2009年04月20日

エコ偽装、今度は冷蔵庫

 昨年の再生紙問題の際に「エコ偽装」という言葉が使われましたが、またもや「エコ偽装」発覚。今度は冷蔵庫です。
 
省エネ大賞を受賞した日立の冷蔵庫で、エコ偽装です。「リサイクルの材料を使って二酸化炭素を削減」と表示しながら、実際にはリサイクル材を使っていないことがわかり、公正取引委員会は排除命令を出しました。
出典:「日立の冷蔵庫で「エコ偽装」、排除命令」(News i, 2009年4月20日)

 問題となったのは冷蔵庫でトップシェアを誇る、日立アプライアンス、日立製作所の100%子会社です。省エネ大賞も3年連続受賞、誰もが信用するブランドです。今や消費者は「エコ」や「CO2削減」を判断基準に購入しています。「断熱材にリサイクルの材料を使うことで、二酸化炭素の排出量を48%削減したとカタログなどで表示」しておきながら、「実際には一部の商品を除いてリサイクル材は使っておらず、削減した二酸化炭素の量も十数%」(同上)とは酷い話です。

 実は我が家でちょっと前に冷蔵庫を買い替えたときも、最後に迷ったのは日立にするか、P社にするかでした。カタログ上の消費電力はほぼ同じ。どちらにしても良かったのですが、知人がいるP社を選んで正解でした。日立のものを買っていたら、今ごろものすごく後悔していたでしょう。ちなみに問題になった9機種は、3月末までに約15万台販売、約300億円の売上があったそうです。

 エコを売り物にしているのですから、看板に偽りがあったらきちんと返品を受けつけるとか、そういう対応をしてくれるのでしょうか? 再生紙のエコ偽装の際、製紙会社や、その用紙を使用した紙製品は一斉に回収になりましたよね。今のところ不当表示についてお詫びを出しただけですが、今後どのように対応するのかウォッチが必要ですね。
《参国リンク》
■「景品表示法に基づく排除命令について」(日立アプライアンス株式会社、2009年4月20日)

 と思ったら、同じ日のニュースでは、「日立、公的資金の活用を検討」。事業不振で赤字なので、税金で資本増強なのだそうです... やれやれ。

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2009年01月03日

植えられたのは...

 サスラボのサイドバー、ちょっと下の方ですが少しずつ大きくなっている樹のイラストがあるのにお気付きでしょうか? ブログに投稿するたびに樹が大きくなり、ある程度の大きさになると実際に樹が植林されるというグリムス(gremz)という参加型(?)のブログパーツなのです。

gremz0103.jpg

 詳しい説明は以下のリンクをご覧いただきたいと思いますが、なかなかおもしろいアイディアで、既に26575ものブログが参加しているのだそうです。サスラボはいつから参加しているのか忘れてしまいましたが(^^;)、ほぼ毎日更新しているので、既に4本が大人の樹となりました。
■「グリムスとは?

 で、その4本分の苗は実際に植樹されるはずなのですが、最近植林が行われたとの報告がグリムス運営チームから届きました。こんなお知らせです。
あだなお。様

こんにちは、グリムス運営チームです!

2008年最後(第4回目)の植林が無事ブルキナファソで実施完了となりました。
今回の植林は、グリムスにとって初めての大型植林となりました。
12月末にNGO緑のサヘルさんにより、
西アフリカのブルキナファソの中央北部州バム県バディノゴ村、同コンディビト村にて
ミモザ、ユーカリの苗を3,000本植林しました。

これで2008年の実績としては、活動回数4回、計3,800本が植林されました。

植林報告レポートはこちらよりご覧いただけます。
http://www.gremz.com/report_4.php

 単に樹のイラストが画面の上で成長するだけでなく、実際にそれがこんな風に植樹されたということがわかると、なるほど面白いですよね。アフリカに自分の樹が植えられたような気になります。それにこちらはただブログを更新しているだけですから、それで植樹をしてもらえるというのは、なんだかちょっと得した気分です(笑)

