2008年02月25日

4つのシステム条件

 持続可能な社会とはどのような社会システムか? それを具体的に判断するための条件にナチュラルステップの「4つのシステム条件」があると昨日書きました。今日はその4つのシステム条件を具体的にご紹介しましょう。

システム条件1:
自然の中で地殻から堀り出した物質の濃度が増え続けない。
 地殻、つまり地球から物質を掘り起こすとき、その濃度がどんどんと増えるような速度で取り出してはいけないということです。

 自然のプロセスにおいても、地殻から物質が放出されることはあります。しかし、それはきわめてゆっくりとした速度ですし、そうして放出されたものもまた別のプロセスによって、ゆっくりと再び地殻の中に取り込まれていきます。その速度のバランスが取れているので、ある特定の物質の濃度が急激に増えることはありません。

 それでは、いま私たち人間がしていることはどうでしょうか? 地球が数億年かけて溜めてきた炭素(石油や石炭のことです)を、わずか数十年で大気に放出してしまっています。二酸化炭素そのものに強い毒性はないものの、濃度が高くなることで、気候変動という大変な問題を引き起こしてしまっています。

 化石燃料を使うにしても、その速度がきわめてゆっくりであれば、このような問題はありません。掘り出した化石燃料、それが排出する二酸化炭素の濃度が増えることが問題なのです。

システム条件2:
自然の中で人間社会の作り出した物質の濃度が増え続けない。
 条件1にちょっと似ていますが、今度は人間が作り出したもの、つまり化学物質などです。これらも自然が分解できる速度以上に放出してしまうと、自然の循環がおかしくなってしまいます。その物質が有害か無害かということ以上に、量と濃度が問題なのです。

 当然ながら、分解しやすいものであれば、比較的早い速度で放出されても、自然の中での濃度は増えにくいでしょう。しかし分解しにくいものは、あっという間に蓄積し、濃度が増えてしまいます。だからこそ、難分解性のものには注意が必要なのです。

システム条件3:
自然が物理的な方法で劣化しない。
 自然はモノやエネルギーを循環させ、再生産する力を持っています。しかしそれを物理的に破壊してしまえば、当然その能力も損なわれ、物質やエネルギーの循環は止まり、再生可能な資源も再生されなくなります。

 だからこそ、森や海岸を破壊したり、耕地を塩化させたり、侵食させてはならないのです。地面をアスファルトで固めることも、同様に自然の循環をストップさせてしまいます。

システム条件4:
人々が自からの基本的ニーズを満たそうとする行動を妨げる状況を作り出してはならない。
 システム条件1から3までは、自然や環境に関するものでした。自然が持っているモノやエネルギーを循環させる力を損なわないために、自然とどうつきあわなければならないかです。そしてこの4番目の条件は、人間社会に関わることです。

 私たちは生きていくために様々の資源を必要としています。モノだけではなく、精神的なつながりや、支えももちろん必要です。そうした基本的ニーズが満たされなければ、とても安心して生活をすることはできないでしょうし、またそうした個人の不安定さが社会全体の不安定さをもたらします。たとえ全体としては物質的には足りていたとしても、不安定な社会になってしまい、とてもそれは長続きできないでしょう。

 社会的な不安定さをなくし、持続可能であるためには、社会全体として必要な資源が存在しているだけでなく、一人ひとりがそれに自由にアクセスできる環境でなければいけないということです。

 もう一度まとめて書いてみましょう。

《4つのシステム条件》
持続可能な社会においては、
1. 自然の中で地殻から掘り出した物質の濃度が増え続けない。
2. 自然の中で人間社会が作り出した物質の濃度が増え続けない。
3. 自然が物理的な方法で劣化しない。
4. 人々が自からの基本的ニーズを満たそうとする行動を妨げる状況を作り出してはならない。
 この4つの条件を兼ね備えている社会システムがあったとすれば、それは持続可能なのです。逆にこの4つの条件のどれか一つでも欠けているとすれば、その社会システムはどこかでおかしくなってしまうでしょう。

 とてもよく出来た条件だと思いませんか? よくここまでコンパクトに、しかし必要なことを漏れなく揃えたと思います。

 それもそのはずです。この4つのシステム条件は、スウェーデンの国内外の科学者が議論をして、これならばと合意したものなのです。さまざまな分野の科学者を納得させることができた黄金律と言っていいでしょう。

 同時に、この4つの条件を満たすのは、なかなか難しいことであるのは確かです。特に今の私たちの社会をふり返ってみると、すべての条件に違反している(!)のが残念ながら現実です。

