2007年12月16日

行動で示そう

 COP13バリ会議は、バリ・ロードマップを採択して閉会しました。

 削減の数値目標は今後議論するが、途上国にも削減努力を求め、先進国を対象にした京都議定書より踏み込んだ。日米中など主要排出国がすべて参加する枠組みができたことで、地球規模の温暖化対策は新たな段階に入った。
出典:「温暖化ガス、09年目標に枠組み・バリ会議閉幕」(NIKKEI NET、2007年12月15日) 

 たしかに途上国も含めた枠組みが出来、今後のスケジュールがある程度明確になったことは進歩と言えば進歩ですが.... 

 これに関して今日16日の日経はなかなか興味深いものでした。「バリ合意を起点に低炭素社会を築け」という社説は、今回低下した日本の発言力を今後どう復活させるか。そのためには排出権取引を導入する必要があるし、日本の産業界の主張するセクトラルアプローチも言い訳にならないようにと釘を差しています。わりとよくまとまっていると思いました。

 また、一面の「環境力」では、日本の今回の不甲斐ない対応をいくつも指摘しています。
 パリ会議で日本の対応は後手に回った。合意案に一時、想定外の削減目標が示され、あわてて交渉姿勢の再検討を迫られた。鴨下一郎環境相はドイツや英国の閣僚との会談を直前でキャンセルされ会場内を右往左往。「調整役に徹した」(同相)というが、他国の顔色をうかがいながら交渉に望む印象が残った。
 (中略)
 すべての締約国が参加できる枠組みを優先するという立場を貫いたが、真剣勝負だった交渉の流れを見誤った感は否めない。
 バリ会議の現場からは、やはりそのように見えたということでしょう。日経が一面でここまで踏み込まざるをえないぐらい、ひどい状況だったということではないでしょうか。

 ところが一転して、アレレと思ってしまうのが、3面です。まず見出しに「数値目標 再浮上は必至」とありますが、それはそうでしょう。数値目標なしにどうやって削減を進めるのでしょうか..(^^;)

 そんなことは置いておいても、「今回の合意は結果的に次期枠組みへのすべての主要排出国の参加を最優先にしていた日本政府の主張どおりになった形で、『評価できる結果』(外務相幹部)と受け止める声が多い」のだそうです(^^;)

 日本国内の受け止めは、相変わらずノー天気なのです。議論が膠着して、結果的に腰の引けた日本の「正論」以上には壁を切り崩せなかったというのが真相ではないでしょうか。同じ記事はその後、こう続きます。

 ただ日本政府が当初議長案にあった数値目標の削除を主張したことは、世界に「日本は温暖化ガス排出削減に消極的」との印象を与えた恐れもある。交渉に参加したある政府関係者は「日米が前向きな議論を壊そうとしているとの非難の視線を感じた」と明かす。

 「恐れもある」ではなく、実際そう捉えられているでしょうし、また「非難の視線」を感じたのは、まさにそういう状況だったのだと思います。

 その後さらに「国内産業界 米中参加の合意 評価」という記事が続き、新日鉄社長と、電気事業連合会会長(というか東電社長ですね)の歓迎コメントを掲載しています。なんだか、政府と一部企業の御用新聞のようです。一面や社説で踏み込んだ分、ここで配慮をしてバランスを取ったということでしょうか(^^;)。

 COP13を通じて、日本国内と海外の認識のギャップが国内にきちんと伝わったのか、まだ心配な気はします。しかし、それを感じる人は少しは増えたものと思います。

 来年は7月の洞爺湖サミットだけでなく、G8開発大臣会合(東京)、G8環境大臣会合(神戸)、G8エネルギー大臣会合(青森)と重要な会議が続きます。今のままの認識と行動では、かなり恥ずかしいことになります。これらの会議で日本がリーダーシップを発揮するには、相当に肝を据えて取り組む必要があるのです。その覚悟が、日本の政治家と産業界にあるかどうかです。

 日本はセクター・アプローチを強く主張し、ロードマップにもそれが例として取り上げられました。これが削減義務逃れの方便ではないことを、きっちり行動で示す必要があるのではないでしょうか。行動が伴わずに口先だけの方便ということになれば、それこそ日本は国際社会から完全に見放されてしまいます。





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posted by あだなお。 at 22:36| 東京 晴れ| Comment(2) | TrackBack(0) | 気候変動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今回の記事も、日本の置かれている立場とか、
国内での認識と、現場での認識の違いとか、
なるほど! と思うことばかりです。

