2009年12月08日

失業率を決めるもの

 ここ数ヶ月で失業率が若干改善されたというニュースを聞きますが、世の中の様子を見ていると、本当にそうなのかと思いますよね。実際、改善されたとは言っても、10月の完全失業者数は344万人と1年前に比べ89万人増加完全失業率(季節調整値)は5.1%と今だ5%を超えています。やはり大変な就職難が続いていることには変化はないのです。

 それでも5%というと、海外よりはいいのかなと思えますし、あるいは実際に、そんなもので済んでいるのかなという疑問も湧いてきます。どうやらこれにはいろいろとカラクリがあるようで、総数でいくと5.2%(季節調整値では5.1%)でも、15〜24歳の若年層に限って言えば9.3%に跳ね上がるのです。この年齢層の男性については、なんと10.2%というから、ビックリです。これはOECD諸国の中でもっとも悪い部類の数値のようです。

 そして実はこの失業者数に、非労働力人口のうちの就職希望者、週1〜4時間のバイトも失業者として加えると失業率は12.7%に、また雇用調整助成金対象者も含めれば、15.6%にもなるのだそうです。雇用調整助成金対象者の方々は仕事はないので潜在的失業状況になるわけですが、こうした方々が199万人もいるからです。

 統計局の労働者調査を見ていると、こうした雇用の大変な状況が浮かび上がってきます。

 一方、今日もう一つ紹介したいのは、フランスの場合です。以下の図をちょっとご覧ください。
FrenchUnemploymentrate.jpg
 これは、LICRA(人種差別と反ユダヤ主義に反対する国際連盟)というフランスのNGOが作ったポスターなのですが、ここに掲げられ数値が失業率。そして、その横のタイルの意味は... 実はこれ、肌の色なのだそうです。

 つまり、白人は失業率が6%なのですが、肌の色が濃くなるにつれ失業率はどんどん高くなり、黒人はなんと25%! これでは暴動も起きるはずです。

 日本ではさすがにこんな露骨な差別はありませんが、それでも若い方々、特に男性の失業率が高いということは、十分に問題です。本人にとって大変なばかりでなく、社会にとっての損失も大変なものです。

 日本の失業率は5%、他の国々に比べればまだマシとは、とても言ってはいられません。セクターを区切ったり、集計する範囲を変えれば、かなり酷くて、しかも偏った状況が既に生まれているのです。平均値だけではなく、細部の変化にも目を凝らす必要がありそうです。

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2009年07月12日

定年は50歳へ

 年金の受給開始年齢が65歳に引き上げられたこともあり、改正高年齢者雇用安定法では定年を65歳に引き上げることが求められています。しかし、これって本当に良かったのでしょうか? むしろ定年は50歳に引き下げて、その後再度70歳ぐらいまでは別の仕事に就くというのはどうでしょうか? 今日、知人のMさんと話をしていたとき、そんなことを思いつきました。

 この先日本の人口が高齢化することや、今の60代は昔の60代と比べてはるかに体力・気力ともに充実していることを考えれば、60歳で引退するのはありまりにもったいないことです。その後も少なくとも70歳ぐらいまでは現役でご活躍いただきたいと思います。収入面だけでなく、ご本人の生き甲斐という意味でも、またそれまでの知識や経験を世の中に還元するためにも、意義があることだからです。

 しかし60歳、ましてや65歳から再就職をしたり、新しいことを始めるというのは、ちょっと大変なのではないかと思うのです。また、50代のまだ脂の乗っているときに、定年まであと何年と指折り数えるのももったいないように思います。

 だったらいっそのこと、まずは50歳を定年として、それからの20年は新しいことにチャレンジする。そんな風にしたらいいのではないでしょうか? 他の企業に再就職というのもアリですが、むしろ、教育とか、介護とか、NGOとか、どちらかというと社会のために働く職業だと、なおいいと思います。50歳の体力・気力が十分なうちに新しいことに取り組み、20年間あれば、それまでの28年ぐらいにくらべて、同等の、いやそれ以上の成果を出すこともできるはずです。

 さらに定年が50歳になれば、当然会社の管理職は若返ります。40代、場合によっては30代が、より責任のある立場を任されるでしょう。これは会社の活性化としても意味があると思います。それ以外にも、若い人の就職口も増える効果も期待できるかもしれません。

 そんなことを考えると、会社や社会が元気になるためには、定年延長して一つの会社に勤めている時間を長くするのではなく、むしろ定年を前倒しにして、再就職することを当り前にすればいいのではないかと思ったのです。

 もちろん再就職がスムーズになるための工夫も必要ですが、学生が就職活動をするのに比べれば、実績やスキルが見えやすい50歳での再就職であれば、本人の適性や希望によりあった職場を探しやすくなるのではないでしょうか。

 というわけで、これって案外いけるんじゃないかと一人悦に入っているのですが(笑)、いかがでしょうか? 見落としている点などあれば、どうぞご指摘ください。

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2009年06月18日

雇用問題を考えよ

 もうかなり日にちが迫ってしまっているのですが、来週24日に非常に興味深いというか、これは逃せまいというセミナーがあります。サステナの第2回となる6月は雇用問題の実態というテーマのもと、現在おかれている日本の労働問題を取りあげます。サステナビリティ日本フォーラムの今年のCSR勉強会第2回で、テーマはずばり雇用問題です。

 サスラボでもしばしばCSRの重要課題として雇用、特に最近急増した非正規雇用について取り上げてきました。今年のCSRでは真っ先に取り上げ、考えていただきたい課題ですが、企業にとって対応が難しく、本音ではあまり「触りたくない」のか、どうも低調な気がします。

