昨日に続き、マイケル・ムーアの新作「
シッコ(Sicko)」についてです。それほどストーリー性の強い映画ではありませんが、ネタバレが嫌な方は、映画をご覧になってからお読みください。
アメリカの医療費が高いという話は以前からよく聞きます。盲腸で手術をして一週間入院すると100万円とか。でも、最近はそんなに甘くないようです(^^;) ちょっとした手術で、すぐに数百万円の請求が来るのだとか...
これでは無保険ではとてもお医者さんにはかかれませんよね。僕はいつも海外ではクレジットカード付帯の保険で済ませていますが、それでも無理そうです。200万円ぐらいの保険ではすぐにお手上げです。これからアメリカに出かけるときには、必ず多額の医療保険に入ってからにしようと決心しました。
こんな状況にも関わらず、アメリカには医療保険に入っていない人が4700万人!もいます。なぜかと言えば、アメリカには国民皆保険の公的医療保険制度はないからです。
では、お金を払えばだれでも民間の保険に入れるかと言えば、それも違います。標準よりちょっと太めだったり、逆に痩せていても保険には入れないのです。既往症ももちろんダメ。え、一体誰が入れるかって? それはもちろん、健康体の人だけです。
毎日せっせとジムに通って、あわよく医療保険に入れたとしましょう。しかし、それでも安心するのは早いのです。実際に保険が適用されるかどうかは、厳しい審査があるのです。
笑うしかなかったのは、救急車の利用料が支払われるのは「
事前に承認を得た場合のみ」というルール。事故にあっても、保険会社に電話をしてOKをもらうまでは、おちおち気絶もできません。救急車が有料なだけでも、日本だったら十分に違和感がありますが....
一体いつから、なんでこんなことになってしまったのか? マイケル・ムーアもそのことを追求し、70年代のニクソン政権が、民間の保険会社が保険を拒否する割合を高めることによって利益率をアップする仕組みに目をつけたところが発端だったらしいと説明します。
しかしおそらくは、なんの制限もなく競争する民間企業に医療保険を任せたときに、すでにその結果は見えていたと言うべきでしょう。
ひるがえって、隣国のカナダ、兄貴分の英国、あまり仲はよろしくないフランス、そしてその存在すら認めたくないキューバではどうでしょう? これらの国に共通するのは、医療費がタダということ。もちろんいろいろと問題はあるでしょうし、財源で苦労もしているようですが、これまで医療費はタダを貫いているのです。
イギリスの病院で「医療費は?」「いくらなの?」と聞いてまわるマイケル・ムーアは、「
そんな質問をするのはあんたが初めてだ」と笑い者にすらされます。そのぐらい、イギリスでは医療費がタダなのは当然のことなのです。病院に来た患者に、病院が交通費を「
払っている」のには、さすがに僕もびっくりしましたが...
あるいはフランス。家のローン以外に何に出費がかさむかとマイケル・ムーアに聞かれたフツーのフランス人女性は「お魚」(^^;)、彼女の夫は「バカンス」。だんぜん優雅です。こんなフランス人や、フランスに住むアメリカ人と話をするうちにマイケル・ムーアが気付いたことは、「
この国には絶望がない」ということです。
そう、これは結局、自分たちがどんな社会を目指すかです。無制限な自由競争を認め、勝者にすべてを独占させるのか。それとも、困った人をお互いに助け合うことを良しとするのか。もちろんアメリカ人の多くは、マイケル・ムーアが言うように、困った隣人に手を差し伸べる優しい人たちです。だから、911の後にも、自らの身体を顧みず、救出作業や普及作業にボランティアとして参加したのです。
しかし、今のアメリカでは、そうした心ある人が、
正直な人が、馬鹿を見ているのです。保険会社で働いていた人も、良心の呵責にさいなまれます。たとえそれが仕事であっても、いや仕事であればこそ、目の前の困っている人を見捨てなければいけないことなど、耐え難いことです。
日本の「民営化」や「自由化」の多くは、アメリカ政府の要求によるものです。アメリカは日本の公共制度の堅い蓋をこじ開けようとしています。これまでの日本のやり方がすべていいとはいいませんが、少なくともなんでもかんでも自由にというのがベストなやり方とは言えないのは確かでしょう。
たとえ自由化、すべて民営化という極端なことはないにしても、今の制度をどう改革したらいいのか? イギリスもカナダも財源で苦しんでいるとは言いますが、それでもいろいろ学べることはありそうです。
つくづく思うのは、
ビジネスを金儲けの道具にしてはいけないということです。ビジネスはお金を儲けるためのものではなく、社会に役立つためのもの。儲けはその結果として、ついてくるものだったはずです。役に立つモノやサービスを提供することこそビジネスの目的です。金儲けが目的になった瞬間、ビジネスはどんどん歪んでいきます。
「そんなのはきれいごとだ」という方には、マイケル・ムーアの描くアメリカとフランスの姿を見比べてください。そして、どちらの社会に住みたいか、考えてみるといいでしょう。
選ぶのも、行動を起こすのも、あなたです。マイケル・ムーアは、この映画では何も具体的に解決していません。それは、画面の中でマイケル・ムーアが悪者をやっつけることで溜飲を下げるのではなく、観る人が「
もうたくさんだ」と声を上げ、全員で立ち向かうことを期待しているだからそうです。
持続可能な社会やCSRを考えるためのヒントも満載。本当にオススメの映画です。ぜひご覧になってください。僕ももう一度観ます。
最後までお読みいただいて、ありがとうございます。
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posted by あだなお。 at 23:59| 東京 ☀|
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