2008年04月28日

大乗仏教の地にて

 飛行機が大きく揺れると、窓からは真っ白な山々が見えました。その後は順調に高度を下げ、山の斜面スレスレのところを飛び、間もなく細い谷間のような地形の場所にある空港に着陸。ブータンの玄関、パロ空港です。

 ブータンの伝統的な建築様式にならった空港ビルの中に入ると、係の方々は皆、民族衣装をまとっています。これまでに訪れたどの国とも異なる、独特の雰囲気です。

 透き通るような水の流れる谷沿いの国道はつい最近2車線化したばかりで、いえ、正確に言うとまだ90%程度しか完成していないのですが、首都のティンプーまでは2時間弱の快適なドライブでした。

 車の数が多いのには少し驚きましたが、それ以外はいたって伝統的な生活や景色が残っているようです。(あ、ケータイも使っている人もいるし、ホテルからはインターネットもつながりました!)

 午後にティンプー市内を少し見学したのですが、お坊さんになるための学校も見せていただきました。まだ7,8歳程度の幼い男の子たちが、うす暗い簡素な教室に集まり、熱心にお経を読んでいます。こうやって一つひとつお経を覚え、一人前のお坊さんになるための訓練をするのだそうです。

 もちろんブータンのほとんどの子どもたちは、普通の小学校や中学校に通います。しかし子どもを学校にやれないほうど家が貧しかったり、親が亡くなってしまったり、身寄りがなかったり、主にそういう子どもたちがお坊さんになるための学校に通い、将来はお坊さんになるのだそうです。

 言ってみれば、この学校が孤児院のような役割を果たしているわけですね。子どもたちは仏の道を勉強し、家と住む場所、そして将来の仕事が約束されるのです。

 というのも、お坊さんになれば、その生活がすべて国が面倒を見てくれるということです。だから、この国では托鉢は禁止されています。そもそもする必要もないでしょう。王宮には数百人もの僧侶がいて、毎日ひたすら勉強を続けたり、お祈りをします。政教は分離しているそうなのですが、それでも僧侶は皆の幸せを祈り、そういう僧侶を、国が支えているのです。

 「儀式のときはともかく、普段は毎日何をお祈りするのですか? 国の安泰ですか?」 信心のない僕は思わずそんな質問をしてしまいましたが、案内してくれた方はこう教えてくれました。

 「何をお祈りしても、必ず皆が幸せになることをお祈りするのです。他人も幸せにならなければ、自分も幸せになれない。そのことを知っているので、自分だけが幸せになることを祈ったり、願ったりすることは、意味がないのです。お坊さんたちは皆、そのことをご存じです。」

 自分だけが幸せになることはあり得ず、他の人、他の生きものすべてが幸せになって初めて自分も幸せになれる。だから、まず他人の幸せを祈る。これが大乗仏教の教えです。そしてここは、その大乗仏教の地なのですね(*1)。こうしたことを含め、今日一日だけでも仏教が生活の中に生きていることを何度も感じました。もっと言えば、仏教を中心に社会が廻っているようにさえ思いました。

 お坊さんの学校の隣には、17世紀に建てられたという古刹があります。小高い丘の上にあるお寺は、真っ青な空の中にそびえ立っているようにも見えました。風が吹くたびになる鐘の音が、まるで天からのメッセージであるかのように聞こえました。

 「ここはたしかに天とつながっている。」 そう信じさせる空気が、ここには存在しています。この空気、この信仰心の厚さが、ブータンをブータンたらしめている秘密のような気がします。

(*1)ちなみにブータンと並んで大乗仏教が現存するもう一つの国は... 日本なのだそうです。信じられます?(^^;)

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
今日の記事はいかがでしたか?
banner_04.gif応援してくださる方は、Click me!
posted by あだなお。 at 23:59| 東京 晴れ| Comment(4) | TrackBack(0) | 心に響く言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ブータンからのレポート興味深く拝見しています。

早速質問なのですが、お坊さんになるための学校に女の子はいないのでしょうか?

もしいない場合には、女の子はどのような形でブータン社会で存在を認められているのかを知りたいと思いました。

たしか大乗仏教にも色々とあって・・・女人成仏をぜんぜん認めていないという宗派(怒!!)も多数存在していると聞きます。でも、それもれっきとした思想と文化なので...持続可能性から考えると、どーなんだろうかと思いつつも興味があるところです。

あとは、細かい質問になってしまうので・・・場所を変えてmixi支部でトピ立ててまとめてお伺いしようかな〜と思います。
Posted by プチeco at 2008年04月29日 18:14
プチecoさん

ご質問をありがとうございます!

女の子についても、やはりそうした境遇の子ども預かって尼僧にする尼寺があるそうです。ただ、数としては少ないみたいですね。

ブータンにおいて女性がどのような社会的地位にあるのかはちゃんと聞いてみないとわかりませんが、少なくとも教育に関しては、男女ともに非常に進学率が高く(なにせ学費はタダですから)、女性が教育の機会を奪われているということはなさそうに見えますよ。
Posted by あだなお。 at 2008年04月30日 00:51
日本ではやはり地味でしょうかね・・・。一応確か日本で一番大きな宗教だと思ったのですが。これを機会に、ぜひ日本のほうもチェックしてみてもらえるとうれしいです。持続可能性につながるコンセプトが多いと思います。

こんなのもあるんですよ。
http://eco.nikkei.co.jp/news/article.aspx?id=2007100901975n2
Posted by のり at 2008年05月03日 08:12
のりさん

こんにちは。カフェ・ド・シンランですか、おもしろい試みですね。

LOHASかどうかはともかく、宗教がいい意味で生活に根ざすことはいいことだと思います。特に仏教は持続可能性や生物多様性とも親和性が高そうですしね。その教えがきちんと現代に生かされるようになることには賛成です。

今度築地に行くときには、立ち寄ってみますね。教えてくださって、ありがとうございます。
Posted by あだなお。 at 2008年05月06日 22:51
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/95024028
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
Google