 いずれにしろ、まずは現場の声、専門家の声をお聞きして、現実にきちんと向き合い、考え始めることが重要でしょう。そのためにこのセミナーはピッタリだと思います。

 CSR担当者は必聴と言うべきこのセミナー、僕も一聴衆として参加する予定ですが、ぜひ会場でお会いしましょう。

 2009年度 サステナビリティ日本フォーラム 第2回勉強会
◇テーマ 「雇用問題の実態」 〜 日本の未来を見据えて雇用の今を考える〜 

昨年の世界的な金融危機にはじまり経済的不安の煽りを受け、労働者の環境はますます悪化するばかりです。忘れてはならない事はこのような時代に真っ先に打撃を受けるのは社会的に弱い立場にある人達だという事です。昨年暮れからマスメディアでは非正規雇用労働者の大幅なリストラやそれにともなう経済苦、新卒学生の内定取り消しなど胸の痛む話が取り上げられています。そして、非正規雇用者にとどまらずその余波は正社員までにも及んでいます。では雇用調整を経営手段としておこなっている企業だけが悪いのでしょうか?そこには企業の努力だけではなく社会、国として取り組まなければならない問題があります。また安定した雇用の実現は「企業の信頼性・ブランド力」につながり、企業の社会的責任にもつながる事でしょう。先日発表された東洋経済CSRランキング(09年版)では上位への順位変動のカギは「雇用」の取組みであるとし、今後は非正規雇用や外国人労働者などの項目へも拡充を図っていきたいとされています。雇用の不安が叫ばれる中、真のCSR経営とは何か?今こそ問われる時なのでしょう。今回の勉強会では労働問題とその制度の全般的な部分を日本労働組合連合会・副事務局長の逢見直人氏に、非正規雇用の現状や社会のセーフティネットについては年末年始に東京・日比谷公園に開設された「年越し派遣村」の村長として活躍されたNPO法人自立生活サポー トセンター「もやい」の湯浅誠氏にご講演頂きます。皆様のご参加をお待ちしております。
★質疑応答の時間もありますので皆様の疑問などにもお答えします。

           記

■講 師:逢見 直人 氏
 日本労働組合総連合会 副事務局長
■講 師:湯浅 誠 氏
 NPO法人 自立生活サポートセンター「もやい」  

■日 時:2009年 6月24日(水) 15:30〜18:00 (受付15:00より)
■場 所:環境パートナーシップオフィス(EPO会議室 BF2 )
■参加費:会員無料、 一般 10,000 円
■定 員:50名 (申し込み多数の時は会員優先)
■お申し込み方法:「6/24 勉強会申込」と件名をつけ、下記申し込み要項をご記入の上、Sus-FJ 事務局宛てに、Eメール又はFAXでお申し込み下さい。
詳細は、こちらのリンクまで。

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2009年03月18日

製造派遣ゼロに!?

 株価は多少持ち直したものの、それ以外には相変らず景気の悪い話が続きます。そんな中、唯一「グッド・ニュース!」と思ったのは... 昨日17日の日経新聞、「リコーやトヨタ系、製造派遣を原則ゼロ 直接雇用にシフト」という見出しです。

 ただ、よく読んでみると、これは派遣社員を終身雇用の正社員にしようということではなく、期間社員や請負に切り替えるという話でした。
 リコーとトヨタ自動車系の主要企業はそれぞれ、製造現場の派遣社員を原則ゼロにする。最長3年と定められた製造業派遣に頼っていては、品質や生産性の維持・向上が難しいと判断。主に直接雇用の期間社員に切り替え、今後、人手が不足しても製造業派遣は使わない方針だ。大手メーカーは景気悪化で派遣社員を大幅に削減しているが、柔軟な雇用形態を維持しつつ、技術伝承など中長期的な観点から製造業派遣を見直す動きが広がりそうだ。
出典:「リコーやトヨタ系、製造派遣を原則ゼロ 直接雇用にシフト」(NIKKEI NET、2009年3月17日)

 まぁ派遣よりはいいのかもしれませんが、期間社員や請負では根本的な解決にはなってない気もしますが... それでも期間社員であれば、直接雇用であるために雇用主の責任が明確になったり、福利厚生も含めた待遇面でも有利だったりはするようですが...
《参考リンク》
■「派遣 or期間工?」(トヨタ自動車期間従業員への道)

 今の経済状況の下、いえ、たとえ好況下であっても、派遣社員をそのまま正社員に切り替えるというのはそう簡単な話ではありません。それでも、製造業における派遣労働者への安易な依存が、企業の競争力の源泉をも傷つけていることに経営者が気が付き、本気で見直しを始めたのだとすれば、事態はやや改善に向かい始めたと言えるでしょう。

 避けがたい景気の波の中で雇用をどう守り、技術をどう伝承していくか。この難しい問いに対する答えに対する「持続可能な」答えは何なのでしょうか?

 2009年のCSR報告書では、各社がどういう答えを用意するのか、じっくりと拝見したいと思います。

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2009年03月14日

結婚できない、子供持てない

 非正規雇用が様々な点で働く人に過度の負担を強いることは繰り返し指摘されてきています。特に最近では、不況の中、真っ先に職を奪われ、まさに人間が「景気の調整弁」として使われてしまっています。そして、そうした方々の中には、次の日からの住む場所や食べるものに困る方もいて、やっと問題と考えられるようになりました。

 しかし、そんな切羽詰まった状況に追い込まれなくても、日本の非正規雇用労働者がそもそもとても不安定で弱い立場に立たされていることが、問題なのです。非正規雇用が日本では本質的に低賃金労働であることは「「労働ダンピング」を食い止める」で紹介しましたし、実際にそれがいかに「安い」労働であるかは、「同じ仕事でも...」で具体的に紹介しました。

 そして先週、厚生労働省が公表した「21世紀成年者縦断調査」の結果は、低賃金ということがいかに非人間的であるかを具体的示していて、ショックでした。この調査によれば、「結婚適齢期の男性で2007年までの5年間に結婚した非正規社員の割合は、正規社員の半分にすぎず、出産した女性の割合も非正規と正規社員では2倍近い差」があったというのです。
出典:「「非正規」男性、結婚難しく=出産も正社員の半分−厚労省」(時事通信、2009年3月11日)
■「第4回21世紀成年者縦断調査(国民の生活に関する継続調査)結果の概況」(厚生労働省)

 給料が安くて結婚できないとはよく聞く言葉ではあるのですが、それがこうした具体的な数値となって示され、しかもその結果がこれだけハッキリしていると、改めてこの問題の大きさを感じます。

 「食べるものに困る」状況になれば誰もが事の重大さに気づくのでしょうが、食べるものは何とかなるにしても、非正規雇用であるために結婚できない、子供ができないのであれば、これも十分に重大な問題です。ちょっとキツイ表現をすれば、人権問題であると言うべきかもしれません。

 このように、少なくとも非正規雇用が日本社会の抱える大きな問題の一つであることは間違いありません。それではこのことについて雇用者である企業は、どのように答えるのか、説明するのか。今年の各社のCSR報告書の中味にはとくと注目したいと思います。