 と、ここまでは良かったのですが... 植林レポートを読んでちょっとビックリしてしまいました。「お祭りが明けるのを待って、2村において、大勢の住民によってユーカリとミモザ・ピグラが植えられました。住民は、自分たちの生活のために木を植えます。「木を植えることは、将来の生活を守ること」なのです。」というのですが... え”ーっ、ユーカリもミモザ・ピグラも外来種じゃないですか!(;_;)

 ユーカリはご存じ、オーストラリア原産の早生樹です。諸説ありますが、まぁあえて外来種を植えることもない樹が、おっと、気がします。ミモザ・ピグラに至っては、外来種であるばかりではなく、IUCN(国際自然保護連合)の指定する世界の外来侵入種ワースト100にも入っている困ったチャンです。以下の環境省の要注意外来生物リストをみても、かなりタチが悪そうであることがわかります。
■「ミモザ・ピグラ(Mimosa pigra)に関する情報」(環境省)

 それにしてもなんでよりによってこの2種を植えてしまったのでしょうか? もちろん悪気はなかったのでしょうし、もしかしたら何かどうしてもという理由があったのかもしれません。だとしたらその理由は? あるいは管理体制は? 気になります。

 こちらとしても、特別なことをしなくても植林に協力できるならとこのブログパーツを使い始めたのですが、うーむ、ちょっと困ってしまいました。まずはグリムスさんに問い合わせをしていみようと思います。

 おそらく今後さらにこうした「善意の」植林は増えるでしょうし、それ自体はいいことでもあると思うのですが、不用意な植林は生物多様性に悪影響を与えてしまいますからね。かなり注意が必要です。植林をするときには、どのような配慮をすべきなのか。最低限のガイドラインが必要かもしれませんね。

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2008年08月22日

なぜケナフ?

 ケナフの何が問題なのかという質問をいただきましたので、今日はそのことについてちょっと書いてみたいと思います。

 今から10年ちょっとぐらい前からでしょうか、環境にやさしい植物としてケナフの栽培を推奨する方やグループが登場してきました。曰く、非木材資源であるケナフから紙を作れば森林資源の節約になるとか、ケナフはCO2の吸収速度が速いので地球温暖化の防止に役立つということなのですが...

 まず非木材紙であるケナフの使用によって、木質チップの使用量が減るのは確かです。しかし、ケナフを材料にして紙を作ったのでは、木から作る場合に比べて、おそらくかなり生産効率は悪いでしょう。つまり、材料に無駄が出たり、余計なエネルギーを使うということです。紙を作る原料を木からケナフに切り替えても、環境負荷はむしろ増えてしまうかもしれません。

 またケナフがCO2の吸収速度が速いかどうかですが、そもそも吸収速度は様々な環境条件によって大きく変化するので単純な比較はできないのですが、あえてエイヤッと比べれば...  ケナフが他の草本より特に速いわけではなさそうです。在来種のヨシなども同じか、もっと速いぐらいです。また、水草の中には、ケナフより吸収速度が速いものはいろいろあります。
《参考リンク》
■「「ケナフの生産性」は本当に高いのか(藤井伸二:大阪市立自然史博物館)」(「け・ke・ケ・KE・ケナフ?)

 さらに、温暖化の防止に役立つためには、吸収したCO2を固定しなければ意味がないのです。一年草のケナフは、CO2を吸収してもすぐに枯れて腐ってしまいます。つまり固定されたCはすぐにまた大気に戻ってしまうということです。ケナフを原料に紙を作っても同じです。その紙が燃やされれば、やはり再び大気中にCO2として放出されてしまいます。

 一方、木はどうかといえば、吸収速度はケナフや草本よりは少なくても、固定されたCは材としてしっかり保持されます。木がそこに立っている限りは、あるいは建築材として使われたり、家具がその形を維持している限りは、固定されたCはずっとそのままなのです。ケナフと木と、果たしてどちらが気候変動の防止に役立つかは明白です。

 というわけで、他の植物と比べてケナフが特に「環境にやさしい」とすることには無理がありそうです。

 そして一番問題になるのは、ケナフが日本にもともと生えていた植物ではなく、海外から持ち込まれた外来種であるということです。外来種であるケナフは日本で繁茂してしまうと、それと同じような生息場所にもともと生息していたヨシやオギなどと競争することになり、もしかするとヨシやオギがその競争に負け、ケナフが優占してしまうかもしれません。そうやって、地域の生物多様性を低下させることになります。

