2012年01月22日

世界最悪の企業を巡る仁義なき戦い

 2月に開催される世界経済フォーラムのダボス会議。これに対抗して毎年グリーンピースなどのNGOが行っているのが、The Public Eye Awardsです。いって見れば「世界最悪の企業(The Worst Company)」を選んで「表彰」する制度ですが、今年はその最終候補のリストに、我らが(?)東電がエントリーしています。



 ノミネートされた理由には、「TEPCOは日本最大のエネルギー会社であるにも関わらず、コスト削減のために原発の構造的安全を著しく軽視してきた」ことが上げられています。

 当初は2位だったのですが、韓国のサムスンを抜いて堂々と1位になりました。が、アマゾンの熱帯林を破壊してダム建設をしているVale社が急速に追い上げており、このまま首位を守りきれるかどうか、注目されます。

 これに対して位、Finance GreenWatchは、Vale社が先週になって一気に票を集めているのは不自然であり、「同賞を主催しているPublic eye Awardの事務局は、「マニピュレーション(世論操作)があるかどうかについて調査に入った」ことを認めている。」と報じ、東電に投票するように日本語と英語で呼びかけています。

 ちなみにこのThe Public Eye Awards、どういう企業がどういう理由でノミネートされているか、受賞をしているかを見ると、世界では何が問題とされているかがわかって非常に興味深いと思います。日本企業のCSR関係者は必見です。

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2010年07月26日

投資先にもご注意を!

 しばらく前にグリンピースがネスレに、使用しているパームオイルのことでネガティブ・キャンペーンを行ない、その結果、ネスレはインドネシアのシナール・マス・グループからの調達は止め、2015年までに持続可能な認証パームオイルを100%使用することを約束したことなどはご紹介しました。
《関連記事》
■「NGOを舐めてはいけません」(2010年5月31日)

 そしてそのグリンピースが、今度は英国の大手銀行、HSBCも動かしました。HSBCはもともと環境や社会面での配慮に熱心であり、森林の林産物セクターについての独自の厳しい投融資ポリシーを持っているほどです。しかし、シナール・マス傘下のプランテーション会社ゴールデン・アグリ・リソーシズ社に投資していたのです。これは同社のポリシーが、アセット・マネジメント・ファンドに対しては適用にならないという"穴"があったからです。

 グリンピースの指摘を受け、また1万人が抗議のメールが送られてきたこともあり、HSBCはまずゴールデン・アグリ・リソーシズ社の株式をすべて売却し、またポリシーの適用について9月に見直す予定といいます。

 グリンピースは現在、UBSやクレディ・スイスにも、ゴールデン・アグリ・リソーシズ社の株式を売却するように要請しているということです。
出典:"HSBC pulls investment from Sinar Mas after Greenpeace protest"(Guraridan、2010年7月8日)

 実は日本の銀行や機関投資家にも、オイルパーム農園に投融資を行っているところがかなりの数があるといいます。以前、インドネシアのNGOの方からリストを見せてもらったことがあるのですが、大手銀行はもちろん、地方銀行の名前までたくさん並んでいてびっくしたことがあります。

 僕の手元には数年前の古いデータしかありませんので、今その銀行名はここでは出しません。ただ、COP10に向けて、海外のNGOが日本企業を"標的"にする可能性も十分あると思います。「そんなつもりはなかった」では済まされませんので、自社のお金がどこに投融資されているのか、きちんと確認してみる必要性がありそうです。

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2010年07月24日

本気でグローバル

 このところCSR業界(?)で話題のニュースと言えば、ファーストリテイリング、つまりユニクロがバングラディッシュで10月からソーシャルビジネスを行うことを決めたというものです。しかも合弁先はかのグラミン銀行。これはたしかにアッと驚かされます。

 ファーストリテイリングが、いや柳井さんがどう考えたのか聞いてみたいところですが、会見で述べたという「(バングラデシュは)将来大きな市場になる可能性がある。生活がよくなり、経済的に自立できる一助になれば、ビジネスとしてもやりがいがある」というセリフはかなりのところ本音だと思います。
出典:「ファストリ バングラデシュに衣料合 弁設立へ 脱貧困貢献・市場成長両にらみ」(サンケイビズ、2010年7月14日)