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2009年02月10日

ワークシェアリングのためには

 昨年来の経済危機は、世界各地で雇用の悪化をもたらしています。日本では「派遣切り」に代表されるような、弱い立場の方々にしわ寄せをするような「解決」方法が取られていますが、長い目でみたとき、これは社会の安定性を失わせ、また活力も、将来の競争力をも奪う危険性を孕んでいます。「派遣」を雇用の調整弁のように扱うやり方は、公正でも、持続可能でもないやり方です。

 こうした露骨な「派遣切り」に対する批判に慌てたのか、今年はじめには経団連の御手洗会長は、「深刻化する雇用問題に対応するため、「ワークシェアリングも一つの選択肢で、そういう選択をする企業があってもいい」との考え方を示した」ものの、先月末に当のキヤノンは「経済情勢が厳しいなかで、ていねいな形で雇用問題に取り組んでいきたいが、ワークシェアリングについては現時点で具体的な考えはない」と述べるにとどまり」(NHK)、あまり本気で考えているわけではなさそうです。また、そもそもワークシェアリングや派遣切りをしなくても、もうしばらく雇用を維持するのは可能だという指摘もあります。
《参考リンク》
■「労働者は雇用調整弁か、経団連トップの無責任体質あらわに」(JanJan、2008年12月12日)
■「御手洗氏のワークシェアリングは賃金抑制が狙い」(JanJan、2009年1月14日)

 欧州では、政治家が「大量解雇の回避措置として、産業界は可能な部分ではパートタイム労働を活用して雇用を維持すべき」という発言も始めているようです。

 ワークシェアリングと言うとオランダの成功例がオランダ・モデルとして有名ですが、これは政労使三者による協定である「ワッセナー合意」によってはじめて可能になったものです。

 この合意で労働組合は賃金抑制に協力し、企業はワークシェアリングを積極的に導入することによる雇用の維持拡大を図り、また政府は減税と財政支出の抑制を図り、同時に企業投資を活発化することで雇用を増加させたのです。

 つまり、単純にワークシェアを導入するというだけで問題が解決するわけではなく、政労使それぞれが努力し、痛み分けもして可能になったのです。

 専門家に言わせると、オランダ・モデルは多様就業対応型あるいは雇用創出型のワークシェアリングであり、緊急避難の雇用維持のためのワークシェアリングとはそもそも位置づけが違うとか、同一労働同一賃金が実現されていない日本では著しく困難であるとか、たしかにごもっともです。

 ただ、ここでもっとも注意しなければならないと思うのは、ワークシェアリングを行うためには、やはり痛み分けが必要だということです。自分たちの給料が多少下がったとしても、職を完全に失う人が大量に出ることを防げれば良しとする。そういう連帯意識なしには、ワークシェアによる問題解決はあり得ないということです。

 もちろん、一番責任を感じるべきは派遣を雇用の調整弁としか考えない企業ですし、ましてや正社員と派遣社員の利害が背反するのをいいことに、両者を対立・分断させようと考える経営者がいたとしたら、それは本当に卑劣です。

 そうした策に嵌まらないためにも、そして何より私たち自身の社会をより安定で持続可能なものにするためにも、私たち自身がワークシェアリングをもう少し積極的に考える必要があるかもしれません。手取りは減ったとしても、生活できる水準の収入があれば、増えた時間で生活をより充実させたり、得ることも多いはずです。むしろワークライフバランスを実現するための好機と捉えるぐらいの、発想の転換も必要なのかもしれません。

 え、僕ですか? そもそもいくら働いても収入はまったく変わらない身の上です(^^;)  どなたか仕事をシェアしてくださる方がいれば、もう大歓迎です(笑)

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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2009年01月04日

派遣切りとCSR

 「派遣切り」なんて嫌な言葉を目にすることが増えてきました。日比谷公園の「年越し派遣村」のニュースなども、聞くたび、読むたびに辛い気持ちになってきます。派遣村を頼りに集まる方は日増しに増え、厚労省の講堂使用期限を明日の朝に控えるというのに、今日500人に達したそうです。厚労省はなんとか都内の学校跡地など代替の宿泊スペースを確保したそうですが、それも12日までなのだそうです。その後は一体どうするのでしょうか?
 東京・日比谷公園の「年越し派遣村」実行委員会は4日夜、厚生労働省が公園や東京・霞が関の厚労省講堂に寝泊まりしている約500人分の宿泊スペースとして、都内の廃校になった学校跡地の建物など4カ所を確保した、と明言したことを明らかにした。期間は12日までの約1週間。

 講堂の使用期限が5日朝に迫り、実行委が衣食住の確保を求め厚労省と交渉を続けていた。実行委によると、支援を求めて集まった人たちはこの日さらに約100人増え、約500人に達した。
出典:「500人分の宿泊スペース確保 学校跡地など都内4カ所に」(47news、2009年1月4日)

 今年3月末までには全国で少なくとも3万人の非正規雇用の方々が職を失うと厚労省は試算しているそうですが、とても全貌は掴むことは出来ないでしょうから、この数値はかなりの過小評価でしょう。日比谷公園の百倍の規模の行動を起こす必要があるのです。路頭に迷う数万人をどう守るか、日本の政治と社会がその力を問われています。
《参考リンク》
■「非正規労働者、3万人が雇用喪失 採用内定取り消しも高水準 」(日経BizPlus 2008年11月28日)

 一方、雇用に対して直接の責任を持つべき企業はと言うと... 御手洗経団連社長は「朝日新聞のインタビューに対し、失業者の住宅確保や就職支援のため、企業が出資しあって基金を創設する構想を明らかにした」そうです。また、それに留まらず「急速に悪化した雇用に対する経済界の事前対応の遅れを認め、しわ寄せを受けている請負会社への支援も発注元企業として検討する考えを示した 」とのことです。
出典:「雇用安定へ「企業の基金」提案 御手洗・経団連会長」(朝日新聞、2009年1月1日)

 遅きに失した感は拭えませんが、本気なのであれば、迅速に、十分に意味のある規模で進めていただきたいと思います。大企業であればあるほど、影響力も、責任も大きいのですから。
《参考リンク》
■「酷使して大もうけなのに 大企業が「派遣切り」マツダ・日産・キヤノン… 各地で強行」(赤旗、2008年11月7日)

 言うまでもなく雇用は企業のもっとも重要な社会的な責任の一つであるはずです。多くの大企業はCSRレポートの中で、正社員に対する待遇については若干述べていても、非正規雇用の従業員についてはその人数すら触れていません