 しかも、在来種のヨシやオギが生息場所を奪われるだけでは済みません。ヨシやオギの茂みを生息場所、繁殖場所としていたネズミなどの小動物や水鳥にとっても大問題になるのです。個々の種のみならず、生態系まで撹乱してしまうことになります。しかもこうした変化は多くの場合不可逆的であり、修復するのは不可能か、非常に困難です。

 もしどうしても木質チップの使用を減らしたかったら、ケナフなど植えずに、在来種のヨシでも植えればいいのです。(っていうか、まずは紙の使用量を減らしましょう!(笑)) もし植物を植えることで気候変動を防ぎたかったら、CO2を固定する能力が高い在来種の木を育てればいいのです。あえて外来種のケナフを植える必要性はまったくありません。

 おそらくケナフから作った名刺を使っている方も、ケナフをせっせと植えている方も、「環境に良いことをしたい」という純粋な気持ちからのことだと思います。だとしたら、「ケナフが環境に優しい」という神話を信じるのは、そろそろ止めにしませんか? 副作用なしに出来ることが、他にいくらでもあるのですから。

 なお、ケナフのこうした問題性については、畠佐代子さんの「け・ke・ケ・KE・ケナフ?」に情報が集約されています。ケナフ推進派のサイトも、そちらから多数リンクが張られています。

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2007年06月21日

事業はすべて民間に

 持続可能な社会において政府はどうあるべきか? その役割は? 皆さんはどう思われますか?

 僕は、基本的にはなるべく小さな政府がいいと考えています。パーキンソンの法則を持ち出すまでもなく、組織が大きくなればなるほど無駄も大きくなることが第一。もう一つは、やはり事業は民間の方が得意だし、効率良くやってくれるからです。

 これに対して必ず、「いや、民間は金儲けに走る」とか、「それでは全国一律のユニバーサル・サービスが保てない」という反論が出てきます。今回のコムスンの事件を見ていると、やはりそういうことが起きるのだなとも思います。

 ですから、特に医療や、セーフティーネットに関わるサービスについては、やはり行政がやった方がいいのかなと思っていました。

 しかし、今回の社会保険庁の一件を見ていて、眼が覚めました。やっぱりダメです。行政には事業を遂行する能力はありません。事業はすべて民間に移行させましょう。社保庁も解体です。

「宙に浮いた年金記録5000万件」の問題で、データの突き合わせに時間がかかるとみられている社会保険庁の情報処理システムに、67年度以来、公費や保険料が約1兆4000億円投じられていたことが参議院厚生労働委員会の審議で14日、明らかになった。05年度には1100億円超が投入されていた。また、このシステムの運用管理を委託する4社に、社保庁の歴代幹部ら15人が役員や部長として再就職していたことも分かった。
出典:「社保庁システム、総額1兆4千億円 委託先に幹部天下り」(asahi.com、2007年6月14日)

 「年金資金はどんどん使え」「(職業や住所を変えた人の年金記録を統合する)通算なんてできるわけないが、見切り発車した」−。年金問題でパンドラの箱を開けたかのごとく、次々とデタラメが明るみに出ている社会保険庁だが、昭和中期に年金制度を設計した責任者たちがこんな無責任発言を繰り返す対談集が発掘された。自民党厚労族議員の重鎮すら「あれは悪名高い本なんだよ」とタメ息をつく、噴飯モノの中身とは−。

 「膨大な(年金)資金をどうするか。何十兆円もあるから、一流の銀行だってかなわない。これで財団とかを作って、その理事長というのは、日銀の総裁ぐらいの力がある。そうすると、厚生省の連中がOBになったときの勤め口に困らない」

 「年金を支払うのは先のことだから、今のうち、どんどん使ってしまってもかまわない。先行き困るのではないかという声もあったけど、そんなことは問題ではない」
出典:「腐れ社保庁OBの大放言…無責任対談本の中身とは」(ZAKZAK、2007年6月18日)