で、細かいところでの違和感だけならべておきます。というか、現場を知らないものからみた解釈の違いと申しますか・・・。

結局、当初、日本政府が主張していたような結論になったというところは、やはり、それなりに客観的かつ具体的に落としどころが見えていたという点では、ちゃんと評価すべきだと思います。
ただ、問題なのは、その落としどころに向けて議論するという、日本的な会議というか根回しの進め方にあるのではないですか?
最初からふっかけて、あわよくばという議論の進め方をする国々に対して、そういうやり方が通用するのか? というところを考えないといけないような気がします。

あと、ちょっと気になったのは、日経の引用では他国の評価を気にしすぎる部分をとりあげて、文章の最後の部分では、逆にもっと世界の目を気にして動くべきだという。これは多分、両立することだと思うのですが、どの部分でイニシアティブを打ち出して、どの部分で調整役に徹するか、ということを整理する必要があると思います。

あとまあ、なぜか、あだなおさんは、中国やインドなどに対して、甘いような気がしますが?気のせいでしょうか? それから、EUに対しても、彼らが100%環境に対する危機感から主張を行っているのか、それともそれ以外の政治的、経済的利益やイニシアティブの獲得という頭があって、そういう主張を行っているのか?そのあたりも、冷徹に見ていくことが必要だと思います。

かえって、そのあたりを明らかにする方が、日本の産業界に対してはインパクトがあるかもしれません。個人的には、EUはどうも変? と思っています。もうロシアが怒り始めていますし・・・ただ、動機の不純さも分かったうえでなら、環境保全や将来世代のためにイニシアティブをとってくれることは歓迎なのですが。

話は変わるような、でも以上の違和感の原因のようでもありますが、排出権ビジネスなども含めて、一方で、環境破壊の根本的元凶とも言える、ビジネスのフォーマットで、果たして環境問題を解決できるのか? というところに一抹の不安を覚えます。自分の靴の紐を引っ張って、自分の体を持ち上げようとしているような、そんな感覚がします。環境ビジネスによって、環境問題を克服できるということについて、何らかの理論モデル、あるいは論理的な証明みたいなものは、すでに存在しているのでしょうか? ちょっと勉強して、要らぬ心配を取り除いておきたくなりました。

毎回毎回、なんか不躾な書き込みばかりで申し訳ありません。率直な感想ということで、お許しいただければ幸いです。
Posted by ろべると at 2007年12月18日 15:36
ろべるとさん

いつもコメントありがとうございます。お返事がとても遅くなってしまいゴメンナサイ。

僕のスタンスは12/24の「聞いていないぞ」により明確に書きましたが、けっして日本が客観的に落とし所が見えていてそう主張したというわけではないのではないでしょうか。根回しも出来ていたようには思えませんし...

他国からの評価についてもそうです。他国がどう出て来るを考えて先手を打つ必要があるということで、言ってから「場違いだった」と反省しても遅いのです。

中国やインドについて言えば、今の段階で言ったところでまったく説得力を持たないでしょう。まずは先進国が範を見せ、しかる後にという順番でなければとても議論になりません。ただちょっと頭が痛いのは中国で、一人あたりの排出量は既に日本の1/3に達しています。このまま放って置くと、大変なことになるのは目に見えています。そのためにも、なるべく早く先進国がより積極的な削減に着手する必要がありそうです。

各国の主張の背景について言えば、当然環境に対する意識だけではなく、様々な利害関係が絡んでいるはずです。しかし、同時に環境制約から導きだされる目標も既に明確になっており、それを根拠にしている限りは反論は難しいでしょう。この点、EUなどは非常にうまく立ち回っているとは思います。ただ、彼ら自身にしろ痛みを伴う改革を提案しているわけですから、それは認める必要があるでしょう。これはろべるとさんがおっしゃる通りです。

環境問題を経済原理で解決できるのかはというのは、たしかに大問題です。結論から言えば、経済原理だけでは解決できないから、気候変動枠組み条約があるわけです。しかし、枠組みは経済原理以外のものから合理的に設定し、その枠組みの中で経済原理によって解決を図るというやり方は、僕は現実的だと思います。問題は枠組みの議論の中に、経済やお互いの利害の話を持ち込まないということでしょう。

ちなみに現在の排出権取引はもともとアメリカでSO2の規制のために使われ、非常にうまく機能することがわかっています。しかしそのときと今で大きく状況が違うのは、SO2の場合には、最初にきちんとキャップがあったということです。今はキャップなしに排出権取引だけしているところがかなり困った問題だと思います。

ということで、ざっとですがお答えしました。残念ながらいつもお返事できるとは限らないので、どうかその点を予めお許しください。
Posted by あだなお。 at 2007年12月26日 00:41
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