかにそれはものすごい経験と行動力で、涙なしではとても読めないほどです。しかしそれでは、単なる武勇伝で終わってしまいます。

 そうではなくて、自分で納得できるところまでトコトン突き詰めてみたら「フェアトレードではなくて、途上国発のブランドを創るしかないんだ」と彼女が気づくまでのストーリーを、読者の私たちが追体験することによって、私たち自身もいま本当に求められているビジネスのあり方を心の底から理解することができるのです。

 誇りとプライドを持ってできる仕事。途上国に限らず、これこそすべての仕事が満たしているべき条件だと思います。

 あまりネタバレしないようにと思ったら抽象的な話になってしまいましたが、ぜひとも皆さんにご一読いただきたい本です。このエントリーを読んだぐらいでは、僕がお伝えしたかったことの100分の1も伝わりません。ぜひ彼女の書いた文章を直接読んで、その体験と思考を追体験していただきたいのです。

 ですからこの本を読んで以来、サスラボで必ず紹介しなくてはと思っていました。しかし、こんなスゴイ人のことを一体なんと紹介したらいいのか、なかなか適切な言葉が見つかりませんでした。

 そして、いろいろと考えた末にたどりついたのはこの言葉です。「いつも本気な人」 その本気さが周りの人に伝わり、不可能を可能にしていったのだと思います。そして同時に、自分はどこまで本気になれているんだろうかと、とても恥ずかし思いもしてきます。

 この本の最後で紹介されている、山口さんがバングラディッシュで感じたというメッセージは、僕自身に問いかけられている気がしてなりません。

 「君はなぜそんなに幸せな環境にいるのに、やりたいことをやらないんだ?

長文におつきあいいただき、ありがとうございます。
サスラボもけっこう本気です(笑) 応援よろしく!
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posted by あだなお。 at 22:35| 東京 ☁| Comment(5) | TrackBack(0) | 本・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とても面白そうな方ですね。年齢が近いので色々学びたいです。早速買って親に他の荷物と一緒に送ってもらいます!
また、以前の記事を読みましたが、エコプロダクツ2007も面白そうですね。日本にいたら絶対行ってたのに!サンフランシスコでは先月、グリーンフェスティバルという祭典で本当にたくさんのエコ企業の方がブースを開いていました。すっごく面白かったです!
いつも勉強になる記事ありがとうございます!
Posted by lana at 2007年12月10日 10:55
あだなお。さん

コミュニティ「サステナ・ラボmixi支部」の立ち上げに際し、ご理解をしてくださり誠にありがとうございました!

http://mixi.jp/view_community.pl?id=2867987

私たちは、本気のフツーの市民・生活者・消費者として自分たちが持つ力や影響力をきちんと自覚し、お互いに刺激しあって、日々の実践行動に生かして行くことがとても重要であると思います。

よって上記コミュニティが、いろいろな方との情報&意見交換が気軽におこなえる場所となればと考えています。
皆さまのご参加を心よりお待ちしております!!
Posted by プチeco at 2007年12月10日 14:33
>lanaさん

こんにちは、コメントありがとうございます。
そして、山口さんに興味を持ってくださって、ありがとうございます。本当にオススメですよ。ぜひ読んでみてください。

lanaさんのブログも拝見しますね。

>プチecoさん

こんにちは。

サステナ・ラボmixi支部の立ち上げ、ありがとうございます!

「本気のフツーの市民」の活躍に期待します。僕もさっそくコミュに登録させてもらいました。

mixiでもよろしくお願いしますね。
Posted by あだなお。 at 2007年12月11日 00:37
あだなおセンセ、おひさしぶりです!

産業/ユニクロ バングラデシュ企業と合弁 コスト上昇、脱中国じわり
FujiSankei Business i./Bloomberg GLOBAL FINANCE
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200811290026a.nwc

最近この記事を読み、商売絡みでバングラデシュに興味を持ったのでNET上をうろうろしていたら、なんとセンセのBLOGに行き当たりました(微笑) この回は特に気合いが入っていて読み応えがありました!!!

やはりこの不況のなかビジネスで成功しているひとは目の付けどころが違う感じがします。

Buenafe2005
Posted by Buenafe2005 at 2008年12月01日 17:05
buenafe2005さん

こんにちは、お久しぶりです。

そうですか、ユニクロはバングラディッシュに出資ですか... ちょっと複雑な気もしますね。いい方向に影響があるといいのですが。

マザーハウスはさらに大発展していますが、なんとこの記事を書いたのはもう1年前なのですね。ちょっとビックリです。

古い記事を思い出させてくれて、ありがとうございました(笑)
Posted by あだなお。 at 2008年12月06日 23:42
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