 信じられますか? こんな無責任なことを言って、しかもそれをご丁寧に活字に残すような無神経な人たちがいたのです!(さらに馬鹿にしているのは、そのためにまた税金を使っているのです!!) こんな人たちが管理(と言えるかどうか疑問ですが)していたのでは、とても持続可能な運営は無理でしょう。ジャブジャブと、お金をドブに捨てているようなものです。

 以上の記事はいずれも知人のYさんに教えていただいたのですが、さらに傑作なのはコレ(↓)です。Yさん曰く、「国ならいいのか?」です。
 大分市の無職女性(76)が自称年金担当者から、過払いの年金を返すという名目でATM(現金自動預払機)の操作を指示され、200万円をだまし取られていたことが19日までに明らかになった。大分中央署は詐欺事件とみて捜査している。
出典:「自称年金担当者に200万円だまし取られる…大分」(ZAKZAK、2007年6月19日)

 もちろん被害にあわれた方にはお気の毒なのですが、こんなことをすれば普通は詐偽になるわけです、当たり前ですが。しかし、社保庁がやっていることも、結果的には大して変わりませんよね。むしろ、ホンモノの「年金担当者」がその信用を利用したのですから、より悪質と言えるかもしれません。

 僕なんかの世代ですと、そもそも年金は払ったほどには戻ってこないそうなのですが、それでも今までは、世代間扶助だと思って毎月支払っていましたが...  正直言って、早くこんな制度とはおさらばしたい気持ちです。

 というわけで、今回の一件で、つくづくハッキリしました。行政に事業を任せてはいけないのです。そんな能力は持っていないんですから。行政は制度だけ作っていればいいのです。民営化することで明らかに問題が生じる部分には、それをカバーする仕組みを考え、民間がそれを実施すればいいのです。

 政府は小さく、自分たちのことは自分たちでする。そのことの重要性を明確に示してくれたという点でのみ、今回の件は役に立ちました。そのための授業料としては、ちょっと高すぎましたが...

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2007年06月16日

使える水はごくわずか

 今日はサスラボの更新が遅くなってしまって、ごめんなさい。しかし、いいお天気というか、暑かったですね。東京は真夏のような陽気で、アスファルトの道を歩いていると、もうクラクラしてきました(^^;)

 今年は全国的に水不足のところが多いようで、やっと梅雨入りしたというのに、これではとてもほっと出来ませんね。しかし、日本はもともと雨が多く、水の豊かな国のはず。雨が例年より少ないくらで、なんでこんなに水不足が心配になってしまのでしょうか?

 特に街で生活していると、水なんて蛇口をひねればいくらでも出てくるもの、安くて、いくらでも自由に使える資源と考えててしまいがちです。しかし実は、淡水はもともととても貴重な資源なのです。

 「水の惑星」と呼ばれることもある地球。宇宙からの写真で見ると、たしかに海の面積が広いですよね。しかし、このことからもわかるように、地球上に存在する水のほとんどは海水なんです。数字にすると.... どのぐらいだと思いますか? なんと、97.5%が海水なんです。淡水は地球上の水のわずか2.5 %でしかないのです。

 それでは、その2.5%の淡水はどこにあるのでしょうか? 実はその7割は極地の氷です。つまり液体の水は残り3割、ですから地球上の水のうちせいぜい0.8%程度です。

 ところがです、その0.8%のうちのかなりの部分は、長らく近に留まっている地下水なのです。河川とか、湖沼とか、地表を流れる水として地球の表面を循環してる水は、地球上の水全体の0.0075%程度です。また大気中にある水は0.001%です。この二つをあわせた0.0085%が循環しているのです。13億8千万立方キロという莫大な水があっても、そのごくごくごく循環して、私たちの命と生活はそれに支えられているですね。

 一見莫大に、無尽蔵に見える水ですが、そのうち私たちが使えるのはごくわずかなのです。それがグルグルと廻るからこそ、私たちの生活が支えられているのです。無駄遣いをしたり、汚したりするのはもちろんご法度ですが、気候変動などでその循環がスムーズにいかなくなってしまうと、たちどころに問題が発生するというわけです。

 日本のように年間千数百ミリの降水に恵まれている地域でもそうなのです。それ以外のもっと乾燥した地域であれば、さらに気候変動などの影響が大きいことは容易に想像がつくでしょう。

 正直を言えば、雨の日はあまり好きではありません。それでも私たちは水なしに暮らしていくことはできません。その大切で貴重な淡水資源を循環させてくれる重要な役割を持っているのだと思えば、雨の日も少し待ち遠しくなりませんか?

