出典:"The Great Food Crisis of 2011" (Earth Policy Institute, Plan B Update, 2011年1月14日)
これを読むと、いま起きつつある食料危機がきわめて構造的なものであることがよくわかります。つまり、食料(穀物)の需要は増大を続けるのに対し、供給はむしろ減少気味であるので、両者のギャップは拡大し、これからこの危機的状況はますます厳しくなるからです。
具体的に需要を押し上げる要因は以下の通りです。
・人口増加
・富裕層の増大(肉の消費の増加)
・バイオ燃料の使用増加
一方、供給は以下の要因で制限ないし減少を始めています。
・土壌流失
・帯水層の枯渇
・耕地の農地以外への転用
・潅漑水の都市への転用
・農業の進歩による増収の限界
・気候変動(熱波、氷河融解)
いずれもこれまでも言われてきたものばかりですが、こうして並べてみると改めて、これまでのトレンドがこれからも変わりようがない、いやむしろ強くなるということがよくわかります。
興味深い数字をいくつか上げておくと、世界の人口速度は1970年代の毎年2%というピークからは減じており、1.2%に落ちています。しかしそれでも今なお年間8000万人、つまり、21万9千人の食いぶちが毎日増えているのです。毎日21万9千皿の食事を増やしていかなければならないと想像すると、クラクラしてきませんか?
また農業技術の進歩について言えば、日本は農業生産性が高い国の一つですが、日本のコメの単位面積あたりの収量は、過去14年増えていない、つまりもう限界に達しているということです。もちろん途上国はまだ改善の余地はあります。しかし、日本のような農業は、大量のエネルギーと水を注ぎ込んだ集約的なものであり、エネルギー収支的にはむしろ悪いし、持続可能ではないことも忘れてはいけないでしょう。
それ以外にも、 2008年の食料危機がそうであったように、世界的に余ったお金が投機的に穀物市場に流れ込んでくるリスクを指摘をする方もいます。投機が高値を作り、さらにそれが投機マネーを呼び込むという悪循環です。バブルがはじけて痛い目にあう投機家は自己責任でしょうが、それとはまったく無関係の普通の人がその影響で食料を買えなくなってしまうというのは大問題です。
以上10の要因を考えれば、食料価格の高騰はけっして一時的なものではなく、もちろん多少のバラツキはあるにしても、長期的には確実に続いていくのがトレンドであることがわかります。
エジプトの政治不安もあり、石油価格も再び急上昇し始めました。食料価格にはますます注意を払う必要がありそうです。
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