 そして何より興味深いのは、おそらくはビジネスで勝つことになによりも真剣なファーストリテイリングが、バングラディッシュという途上国で、ソーシャルビジネスを行うことに目をつけ、動き始めたということです。

 しばらく前からBOP(Bottom of the Pyramid=貧困層)を対象としたBOPビジネスが、CSRとビジネスを両立させるものとして喧伝されながら、日本企業のほとんどは、有効なモデルを実行できずにいます。そこに、CSRとあまり騒ぐことはないファーストリテイリングがやって来て、なるほどと思うようなモデルをさっと登場させたのです。多くの企業が「そう来たか!」と唸ったのではないでしょうか。

 僕もこのニュースを知ったときにはそう思いました。そして次の瞬間、ファーストリテイリングはグローバルなビジネス展開に本気なのだなと感じました。

 というのも、メルマガに書いているエッセーで、ちょうどユニクロのグローバルな人事戦略について紹介した直後のことだったからです。
《参考リンク》
■「本当のグローバル化が始まった(2)」(サステナブルCSRレター 84号)

 多くの日本企業が、グローバルにビジネスをしながら、意識はまったくドメスティックであるのに対して、「ファーストリテイリングは、2012年3月から社内の公用語を英語にし、外国人の採用を順次拡大し、幹部社員の賃金体系も世界で統一する」など、ビジネスの舞台はグローバル(地球全体)だと実質的に宣言したからです。

 CSRの課題は、地域ごとに異なります。CSRとは、企業の力を使って、社会の課題を解決する活動だからです。ですから、CSR「=企業の社会に対する責任」を果たすために、それぞれの社会の課題を理解し、それを解決する自分たちなりのやり方を考え、実行する必要があります。しかも、社会はものすごい勢いで変化しています。課題も、やり方も、どんどん変化させる必要があります。

 ファーストリテイリングは、そのことをしっかり理解しているのだと思います。だから常にアンテナを伸ばし、そのとき、その場所で必要とされることに挑戦しようとしているのでしょう。

 と思って同社のWebを見てみたら、「世界を良い方向に変えていくために、ユニクロができること   ユニクロでは、衣料の製造・販売だけでなく、企業としての社会的責任を果たすために、地域に根ざしたCSR活動をおこなっています。世界を良い方向に変えていくために。ユニクロのCSR活動はグローバルに展開していきます。」とありました!(CSR - UNIQLO) なるほど、よーくわかっていらっしゃる!

 サスラボでは、以前、同社の障害者雇用率が非常に高いことを紹介したことがあります。しかもユニクロはそれをCSRとして行っているのではありません。「きれい事を言う気はない。障害者を雇うのはその方が顧客サービスが向上するからだ」と言い切っています。最初は法定雇用率を達成するために始まったそうですが、その意外な効用に気付くと、今度はそのことを積極的に活かすようにしたのです。こういうレスポンスの良さが、同社の成功の要因なのかもしれませんね。
■「それでも お荷物ですか?」(サステナ・ラボ)

 バングラディッシュでの新ビジネスは、簡単ではないかもしれません。しかしもしそこで多少の失敗はしても、同社であれば、きっとそれを成功のための大きなヒントにするのではないでしょうか。ファーストリテイリングからは今後ますます目が放せません。

 それにしても、今までのやり方、今までの考え方に固執している企業は... 一体どうなってしまうのでしょうね? そちらはかなり心配です(^^;)

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2009年11月23日

マニラご報告

 昨日マニラから帰国したのですが、「着きました」以来、ブログの更新が途絶えてしまいすみませんでした。前半は忙しくて書けなかったのですが、後半は実はちょっと体調を崩してしまい(^^;)、書けませんでした。流行のインフルエンザにかかったわけではないのですが、かなりキツイ食あたりになり、参りました...(お返事出来ていないメールも溜まっていてゴメンナサイ)

 ただ幸いなことにメインの発表は初日でしたし、最終日に急遽また別の出番が出来たのですが、こちらも気力で乗り切りました(笑) 1時間半ほど気力で乗り切り、そのまま自分の部屋に戻ってバタンキューでしたが...