 しかし、今や正社員よりも非正規雇用の従業員の方が遥かに多い企業は珍しくありません。というよりそういう企業の方が多いのかもしれません。百歩譲って非正規雇用も「雇用の多様性」として認めるとしても、だとすれば尚更、その多様な従業員に対する責任を果たす必要があるでしょう。

 そのためにも、まずは情報を開示することです。CSRを喧伝する企業は、CSRレポートを発行する企業は、自社がどれだけの非正規雇用に依存しているのかを明らかにし、またその処遇についても開示すべきなのではないでしょうか。そしてもちろん、どれだけ「派遣切り」したかもです。

 今まで日本のCSRにおいては、あまりに雇用のことが語られずにきました。これからはこの一番重要な課題をきちんと議論していただきたいと思います。それは単に倫理的な問題であるからではなく、企業にとっての競争力の源でもあるからです。

 しばらく前の以下のような記事を読んでいると、派遣の方々を人とすら思っていないのではないかという企業があり、読んでいるこちらまで怒りが湧き上がってきます。派遣だろうが、正社員だろうが、きちんと一人ひとりを尊重し、それぞれの力が発揮できるよう配慮しない企業に明日があるとは思えません。
 「派遣切り」の後に送られてきたのは手取り0円の給料明細だった。関東地方の半導体基板製造工場で派遣社員として働いていた30代後半の男性。11月上旬に契約打ち切りを言い渡された。だが、11月分の給料は、寮の清掃費などを差し引かれて1円も振り込まれなかった。「平気で使い捨てておいて、ここまでするのか」。男性は怒りにふるえている。
出典:「派遣切り、届いた0円の給料明細 「寮費不足分払え」」(朝日新聞、2008年12月26日)

 こんな仕打ちは問題外ですが、そうでなくても、派遣について、非正規雇用について、きちんと説明できない企業が、いくらCSRと言っても、そんなものは誰も信じないでしょう。

 それにしても、様々なサイトで「派遣切り」の記事を読んでいると、記事に「派遣」という言葉含まれるために、自動的に派遣会社の広告が表示されることが多いですね。かえって逆効果なのがわからないのかと、失笑を禁じ得ません。

長くなってしまい、ゴメンナサイ。最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。
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2008年09月04日

今も、ここにも、女工哀史

 一昨日前に映画「女工哀歌(エレジー)」のことを書きましたが、もしかしたら10月にこの映画とからめてトークショーをやるかもしれません。そのときにはまたお知らせしますね。

 ここしばらくのブログを丁寧に読んでいてくださった方は、それではiPodガールの職場は大丈夫なんだろうかと心配になった方もいらっしゃるかもしれませんね。

 おそらく今は大丈夫なハズですが、実は彼女が勤めていた工場でも、つい数年前には問題があったことが報道されています。iPodガールが勤めているのは中国でも最大規模の工場であるFoxconn(富士康)の深センにある工場なのですが、この工場、もしくはその兄弟工場で2006年、イギリスのサンデー・テレグラフ紙がその労働条件の悪さを糾弾する記事を掲載しました。
深セン龍華工場を取材した同紙の記者によると、20万人の従業員の多くは女性で、敷地内の宿舎で生活する彼女たちの労働時間は1日15時間にも及び、その月収はわずか27ポンド(約387元)だという。
 また、「iPod shuffle」の生産を行っている蘇州工場では、従業員の平均月収は54ポンド(約774元)だが、宿舎は提供されておらず、家賃や食費を自己負担するため、収入の約半分が消えてしまうという。
出典:「現代版「女工哀史」?、iPod工場の実態を英紙が報道」(サーチナ)

 もちろんアップルはそのような労働条件は許しておらず、工場の実態調査をFoxconnに迫ったり、当のFoxconnはサンデー・テレグラフ紙の記者を訴えたりと大変な騒ぎになったのですが、結果的には真相がよくわからないうちに双方が和解するという不透明な結末を迎えています。

 ただその後Foxconn社に関して同様の問題は報告されておらず、少なくとも現在のiPodはCSR的にも問題がないようです(そうでなければ、恐ろしくて使えなくなってしまいます)。

 しかし、実はこのように中国人の労働者がヒドイ目に遭っているのは、中国国内だけではありません。つい数日前にも、日本でも同様の問題が生じていることを示唆するニュースが流れていました。
 山梨県昭和町のクリーニング会社「テクノクリーン」が賃金を巡るトラブルから中国人女性実習生6人を無理やり帰国させようとした問題で、負傷した実習生3人が2日、内田正文社長ら5人を逮捕監禁傷害などの容疑で県警南甲府署に告訴した。

 告訴状によると、実習生6人は8月20日、会社に最低賃金を下回る残業代などを改善するよう要望。内田社長ら約10人は回答期限の8月22日早朝、6人を成田空港から中国に帰国させようと社員寮前からマイクロバスに無理やり乗せ、2人が腕などに軽傷を負った。バスは途中で寮に引き返したが、翌日1人が逃げ出そうとして寮の2階から飛び降り、左足を骨折した。
出典:「中国人実習生:賃金トラブル問題で社長ら5人告訴」(毎日.jp、2008年9月3日)

 今や日本の多くの産業が「実習生」や「研修生」という名目の外国人の出稼ぎ労働者によって支えられていますが、そこでは最低賃金に満たない低賃金に加え、人権を無視するかのような扱いが見られることを仄聞します。

 このように、日本国内にも今だ「女工哀史」は存在しますし、CSR調達やサプライチェーンマネジメントはまず国内から始めるべきなのかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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2008年09月03日

働かせ方ではなく、働き方

 今日、経済同友会の桜井正光代表幹事と企業・経済法制委員会が「『日雇派遣』の原則禁止案に対する意見」(←PDF)を発表しました。日雇派遣の原則禁止については企業からは消極的な意見が多いので、どんな内容かなと思ってちょっと心配しながら読んでみると... 良くまとまった意見書で安心しました。5ページほどの短い文書ですので、ぜひ皆さんもお読みください。
■「「日雇派遣」の原則禁止案に対する意見」(経済同友会)

 具体的な内容ですが、まず日雇派遣労働の問題点として、以下の4つを挙げています。
1. 派遣会社のコンプライアンス違反
2. 危険業務に対する不十分な安全衛生教育
3. 低所得かつ不安定な雇用形態
4. マージンの高さ

