物流の分野では、最近、トラックから鉄道へとモーダルシフトが進んでいます。もちろん輸送時のCO2の排出を減らすためです。それで貨物鉄道が再び元気になってきたという話も聞きます。
ところが、こうした鉄道復権は、どうやら貨物に限った話ではなさそうです。現在発売中の
「週刊東洋経済」4月19日号の特集は「鉄道革命 世界で大復権が始まった!」というものなのですが、そのタイトルの通り、世界中で鉄道の大復権が急速に進行しているというのです。
出典:東洋経済ホームページ
少し前までは、日本の新幹線や東京など大都市の地下鉄を除けば、どこでも鉄道は寂れた印象がありました。ところが最近は少しずつ印象が変わってきています。2月に訪れたイギリスではヒースロー空港とロンドンがヒースローエクスプレスでわずか15分ぐらいで結ばれていて快適でしたし、郊外への鉄道も随分近代的な車両になっていました。今月始めに訪れたドイツでは、フランクフルトからボンまで、空港から直接特急に乗ることができて便利でしたし、しかもその特急は国際列車でした。
ヨーロッパだけではありません。しばらく前までは渋滞で悪名高かったバンコクは、モノレールと地下鉄で随分と移動がスムーズになりました。中国の深センや上海でも真新しい地下鉄が走っています。香港の空港は距離的には遠くなりましたが、空港直行の列車に乗れば、混雑した市内のストレスとは無縁です。
そんなことを思い出しながらこの特集を読んだのですが、環境負荷を減らすためだけでなく、利便性も高まり、鉄道の復権はますます加速しそうな様子です。
特に印象的だったのは、ヨーロッパ内の都市間の移動が本格的に鉄道にシフトしつつあることです。ロンドンーパリ間は飛行機だと1時間15分ですが、ユーロスターでは2時間15分。しかし実際には市内中心部の駅から駅までで考えれば、トータルではむしろ鉄道の方が速くなっているのです。
そんなこともあって、運賃はユーロスターの方が高い(!)のにも関わらず、今や7割の人が鉄道で移動するのだそうです。これはスゴイことです。
環境配慮で先進的な大手銀行のHSBCでは、カーボンニュートラルを目指していることもあり、ロンドンーパリ、ブリュッセル間の
出張はすべて鉄道なのだそうです。 CO2の排出量が鉄道は飛行機の1/10だからです。日本でも、「東京ー大阪の出張はすべて新幹線、飛行機は禁止」という企業が出てきても良さそうですが...
もちろん環境配慮だけでお客さんを動かすことは出来ませんので、高速化、快適化を求めて、ヨーロッパの鉄道はどこも大改革を進めているようです。そんな中で思わずうなってしまったのが、スイスの取り組みです。
主要駅間の所用時間を、30分の倍数になるように高速化し、各駅を発車するのは毎00分と毎30分の少し後、到着するのは少し前にしたのです。このことにより、いつ、どこでも、ほとんど待たずにスムーズに乗り換えられるのです! ダイヤを工夫することによって、主要駅がハブ空港のように機能するのです。
目から鱗の、見事な発想の転換ですね。たぶんこの方式を考えた人は、どうしたら便利に利用できるのか、そのためには何が必要なのかと、バックキャスティングで考えたのでしょうね。ただ速くするというのではなく、より便利にするということを目標に考えられているのです。
もちろん日本の新幹線も、ますますその技術に磨きをかけ各国への進出を図っていますし、また日本でもようやくLRTによる都市交通の革新が起きつつあります。環境にも、人にも優しい鉄道が、長距離でも、都市交通でも、再び主役になる日は遠くなさそうです。
そして何より、バリバリの経済誌が、これだけ大きく鉄道復権を特集したことに、時代の変化を強く感じさせられました。
というわけで、この特集はオススメです。近未来の交通システムを予見させてくれます。
今日も読んでくださって、ありがとうございます。
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posted by あだなお。 at 23:56| 東京 ☀|
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