2008年02月03日

本当に円高?

 テレビや新聞では「円高」という言葉をよく見かけます。たしかにサブプライム問題の影響などを受け、ドルに比べると昨年の夏ごろからは大幅に円高になっています。昨年7月には1ドル120円代だったのが、今は106円前後です。

 では、他の通貨に比べるとどうでしょうか? 昨夏ぐらいに比べれば、ユーロでも、ポンドでも、多少円高にはなっていますが、もう少し長い期間で見ると、確実に円安が進んでいます。ユーロは2001年に90円台だったのが、今や160円前後です! ポンドも2003年には180円なんてときもあったのに今は210円前後です(昨夏の250円近くに比べるとずっと円高に戻ってはいますが...)

 この傾向は欧米の通貨だけでなく、アジア各国の通貨に対してもそうです。中国元、韓国ウォン、タイバーツなど、いずれも数年前に比べると、明らかに円安です。

 つまり、今の「円高」というのはあくまで米ドルに対してで(もちろん他にも多少の例外はありますが)、そのドルが急激に下がっているために、円は相対的に浮上したのに過ぎないということです。

 このことは、実効為替レート、すなわち「日本と当該相手国・地域間の貿易ウエイトで加重幾何平均したうえで、基準時点を決めて指数化」した名目実効為替レートを見るとよくわかります。1999年あるいは、2003年ぐらいから基本的に円安傾向が続いています。
effective_nominal.gif
出典:「『実効為替レート(名目・実質)』の解説」(日本銀行)

 もう一つ注意しなければならないのは、各国の物価です。日本はこの10年ほどはデフレ傾向にありましたので、お金の価値が目減りしていません。むしろ若干増えているかもしれません。10年前の100円より、今の100円の方が使いでがありますよね?

 しかしこれは世界的には珍しいことで、他の国では一般にはお金の価値は少しずつ目減りしています。したがって、例えば10年前1ドルが100円で今も1ドル100円だとしても、実質的には円の力は弱くなっているということです。「こうした点を考慮に入れた物価調整後の実効為替レート」が実質実効為替レートで、この変化は以下の通りです。
effective_real.gif
出典:同上

 こちらは名目実効為替レートよりさらに明瞭な円安傾向が続いていることがわかります。つまり額面ではどうであれ、円は1994年のバブル終焉とともに急速に安くなり、一旦2000年頃に持ち直したものの、その後は継続的に確実に安くなっているのです。

 実際、海外に出かける度に両替レートは悪くなり、物価は上がっていて、なんだかなぁと思います。日経新聞が1月に「迷い沈みつつある国と通貨の物語」として「YEN漂流 縮む日本」という連載を行いましたが、実際、そのぐらい危機的だと思いますし、むしろこうした警告は遅過ぎたぐらいです。

 どうも日本では「円高は輸出に不利」ということで円高が嫌われがちですが、急激な円高はともかく、中長期的にはある程度の強さを維持することが安定につながるはずです。また、円高ですぐに競争力が落ちてしまうようなモノづくりしかしていないようであれば、それは単に価格で競争していることであり、とても長続きする戦略とは思えません。

 ドルだけ、つまりアメリカだけを見ていると「円高だ!」と思ってしまうかもしれませんが、実はこの何年もジリジリと円安が続いていることこそ危機であり、そのことを見逃してはいけません。

 自給率が高い国であれば多少の通貨安でもビクともしないのでしょうが、ましてや日本は食料も、エネルギーも、生活に必要な多くのものを海外に依存している国です。もしこれからも海外への依存度を高いままにしておくつもりであれば、強い通貨は必須です。そうではなく、もう少し通貨は安くなってもいいというのであれば、その影響を受けにくい経済と、自給自足の体制を急速に作らなければいけないでしょう。今のままでは、経済面からも持続不可能になりそうです。

 ちなみに目下のところ個人的には、間もなく出かけるイギリスへの出張で、まともな食事をするのに毎日一体いくらかかるんだろうというのが心配事です(^^;) イギリスに駐在したり、留学している方々に比べればごくごく短期間の悩みですが、それでも本人はけっこう真剣です(笑)。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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posted by あだなお。 at 23:35| 東京 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あだなおさんこんにちは
イギリスへ出張ですか?
先日、NHKのクローズアップ現代で、ロンドン市の2025年までに温室効果ガス排出60%削減を目指した低炭素都市の番組を見ました。
わたしの住む茨城県では2030年までに茨城県つくば市(もしくは研究学園都市)の温室効果ガス排出を50%削減する”つくば3Eフォーラム”が最近立ち上げられました。
地元なので、取組みに参加しようと取り組んでいますが、先進地域なのでロンドン市の取り組みと市民や国民の対応の状況など状況などまだまだ知りたいことが山積みです。
英国に行ったら、それらの情報もぜひアップして下さい。
Posted by 島田敏 at 2008年02月04日 10:22
 私の住む北海道では灯油高が家計を直撃しています。日本人が日本の安い金利を嫌い海外に流出し、それを原資として原油に投資する円キャリーがあるといいます。原油高の原因のひとつがが日本人の投資によるものだと・・・まさに因果応報ですね。
 資源に乏しいこの国は通貨が強いことが前提だというなんとも実体のない心細いお話です。
Posted by zen at 2008年02月04日 10:54
>島田さん

いつもコメントをありがとうございます。
今回は気候変動関係の仕事ではないのですが、何か気づいたことがあればご報告しますね。

>zenさん

こんにちは。この寒さと灯油高はこたえるでしょうね。
原油への投資が実際にどの程度の影響を与えているかは寡聞にして知りませんが、少なくとももう少し国内へ投資されれば、日本の景気回復や社会整備が進みそうなものですよね。過剰な金融緩和はどうかと思いますが、そのことに対する反省はあまりありませんね。
Posted by あだなお。 at 2008年02月08日 00:14
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