 また、日雇派遣という働き方についての同友会の考え方としても、「学生、主婦の短期アルバイト等、短期の就労を希望する者にとっては便利な仕組みである」という企業がよく述べる考えだけでなく、「望まずしてこれを生業とせざるを得ない者、特に就職氷河期において正社員になれなかった若者にとっては、未来に希望を持てない働き方と言わざるを得ない」と理解を示し、問題を共有しています。

 その上で原則禁止論については、「日雇派遣を単純に禁止することによって問題が根本的に解決されるかどうか疑問」として、問題点の抜本的な解決を図り、労使双方のメリットを活かすための具体的な問題解決の方向性を提案しています。具体的に各問題について、以下のような対応を提案しています。
1. 派遣会社のコンプライアンス違反に対しては、許可の取消等、厳格な処分を実施すべきである(現行法を維持し、運用を強化)。
2. 危険が伴う業務に対する安全衛生教育を強化する、もしくは、危険が伴う業務に対する日雇派遣を禁止とすべきである。
3. 低所得かつ不安定な雇用形態を改善するためには、新たな支援制度を設けるべきである。
4. 職種別賃金を開示すべきである。

 そして《終わりに》には、以下のような文章がありました。
日雇派遣という働き方は、やはり、それを生業とする者にとっては、決して望ましい働き方ではない。雇用の多様化は、「働かせ方」の多様化ではなく、「働き方」の多様化でなければならない。
 本当にその通りです。働き方の多様化を、働かせ方の多様化にすり替えてはいけないのです。あくまで選択の主体は働く人です。

 このように、今回の意見書は日雇派遣の問題について良い方向性を出したものと評価できると思いますが、その背景にもう一つ重要な本質的な問題、構造があることには触れられてていませんでした。

 その問題とは、現在の多くの企業の収益ないし競争力は、派遣労働などの「安い」非正規雇用に支えられているということです。これは経営上の問題であるだけでなく、「高い」正規労働者と非正規労働者(派遣労働者も含まれます)の対立構造にも繋がりかねません。

少子高齢化社会において、日雇派遣労働者だけでなく、望まずに非正規雇用に留まっている若者たちを積極的に登用していくことは、わが国の社会基盤を維持し、成長力を高めるために不可欠であろう。
 このように意見書を結んだ同友会の経営者の方々には、非正規雇用の問題をどう考えるのか、どう解決していくのかについて、引き続き、お考えをお聞かいただきたいと感じました。

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2008年09月02日

中国の工場を見る

「蟹工船」が復活ベストセラーだそうで、それはそれで気が重いのですが、オリンピックの成功で得意満面であろうお隣の国から、驚くべきドキュメンタリー映画がやって来ました。

 タイトルは、「女工哀歌(じょこうエレジー)」。誰もが「女工哀史」を思い起こすであろうこのタイトルは、まさに「あゝ野麦峠」の現代版です。

 ジーンズ工場で密着取材したドキュメンタリー映画で、舞台はどうやら深センのようです。ムムム、これはちょっと気になります。僕もよく、その辺りの工場を訪問するからです。

 どうもまだきちんと完成はしていないような(^^;)公式サイト「女工哀歌」を訪れトレーラーを見ると、「私たちが毎日つくるジーンズ、誰がはいているんだろう?」という無邪気な質問を投げかける少女たちの苛酷な毎日が次々に写し出されます。

 「平均年齢15歳?」、中国では16歳未満は児童労働なんですけれど.... 「時給7円以下?」、最近の深センの最低賃金はかなり高くなっていて、月給で1万円前後に達しているはずなのに... 「1日の労働時間は18時間?」、法律上は残業時間は36時間まで。実際にはもう少し多いのですが、それでも一日4時間を超えるのはちょっと...

 政府も熱心だし、この数年で中国の労働慣行もかなり改善されたであろうと思っていたのですが、まさかこんな工場が残っているとは! よく見てみると、この映画は2005年製作ということですので、願わくば、この映画の工場でも、こんなことは既に「過去の話」になっているといいのですが...

 まだ本編は見ていないのに、トレーラーや関連記事を見ているだけで重苦しい気分になって来ました。そしてその次に、もしかしたら、僕が見た工場も実はふだんはこんななのではないか? 僕が訪問したときだけ取り繕っていたのではないだろうか? そんな疑念が湧き上がって来て、背筋がゾッとしました。なにせ、そのぐらいごく普通の中国の工場の光景なのです。あなたのはいているジーンズだって、もしかしたらこんな工場で、彼女たちの手で作られたのかもしれません。

 原題は"China Blue"、インディゴ・ブルーのジーンズを作る中国の工場。そこで働いている労働者たちの毎日はブルーということなのでしょう。僕もかなりブルーになってしまいましたが、それでもやはりこれは見なければ! 9月27日から公開です。

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posted by あだなお。 at 23:59| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働・雇用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月20日

批准できない理由

 昨日の続きです。

 それでは日本はなぜ、もっとも基本的かつ重要な労働基準であるILOの中核的労働基準に関する条約を批准できないのでしょうか?

 日本が未批准なのは、強制労働の廃止に関する条約である105号と、雇用及び職業についての差別待遇に関する条約の111号です。

 105号が批准できないのは、日本の公務員(国家公務員、地方公務員)はスト権を認められていないことに関係しています。より具体的に言えば、「国家公務員法・地方公務員法でストを『企て、共謀し、そそのかし、若しくはあおった』者に対する懲役刑を定めているのが条約に抵触」するからです。(カッコ内は「中核的労働基準とILO」(連合)より引用)
【参考】
■「1957年の強制労働廃止条約(第105号)」(ILO駐日事務所)

 実際日本では、公務員であった国鉄職員や教職員がスト権を求めるストを行い、有罪判決を受けた例もあります。

 また、111号が批准できないのはもっとお寒い理由で、「条約の禁止する7つの根拠に基づく差別を明確に禁止する国内法の不在と、使用者側の心理的抵抗」(同上)からといいます。
【参考】
■「1958年の差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)」(ILO駐日事務所)

 いずれにしろ、CSRの観点から言えば、国がこれらの条約を批准していなくても当然遵守べき内容です。

 ちなみに、最近は公務員のスト権を認めるための法改正の動きもあるようにも見えます。例えば、以下のニュースをご覧ください。
 公務員の労働基本権のあり方を検討している政府の行政改革推進本部専門調査会(座長・佐々木毅学習院大教授)の報告書案が18日、明らかになった。一定の非現業職員に団体交渉権の一部である「協約締結権」を付与することを提言したが、一方で、労使交渉による人件費の増加などへの懸念も指摘。実現には「国・地方ともにおおむね5年程度の期間が必要」と結論付け、政府に慎重な検討を求めた。
出典:「<労働基本権>公務員に協約締結権 行革・調査会が報告書案」(毎日新聞、2007年10月19日)

