もう一週間も前になってしまいましたが、セブンイレブンが販売期限間近な弁当の「見切り販売(値引販売)」をした加盟店に値引をしないように強制していたことについて、公正取引委員会が
独占禁止法違反(不公正な取引方法)で
排除命令を出しました。
しかし、命令は、見切り販売しないで捨てることになる弁当などが、1店舗あたり年間約530万円(調査した約1100店の平均額)に達している現状も指摘。今後、加盟店側が値引き販売できるようにするための具体的な方法を示した資料(マニュアル)を作ることを求めるなど、加盟店側に立った認定をした。
(中略)
公取委の命令によると、同社は加盟店に対して、弁当やおにぎり、総菜など鮮度が低下しやすい「デイリー品」を本部が推奨する価格で販売するよう指導。デイリー品の廃棄による損失を減らすため販売期限の迫った商品を値引きする「見切り販売」をした加盟34店に対し、本部側の担当者らが「契約違反だ」「このままでは契約の更新ができない」などと言い、見切り販売を制限したとされる。
出典:「
セブンイレブンに排除命令 公取委、値引き制限「不当」」(朝日新聞、2009年6月23日)
その後、セブンイレブン側は「売れ残った弁当やおにぎりなどを廃棄する場合、現在は加盟店の全額負担としている仕入れ原価のうち、15%を本部が負担すると発表した。七月一日から実施する。」(「
廃棄損の15%本部負担 セブン−イレブン 弁当類値下げ抑制」東京新聞、2009年6月24日)そうです。この程度で根本的な解決になるとは考えにくいのですが、同時に「加盟店が値引きする「自由」を認める一方、売れ残り廃棄で加盟店がかぶる損を減らすことにより、見切り値引きの急拡大を防ぐ狙い」(「
セブンイレブン、値引き販売容認へ 廃棄分15%負担」朝日新聞、2009年6月24日)との報道もあります。
主張はセブンイレブン本社側、加盟店側で大きく対立していますが、傍から見ていると、やはり加盟店側の言っていることに分があるように思えます。CSR的な視点からしても、売り残しを廃棄することは環境負荷も高いですし、「価格決定権は店舗にある」という契約内容に反して見切り販売を制限・禁止することは公正な取引上も問題です。本社側の、見切り販売は過当競争をもたらし、結果的に加盟店の利益を奪うという主張は、それこそ発注精度を上げれば防げる話で、あまり説得力があるように思えません。(なお、セブンイレブン側の詳しい見解は「
公正取引委員会からの排除命令に関する弊社見解について」PDF172KB、セブンイレブン・ジャパンをご覧ください)
日経ビジネスオンラインの「
セブンイレブン、「見切り販売制限」の深層」は、そんな双方の思惑や本音を紹介していて興味深かったのですが、僕が一番そうだろうなと思ったのは、中国地方のある店舗のオーナーの言葉として紹介されていた、次のようなものです。
「誰も安売り合戦なんてしたいとは思わない。でも、何でどんどん捨てるシステムになっているんだ、とずっと心に引っかかっていた。見切り販売を強行しているオーナーは、利益なんて、二の次、三の次。捨てることが、嫌なんです」
(出典:日経ビジネスオンライン、ニュースを斬る、2009年6月25日)
食べ物を捨てる、無駄にする。これは本当にモチベーションを下げると思います。さっきまで人が口に入れるためのものとして売っていたものを、今だってこの瞬間ならまだ食べられるものを、何も手をつけないままにゴミ箱に放り込んでいく。毎日そんなことをしていたら、気が滅入らない方がおかしいぐらいです。
見切り販売をすればその無駄が大幅に減らせる。お客さんも喜ぶし、ゴミも減る。自分たちの利益だって増える。なのに、本部はそれを許さない。しかもその理由は、廃棄した方が本部は「儲かる」からです。これで納得がいかないのは、当然でしょう。
セブンイレブン・ジャパンのWebの「社会・環境へのとりくみ」には、「
「廃棄物」の削減」という項目があるのですが、これを読んでも実際にどの程度の「廃棄物」が発生しているのかよくわかりません。1店舗から1日あたりでる廃棄物は平均70.0kgで、うち
生ごみが14.8kgとありますが(出典:「
店舗の廃棄物を回収・一括処理する『エコ物流』」)、
これがそうなんでしょうかね? ちなみに、年間1店舗あたりの廃棄商品の原価はなんと
530万円!だそうです。
少し話が横道にそれますが、1店舗あたり平均530万円ということは、1万1200店舗の加盟店全体では年間593億円の廃棄。その分を加盟店が負担し、本店は潤っている。ということは、セブンアンドアイのコンビニエンスストア事業の
営業利益2133億円のうち3割弱がここから生じている!(実際にはロイヤルティ率がありますので、ここまでは高くないはずですが...)という指摘をしているブログもありました。
出典:「
530万円の衝撃 〜公取委、セブンイレブンに排除措置命令」(財務アナリストの雑感、シーズン3)
話が長くなって来ましたので、そろそろまとめたいと思います(^^;)。どちらがいいのか悪いのかという話は置いといて、やはり一番の問題は、
本部と加盟店の利益が相反していることでしょう。両者は「対等な立場で共同事業を営む“有機的組織体”」といいながら、実際の利益配分の構造がそうはなっていないことが、そもそもの問題のように思えます。
環境行動の中でも省エネがスムーズに進んだのは、エネルギーを節約することが、コストを削減するというメリットと同じ方向を向いていたからです。逆に、いくら環境に良いことがわかっていても、自分の懐が痛む方向には、人も企業も簡単には動きません。
期限切れの「廃棄物」を削減することが、加盟店と本部の双方にとってメリットがあるような仕組みに変更しないことには、おそらく抜本的な解決にはならないのではないでしょうか。
おそらくそのためには、「利益を最大化する」という方針は見直さなくてはいけないかもしれません。「
ロス(=環境負荷)を最小化する」という方針のもと、そこから得られる利益をどう公平に分配するかを考えるのです。
また私たち消費者も、「コンビニには、いつでも、必ず品物がある」ことを期待することを見直した方がいいかもしれません。「いつでも欲しいものが必ずある」ようにし、機会損失を最小にすることが、大きな無駄を生むという構図もあるはずです。
そう考えるとこれは単にコンビニの加盟店と本部の問題というよりは、
何を価値判断の軸にするか(利益の最大化か、負荷の最小化か)、
どこまで不便を許容するかという、私たち自身のあり方にも関わっているように思います。
多少不便かもしれないけれど、多少売上は減るかもしれないけれど、食べ物を無駄にすることなく、利益率はそう悪くない。そちらの方がむしろフツーなのではないでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
読んでくださった印にクリックをお願いします!
読んだら忘れずに、Click me!
posted by あだなお。 at 23:55| 東京 ☀|
Comment(0)
|
TrackBack(0)
|
経済
|
|