今日はお待たせしてしまったら、ゴメンナサイ。
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2006年03月09日

ファーストネームが先?

 自分の名前をアルファベット表記するとき、あるいは外国人に自己紹介するとき、どういう順番にしますか? 日本語であれば当然、姓、名の順番ですが、例えば英文中ではこれを名、姓の順番にする方が多いのではないのでしょうか。ファーストネームというぐらいですから...

 しかしよく考えると、これはちょっと変ではありませんか? 中国人の名前、例えば毛沢東は英語でもMao Zedongであって、Zedong Maoとは言いません。韓国人の場合も、金大中はKim Dae Jungで、 Dae Jung Kimとは呼ばないですし、それでまったく問題がありません。なのに、なぜ日本人だけ、英文中でJunichiro Koizumiと姓と名を逆に、つまり欧米風の順番にするのでしょうか?

 おそらく明治時代か何かに、英語や欧州語では欧米風にと気を利かせた人がいたのでしょうが、それでは逆に、欧米人の名前を日本語表記にするときには、日本風に姓、名の順番にするでしょか? George Bushはカタカナ表記でも、ジョージ・ブッシュであって、ブッシュ・ジョージとは誰も言いませんよね。

 「郷にいっては郷に従え」というのは、どうもきちんとした理由や説明にはなっていないように思えます。

 もし相手国の文化に合わせると本気で考えているのであれば、例えばイスラム圏ではどうするのでしょうか? イスラム圏には姓は存在せず、自分の名前、父親の名前で呼びます。ウサマ・ビン・ラディンは、ウサマが自分の名前え、ラディンは父親の名前です。ちなみにビンは「〜の息子」という意味ですので、この名前全体で「ラディンの息子のウサマ」ということがわかるわけです。

 もちろんイスラム圏で自己紹介をするときに「太郎の息子の次郎です」と紹介する日本人は稀でしょう。そう考えれば、英語でだけ名、姓の順番にするのは、欧米文化を意識し過ぎたおかしな行為のように思えるのです。

 おそらく世界中には、私たちが想像もつかないような、いろいろな名前の制度があることでしょう。文化の多様性を尊重するという意味からは、名前はそれぞれの国の順番に表記するのが、もっとも自然であると思います。

 したがって、ファーストネーム(first name)が常に最初に来るというのは、欧米の習慣でしかありませんし、日本人がそれを真似する意味はないと思います。そもそも、ファーストネームという呼び方が欧米的な習慣を背景にしたものであり、ギブンネーム(given name)と呼ぶ方が正確でしょう。

 日本人の名前を日本式の順番で書いたのでは、姓と名を取り違えられるとおっしゃる方もいると思います。しかし、それを避けるためには、姓はすべて大文字、名は最初に一文字だけを大文字にしたり(つまり、KOIZUMI Junichiro)、あるいは姓のあとにカンマを入れる(Koizumi, Junichiro)という表記方法があります。後者は名、姓を逆にしたという意味ですので、名、姓の順番が標準であることを前提にはしていますが、このようなやり方を使えば、混乱はしないはずです。

 いやむしろ、表記方法で姓と名が自動的にわかればいいということではなくて、初対面の方には「あなたの名前のどの部分が自分の名前で、どの部分が姓なのですか?」と尋ねることが、お互いの文化を正しく理解しようとする態度であると思うのです。

 ちなみに日本のパスポートは、姓、名の順番に表記されているはずです。また、政治家では小池百合子環境大臣が、いつもKoike Yurikoという日本式の順番を使っていらっしゃるようです。イスラム圏に留学したことが関係しているのではないかと推測しますが、実際はどうなのでしょうか。

 というわけで、自己紹介の際には姓、名の順番で名前を言って、できればその順番についても一言説明を加えると、日本の文化や習慣に興味を持ってもらうきっかけになるかもしれませんね。

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2006年02月16日

アブラギリは魔法の燃料?