 しかし、「団結権の対象拡大と争議権(スト権)の付与については賛否両論を併記するにとどめ」ていますし、スト権を認める代わりに大規模なリストラを狙っているのだとの話もあります。
【参考】
■「「公務員にスト権」本格検討へ…自民模索、次期政権の課題」(読売新聞、2006年8月21日)


 公務員の一部など特殊な業種の話はともかく、中核的労働条件の4分野8条約とその中味については、CSR関係者はもう一度その中味を確認してみるといいかもしれませんね。

※ネタバレになるので昨日のエントリーではあえて出典を書きませんでしたが、昨日と本日のエントリーでは主に以下のページを参考にしています。
■「中核的労働基準とILO」(連合)
■「国際労働基準」(ILO駐日事務所)

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2007年10月19日

中核的労働基準が守れない?

 労働においてもっとも基本的な、最低限守るべき基準として、「中核的労働基準」と呼ばれているものがあります。 具体的には以下の4分野です。

・結社の自由及び団体交渉権
・強制労働の禁止
・児童労働の実効的な廃止
・雇用及び職業における差別の排除

 国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言(新宣言)」(1998年採択)では、以上の4分野に対応する8条約を最優先条約にしています。

結社の自由及び団体交渉権
 87号(結社の自由及び団結権の保護に関する条約)
 98号(団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約)
強制労働の禁止
 29号(強制労働に関する条約)
 105号(強制労働の廃止に関する条約)
児童労働の実効的な廃止
 138号(就業の最低年齢に関する条約)
 182号(最悪の形態の児童労働の禁止及び廃絶のための即時行動に関する条約)
雇用及び職業における差別の排除
 100号(同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約)
 111号(雇用及び職業についての差別待遇に関する条約)

 CSRの世界でも当然守るべき最低限の項目として、よく引用されます。最近はCSR直接でサプライヤーに求める項目としてもよく登場します。

 そしてこの8条約は本当に基本的な基準と考えられているので、たとえ未批准であっても「誠意をもって、憲章に従って、これらの条約の対象となっている基本的権利に関する原則を尊重する義務を有する」ことになっています。そのぐらい大切な項目なのです。

 ところが日本は、このうち2条約を批准していません! 未批准なのは以下の2条約です。
・105号(強制労働の廃止に関する条約)
・111号(雇用及び職業についての差別待遇に関する条約)

 もちろんCSRを標榜する企業であればこんなことは当然当り前のはずです。というか、守れなかったら大問題です。ところが、この2つは日本国としては未批准なのです。

 なんでそのようなことが起きるのでしょうか? その背景についてはまた明日...

今日も読んでくださって、ありがとうございます。
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2007年05月19日

逃げ出したのは...

 数日前、こんなショッキングな記事が新聞に掲載されていました。
 1日13時間以上働き、残業手当は時給わずか350円−−。「外国人研修・技能実習制度」を利用し、青森県三沢市の縫製会社で働いていた中国人女性3人が、過酷な労働と低賃金に耐えられず逃げ出した。構造不況の繊維業界で働く彼女たちは、今や「現代版女工哀史」とまで言われている。ここ数年、同様なトラブルが全国各地で相次いでいる。
出典:「外国人研修:過酷な労働に耐えきれず逃走 中国人女性」 (毎日新聞、2007年 05月13日)

 350円というのはもちろん最低賃金をはるかに下回っています。13時間以上の労働というのも常軌を逸しています。そもそも、この「外国人研修・技能実習制度」は就労ではなく、研修なので、1日8時間以上の労働は認められていません。残業イコール違法なのです。

 しかしこうした例は、この記事で紹介された工場に限ったことではありません。
 全国47都道府県の労働局が05年、「外国人研修・技能実習制度」で来日した外国人労働者が働く866事業所を監督指導したところ、その8割にあたる694事業所で、長時間労働や基準外賃金の未払いなどの違反があったことが、毎日新聞の調査で分かった。開発途上国の人材育成を図る目的で政府が推進してきたこの制度を利用して来日している外国人は現在約16万人。研修、実習を名目にしながら、「格安の労働者」扱いをされている実態が浮かんだ。
出典:「外国人研修:8割の企業で、長時間労働や基準外賃金未払い 」(毎日新聞 、2007年05月13日)

 研修生だちは一体どんな約束で日本にやって来たのか。少なくとも、現実はその夢に遠く及ばぬものであったのでしょう。彼女たちのことは気の毒に、また申し訳なく思いますし、いくつも違反を重ねる工場経営者の責任は重いと思います。

 しかしその一方、単純にこうした工場経営者を責めればいいとも思えないのです。問題の工場の社長はこう本音を漏らしています。
74年、三沢市内の実家近くに小さな工場を構えた。80年代後半は売り上げが伸びたが、90年代に入り、中国などアジア諸国との低価格競争で、経営が行き詰まった。「中国の工賃が安いので、日本の工賃も下げざるを得ない。県の最低賃金額が上がれば、家族の給料はほとんどなくなる」。(中略)「切羽詰まって研修生を受け入れた。最低賃金以上を払うのなら、そもそも彼女たちを雇わなかった」

出典:「外国人研修:過酷な労働に耐えきれず逃走 中国人女性」 (毎日新聞、2007年 05月13

 もはや、最低賃金で労働者を雇っても、経営が成り立たない状況にまで追い込まれているのです。もちろんこの社長はやってはいけないことをしてしまったのですが、もし自分がその社長の立場だったら、なんとか会社を存続させようと、同じようなことをしていたかもしれません。いや、自分だったらそんなことは絶対にしない、と言い切れる自信はありません。時代が変わったと、簡単に言い切れる問題ではありません。

 大企業であれば、状況は変わります。国内工場での採算が厳しくなれば、海外に工場をシフトすることもできるでしょう。そして新天地で、もっと高収益を上げることができるかもしれません。日本よりはるかに安い賃金しか払わずとも、進出先の人々には歓迎され、もちろん法律に違反することもありません。

 しかし、すべての中小企業が同じことをできるわけではありません。さらには、一番困るのは地元の普通の人たちです。工場は移動できても、働き手は移動できません。仕事のなくなった地元に、自分たちだけ取り残されてしまうのです。