 しかし、悲観することはありません。これさえ満たせば持続可能になるという明確な条件が明らかになったのですから、それを達成することははるかに容易になったはずです。

 どこに行けばいいのかわからない、まったく手探りの状態では、なかなか進めないものです。こちらかと思って進んでみたら、間違いに気づくこともあるでしょう。

 しかし、私たちはもうどちらに進めばいいかはわかっているのです。たとえそれが険しい道だったとしても、行くべき方向がわかれば、迷うことはありません。そちらの方向に一歩進めば、ゴールは確実に近づきます。

 4つのシステム条件を使うと実際にどんなときに役立つかは、明日またご紹介したいと思います。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
4つのシステム条件をどう思いますか?
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posted by あだなお。 at 22:13| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(1) | 持続可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
時々、お邪魔させていただいております。

この記事の内容は、とても面白いと思ったのですが、
同時に、ちょっと違和感も感じました。
それがいったい何なのか? 自分なりに考えてみたの
ですが、おそらく、これは持続可能な社会ではなく、
持続可能な環境の4条件だからなのではないかと
思いました。

これに対して、というよりこれとの包摂関係で、
以下のような提言をされている方もいます。
(シェア・ジャパンのHPを参考にしています)

人類の存続のために必要なことの優先順位
1.すべての者への適切な食料の供給
2.すべての者のための適切な住居
3.普遍的権利としての健康管理と教育
4.世界の生態均衡

そして、その実現のためには、世界規模での
分かち合いが必要であるとのことです。

この提言をされている方というのが、
「世界大師マイトーレーヤと覚者方」であり、
また聖典で予言されていた救世主マイトレーヤが
すでに世界に戻っておられているとも言うので、
世間一般の常識からすると信じられない方も
多いと思いますし、それも無理はないと思います。
ただ、インスピレーションのソースがなんであれ、
もし「救世主」というのが存在するなら、
いま現在の危機的状況に出現するのは当り前だし、
またその主張も真っ当であると、
個人的には感じています。

で、おそらく、このマイトレーヤの提言というのは、
先の4条件のうちの、第四の条件に関わるものかと
思います。しかし、何らかの目標をたてるときに、
こうした具体的な形で表現するほうが、学者さんは
ともかくとして、一般の人たちには分かりやすいか
と思います。

さて、この4条件への違和感と申しましたが、
実はもう一つあります。それは、あくまでも所与の
知識、所与の技術から出発しているという点です。
それ故に、科学的であり、かつ地に足ついた
実現性のある議論になる面もあると思うのですが、
同時に、今はまだ存在しない、まったく新しい技術、
経済システム、社会制度の可能性も、考えてみる
必要があると思います。
そして、そのことによって、ラボとしての意味が
出てくるのではないかと思います。

私自身は、最近いつも、お金がなくなったら、
特に投機マネーというものが存在しなくなったら、
自分の生活はどう変わるだろう? ということを
考えています。
はっきり言って、想像がつきません。
お金が明らかに誤用され、過剰な価値や意味を付与
されていることは分かるのですが・・・

しかし、お金の機能が停止したら・・・
特に、コンピュータ上だけで転がされるお金が
禁止されたら・・・まあ、排出量取り引きもなくなり
そうですが・・・いったい世界はどうなるのか?
いや、お金の権限を縮小することによって、
人類の問題を解決していく道というのはないのか?

ここらへんで、私の頭もオーバーヒート。
なんか、質問なのか、感想なのか、批判なのか、
よく分からない文章になってしまいましたが、
何かの足しにならないかと思って、
書き込ませてもらいました。
Posted by robert at 2008年02月26日 22:04
robertさん

こんにちは。詳しいコメントをいただき、ありがとうございました。

さて、4つのシステム条件ですが、たしかに1〜3までは自然環境に関わることなのですが、4は人間社会のあり方に関するもので、全体としては「持続可能な社会」の4条件になっています。

4番目はちょっと抽象すぎるかもしれませんね、ご指摘のとおりです。

「基本的ニーズ」というと、マズローの欲求の5段階説を思い出される方もいるかもしれません。それを満たすような状況を考えていただいてもいいですし、ナチュラルステップの場合には、マックス・ニーフが唱える9つの基本的ニーズ(親愛・参加・創造性・自由・アイデンティティ・休息・安全・生計・理解)を使っています。

またあくまでも所与の知識、所与の技術から出発しているという点も、ご指摘の通りで、科学者が地道に考えたものです。しかし、これは何も未知のものを否定するということではないと思います。未知の何かに期待するのではなく、現実にあるもので解決しようということなのです。

4つのシステム条件が唯一絶対ということではないのですが、一つのモノサシとして、いろいろな場面で試してみると面白いと思います。

これからも、どうぞよろしくお願いしますね。

Posted by あだなお。 at 2008年02月28日 22:59
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