 2/15のジャカルタ・ポストに「忘れられていた『フルーティーな』ディーゼル燃料の代替」と題して、ナンヨウアブラギリのことが紹介されていました。
Jatropha.jpg

 ナンヨウアブラギリ(学名:Jatropha curcas)は、熱帯アメリカ原産トウダイグサ科の植物で、インドネシアではjarak pagarと呼ばれています。

 種子からとれる油が、ディーゼル燃料の代替になるというので、インドネシアでは、第二次大戦中に日本軍が栽培を奨励していたそうです。日本軍は、なんとこれを零戦の燃料にしていたのです!

 しかし戦争も終わると、安く潤沢な化石燃料が入手できるようになりましたから、そんな用途はすっかり忘れ去られ、葉っぱが赤ちゃんの胃の薬として使われるぐらいだったようです。

 ところが、このところインドネシアはエネルギー危機とも言える状況にあり、ついに今年1月にはバイオディーゼルを代替燃料として位置づける大統領令が発令されて、すっかり状況が変わりました。将来の代替エネルギーとして、ナンヨウアブラギリがにわかに再度脚光を浴びるようになったのです。

 BPPT(the Agency for Assessment and Application of Technology、科学技術庁みたいなものでしょうか)のバイテク研究部門長によれば、ナンヨウアブラギリはバイオディーゼルの原料としてうってつけだそうです。

 というのも、この植物は乾燥に強く、植えてからわずか半年で実をつけるようになるのです。収穫量が最大になるのは6年後ですが、その後、20年生に達するまで、毎年3〜4回果実を収穫可能だそうです。1haに2500本植えられ、条件が良ければそこから毎年10トンの果実を得られます。12.5トンの果実で1900リットルの油が取れるそうなので、1haでは年間1500リットル取れる計算です。

 350万haにナンヨウアブラギリを植えれば、インドネシアで使われているディーゼル燃料の20%を代替することが出来るそうです! 取れた油は 石油から作られたディーゼル燃料と似ているので、既存のディーゼルエンジンをほとんど改造なしに使えるそうです。おそらく硫黄や窒素の含有量も低いでしょうから、SOx, NOxも出さず、夢のバイオディーゼルというわけです。

 が、ちょっと待ってください。

 350万haと言えば、日本の国土面積の約1/10、九州より少し小さいぐらいの面積です。ただでさえ、違法伐採やオイルパームのプランテーションの開発で森林が減少しているのに、さらに350万haのナンヨウアブラギリのプランテーションですか? 先日も書いたように、西カリマンタンに今あるオイルパームのプランテーションは100万ha、今のところ世界最大のパームオイルの生産国であるマレーシア全土のプランテーション面積がちょうど350万haです。もしパームオイルに加えて、ナンヨウアブラギリが大量に植えられることになれば、さらに大規模な自然破壊になることは明白です。

 そしてオイルパームもそうですが、ナンヨウアブラギリも、外国からの移入種です。こうした植物を栽培することによって、周囲の生態系に悪影響を与えることが懸念されます。

 実は、バイオディーゼルとして期待されているのは、ナンヨウアブラギリだけではありません。オイルパームも油をたくさん作るので、食用や石鹸の材料としてだけではなく、バイオディーゼルの原料として最近注目を浴びています。

 ヨーロッパの企業が、バイオディーゼルの原料としパームオイルに目をつけているのです。中国やインドにおける食用油としての需要の増加に加え、バイオディーゼルの原料にもなりそうだということで、今後ますます需要が伸び、その結果、価格も上昇するだろうと、パームオイル業界は色めき立っています。

 しかしその結果、ますます熱帯林は減少し、またもしバイオディーゼルとして売る方が食用油としてより高く売れることになれば、先進国が「地球に優しい」ディーゼル燃料を使うために、途上国、中進国の人たちは食用油を入手しにくくなるという状況も生じかねません。

 ジャカルタポストはナンヨウアブラギリを好意的に紹介していましたが、こんなことを考えると、僕はちょっと憂鬱な気分になってしまいました。

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