 なんでこのようなことになってしまったのでしょうか? もちろん一義的には経済のグローバル化と、それにともなくコスト競争の激化が原因でしょう。しかし、そうやってコストが下がった製品を、安い、安いと喜んで買ったのは誰でしょうか? 当の私たちが安い外国製品を好んで買い、さらに競争は激化する。そしてついには、日本で製造することは成り立たなくなってしまったのです。

 つまり、それが自分で自分の首を絞める、職を奪うことにつながるとは想像もせずに、そのことを加速させてしまったのではないでしょうか。日本から逃げ出したのは、中国からの研修生だけでなく、自分たちの仕事も逃げ出していたのです。

 だからと言って、途上国からの研修生を格安で働かせることが正当化できるとも思いません。日本国内で働くかぎり、日本国内の法律に従って、適正な賃金を支払う方向に改善されることでしょう。となれば、結局こうした労働集約的産業は日本では存続できないことになります。

 あるいは、国際競争力を復活させるためには、日本の労働者の賃金を大幅に切り下げざるを得ないかもしれません。しかし、ただでさえ二極化が進み、ワーキングプアが増えている中で、そのとき何が起こるのか。想像するだに恐ろしいものがあります。

 残念ながらこれがグローバリゼーションの行く末であり、既にその方向に向かってかなり加速度はついているように思います。方向修正をするためには、私たちは本当にどんな社会を望んでいるのか。そのためには、何が必要であるのか。真剣に考えて、発言し、行動する必要があります。

 ここでもまた、私たちの投票(=何を買うか、どんな企業を支持するか)が、私たちの未来を左右しています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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2007年05月15日

日雇い派遣は危険

 労働派遣はもともと専門的な職種のために用意された働き方です。通常であれば、「派遣」のような不安定な雇用形態は望ましくないはずですが、「契約本意に専門技能を活かして差別なく働ける」(中野、2006)というキャッチコピーで、20年ほど前に専門的職種についてのみ、認められたものでした。

 それが今や一般事務だけではなく、2003年からは製造や医療の分野にまで「派遣」が認められるようになりました。それでも、建設、警備、港湾運送などの危険な職場には認められていません。そうやって、労働者の安全が守られているはずなのですが...
 派遣で働く労働者の労働災害事故が急増していることが、東京都内の派遣業者を対象とした東京労働局の06年の調査で明らかになった。前年に比べ5割近い増加となっている。急増の背景には、日々派遣先が変わる「日雇い派遣」が増え、仕事に不慣れなことがあると見られる。派遣労働者の労災実態が明らかになるのは初めて。
(中略)
 同局では「正社員に比べ安全教育がおろそかになりがちで、注意を呼びかけたい」と話している。

 派遣労働者の労組「派遣ユニオン」の関根秀一郎書記長は「日々違う現場に派遣される日雇い派遣の増加と軌を一にするように労災の相談も急増している。解体片づけ現場でのクギの踏み抜きなどのけがは日常茶飯事で安全教育の欠落を感じていたが、数字的にも裏付けられた。派遣業者が安全衛生教育の脆弱(ぜいじゃく)さを何とかしない限り派遣労働者の被災は増え続けるだろう」と話している。
出典:「派遣労働者:労災急増 「日雇い」増え仕事不慣れ」(毎日新聞、2007年5月12日)

 そもそも職場(派遣先)が毎日変わる!んです。注意しろって言ったって、どこに注意したらいいかもわからないうちに事故にあって不思議ではありません。大体、事故がなくても、「日雇い派遣」なんてそんな不安定な雇用があっていいのでしょうか。

haken_kega.jpg出典:同上
 グラフを見ると、経験年数0ヶ月でケガをした派遣労働者の数は19人(4.7%)で、1ヶ月以上の場合より少なくなっています。のべ人数がわからないので単純には比較できませんが、本当は発生率で比較したら、経験日数とかなりきれいな逆相関が出てくるかもしれませんね。

 と考えてからハタと気付いたのですが、そもそも「日雇い派遣」できちんと労災申請されるのでしょうか。正規雇用ですら労災申請がなかなか出来ない雰囲気のところもあるやに聞きますが、日雇い派遣となったら...  実際にはこの統計の何倍もの事故が起きていてもおかしくありません。

 さらに、うがった見方をすれば、危険な労働を日雇い派遣にさせようという企業すらあるかもしれません。そもそもその日限りの「使い捨て」なのですから。

 本当に恐ろしい話ですが、そうやって直接の人件費を削減し、さらに本来であれば負担すべき社会的コストも外部化しているのではないでしょうか。外部化されたコストは一体、誰が負担するのでしょうか。

 短期的には、ケガをしたり、不安定な生活を強いられる派遣労働者の方々でしょう。また、そのコストを税金で負担することになれば、社会全体も負担していることになります。しかし、長期的に見れば、当の企業だって、自社内の安全衛生管理や技術継承が疎かになるのではないでしょうか。それで本当に「コスト削減」になっているんでしょうか。

 少なくとも、そんな無責任な企業も、そうした制度を認める社会も、とても持続可能とは思えません。日雇い派遣は、社会も危険にしているのではないでしょうか。

 どんどんおかしな社会になっていきそうで憂鬱ですが、それでもまだ方法はあります。どんな企業が、どんな雇用のし方をしているのか。それをきちんと見極めることです。正社員だけではなく、期間雇用や派遣社員など、それぞれどんな形で、どのように使っているかを見れば、逆にその企業の品格が浮かび上がってくるはずです。

《引用文献》
中野麻美(2006) 「労働ダンピング」

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2007年05月01日

もう一つのメーデー

 今日5月1日はメーデーです。東京は生憎小雨まじりのお天気でしたが、代々木公園では全労連が第78回中央メーデーを開き4万2000人(主催者発表)が参加するなど、全国各地で集会やデモ行進が行われました。

 全労連の坂内議長は「差別と貧困の格差社会をつくり出そうとする新自由主義が世界でも日本でも牙をむいている。労働者の統一闘争によって格差と貧困を解消させよう」と訴えたそうですが、今年は例年以上に切実感のある言葉だったのではないでしょうか。
出典:「『格差と貧困の解消を』 全労連がメーデーで訴え」(毎日新聞、2007年5月1日)
 
 そんな全国的なメーデーの前日の4月30日、派遣労働者やフリーターの若者らによる「自由と生存のメーデー'07」が新宿で開催されました。今年で4回目なのだそうですが、参加者は約420名、「非正社員を使い捨てにするな」「残業代を支払え」「まともに暮らせる賃金を」「派遣会社はピンハネするな」と、訴えの内容もさらに深刻です。
出典:「格差社会に『使い捨てやめろ』 フリーターらメーデー集会」(東京新聞、2007年4月30日)
参考:「メーデー:フリーターの若者たちが「自由と生存」求めデモ」(毎日新聞、2007年4月30日)
新宿“プレカリアートの反攻”デモ!」(岩本太郎ブログ(私の退屈な日常))

 このデモは、職場の労組には入れない、入らないフリーターのためのメーデーということで、地域労組「フリーター全般労組」が企画したものだそうです。

 やっと声を上げるようになったかと言うべきなのか、ついにここまで来たと言うべきなのか。なんとも複雑な思いです。実際、ここ一週間ぐらいのニュースだけでも、家賃を手当できずネットカフェを宿代わりにする若者が増えている中、企業はと言えば、東証一部上場などの大企業ですら、非正規労働者の賃金水準の上昇に懸念を抱く企業が半数に上っていたりと、気になるものが続きます。

 しかし、フリーターのメーデーは、なんで5月1日ではなく、4月30日だったのでしょうか。もしかして、フリーターは5月1日という「平日」には、仕事を休むことがむずかしい? というのは考え過ぎかなとも思うのですが...  まさか、そこまで深刻ではないことを祈るばかりです。

 働く意志のある人が定職につけない。毎日8時間働いても、暮らしていけない。そんな社会は不安定で、とても持続可能とは言えません。人件費で浮かしたコストは、必ず最後にまた社会の「コスト」として跳ね返って来るのです。雇用形態や非正規労働者の処遇は、日本企業いま一番取り組むべきCSRの課題であるように思えます。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。
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2007年04月27日

善戦か、苦戦か?

 厚生労働省が26日に発表した障害者の雇用状況(従業員5000人以上の民間企業や公的機関)によれば、障害者雇用率が最も高かったのはユニクロで7.42%。全産業平均は1.52%、5000人以上の企業の全平均は1.79%だったそうです。
 雇用率の上位企業は次の通り。〈2〉日本マクドナルド(2・94%)〈3〉衣料品専門店チェーン「しまむら」(2・83%)〈4〉すかいらーく(2・82%)〈5〉パナソニックエレクトロニックデバイス(2・79%)〈6〉ダイキン工業(2・63%)〈7〉日本たばこ産業(2・56%)〈8〉松下電工(2・44%)〈9〉東京急行電鉄(2・43%)〈10〉オムロン(2・40%)
出典:「障害者雇用、ユニクロ1位、2位マック、3位しまむら…厚労省まとめ」(読売新聞、2007年4月27日)

 ちなみに法定雇用率は、通常の企業では1.8%です。2005年の全国平均は1.46%でしたから、少しだけ上がっていますが、大企業ですら法定雇用率に達していないところが多いことがわかります。そう考えると、ユニクロは大善戦です。

 しかし、この数字を見て僕は「あれっ」と思いました。というのは、実はユニクロは少し前から障害者雇用に積極的になっており、かなりチャレンジングな目標を掲げたいたのではなかったかなと... そこで過去のサステナ・ラボの記事を検索してみると... ありました、これです。「それでもお荷物ですか?

 このエントリーを見てみると、2005年のユニクロの雇用率は7.66%。2006年より少し高かったのですね。そして、「一店舗一名以上の採用が私たちの目標ですが、現実的にはまだ七割から八割程度の店舗での採用に留まっているのが現状です。」という言葉も紹介されています。

 ユニクロのWebサイトで確認してみましょう。
CSR>従業員とともに>ダイバーシティの推進>障害者雇用 とメニューをたどると、そこにやはり「ユニクロでは全店舗で最低1人以上の障害者の方を雇用することに取り組んでいます。」という記載がありました。

 グラフを見ると、1.2%(2001)、6.3%(2002)、6.8%(2003)、7.5%(2004)、7.6%(2005)、7.3%(2006)となっており、やはり2005年をピークに2006年は少し減少してしまっています。もちろん7%代を維持しているというのは大善戦なのでしょうが、それでもだんだんとその値が飽和してきているように見えるのは、苦戦中ということなのでしょうか。この数字が限界ということでないように祈りたいですし、少なくとも当初の目標の「一店舗一人以上」はぜひ実現していただきたいと思います。

 ユニクロが障害者雇用に熱心なのは、「障害者を雇うのはその方が顧客サービスが向上するからだ」という理由あってのことです。最近ではアルバイトと契約社員2万人のうち5000人を正社員に登用すると発表していますが、これも人件費が現在より十数億円高くなってもそれを超えるメリットがあると考えているからです。
■「ユニクロ、バイトや契約社員5000人を正社員化」(NIKKEI NET 3月5日)

 つまり、どちらも、「社会的に要請されているから」ではなく、それが企業の強みになるからだと考えているところは注目に値すると思います。

 あとはユニクロの場合、海外でどうしているのか気になるところですが... 途上国のサプライヤーにおいても、日本と同様の配慮をするようにしているのか。それが出来るようになれば、本当に素晴らしいことですからね。

 で、早速同社のWebをいろいろ見てみると、ファーストリテイリングのWebの中で、以下のような説明があり、また実際のコードオブコンダクト(行動基準)の項目も示されていました。
ファーストリテイリングは、2004年1月に、お取引工場の行動基準である「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」を制定し、生産パートナーとのコンプライアンスの取り組みを開始しました。
出典:「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」(ファーストリテイリング)

 細かい内容が今一つ分からないのですが、少なくとも仕組み作りには着手しているようですね。対象範囲としても、「縫製工場以外の工場ならびにユニクロ以外の事業会社のお取引工場への導入については、順次対象とすべく検討を進めています。」ということで、拡大を考えているようです。

 同社のビジネスモデルについては、CSR的観点から疑問の声を聞くことも多いのですが、いろいろな点で本質的な改善が図られているのだとすれば、評価したいでですね。

 さまざまな背景の人たちをきちんと雇用し、それぞれの能力を活用すること。結局その方が企業にとっても、社会にとってもメリットが大きいことに気付く企業が出てきたということなのでしょうね。一つの側面で頑張っているから、イコールその企業のすべてが素晴らしいというわけではありませんが、こういう一つひとつの成果、実績をきちんと見ていきたいと思います。

今日も長文をお読みいただき、ありがとうございました。
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