 そんなわけで、当初予定したよりは少なくなってしまいましたが、それでもいろいろな講演を聞いて、友人と再会したり、新しく知り合った人もできたり、やっぱりこういう会議に行くのはいいですね。最終日も、フィリピン、タイ、マレーシアと、いろいろな国の友人に助けられて、体調は最悪でしたが、密度の濃い議論が出来たことに感謝しています。

 さて、今年のAFCSRのメインテーマは、"SUSTAINING CSR IN DIFFICULT TIMES: How business can benefit and why it still makes business sense"でした。実際、どこの国もまだ今回の世界不況の影響で大変で、AFCSRの出席者も500名弱と、前回、前々回に比べて減っています。それでも、参加している方々は、「だからこそ今CSRをきちんとするのだ」と前向きでした。

 一方、日本からの参加者はいつも少ないのですが、今回は僕を含めて3人! しかも、事業会社からの参加者はゼロでした。実際いくつかお誘いした企業の方からは、「今の業績では海外出張はとても出来ない状況で...」という元気のないお返事ばかりだったのですが、こんなことでは「不況になったらCSRは縮小します」と言っているようなものです。ただでさえ「顔の見えない」国なのに、これではますます顔が見えなくなるだけではなく、間違ったメッセージを発してしまっているということに気付いて欲しいと思います。

 日本では「不言実行」とか、「陰徳の美」と言われますが、国際的にはそのような考えは通じません。というか、やっていることがまったく見えないし、伝わらないのです。「良いものを作れば売れる」という方も多いのですが、そのモノが売れないとき、あるいは差別化できないとき、売るためのポイントは企業の姿勢とそれに対する信頼なのです。業績が悪い今だからこそ、CSRをしっかりと続け、地域に貢献し、自分たちの姿勢をきちんと伝えることが必要なのです。それとまったく逆の行動をしていては、いくら自分たちではそのつもりではなくても、「形だけのCSR」とか、「結局あの会社は何もやってない」と思われてもしかたないでしょう。実際、そういう暗黙のメッセージを発しているのですから。

 そんなわけで、「大丈夫なのか、日本?」と例年以上に心配になったのですが... 来年のAFCSRは北京か上海で開催される予定とのこと。中国からもAFCSRへの参加者は決して多いわけではないのですが、やはり中国にはみんなが興味があるのです。本当は今年、北京で開催したかったそうなのですが、この不況と北京の物価の高さでぽしゃり、AIMの本拠地マニラでの開催となったのです。ですから来年は北京でなくても、上海でぜひ開催したいというわけです。残念ながら日本でという話は、もちろんどこからも出てきません。

 そんなことを思い出していたらまた頭が痛くなってきましたので(^^;)、今日はこの辺で...

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2009年11月07日

透明性が武器

 昨日行われたサステナビリティ日本フォーラムのシンポジウムは、「中国の環境問題  〜日本企業と中国NGOの協働〜」がテーマでした。第一部で基調講演をした、公衆と環境研究センター代表の馬軍さんの話が非常に示唆に富むものでした。(Twitterで中継もしてみました)

 「公衆と環境研究センター」(Institute of Public & Environmental Affairs、以下IPE)は、2006年に中国の「中国水汚染地図」を作り、インターネットで公開したことで有名です。さらに2007年には、「中国大気汚染地図」も公開しています。
参考:「「中国大気汚染地図」に4千社以上がリストアップ」(「人民網日本語版」2007年12月13日)

 中国でそんなことが出来るのかと思われるかもしれませんが、それが出来たヒミツは.. IPEはすべて政府が公表したデータを使用しているのです。ですから政府はもちろん、企業としても反論しようがないのです。

 環境基準に違反し、大気汚染の原因になっている企業は、各地方の政府が発表しています。しかしそれは必ずしも使い勝手が良いものでもありませんし、また各地方だけのものです。そこでIPEは中国全土のそうしたデータを一つにまとめ、検索等が容易にできるよう、使い勝手の良いインターフェースを整備したのです。「中国大気汚染地図」では、英語での検索と表示もできるようになっています。

 もちろん、それでもIPEに対して直接、あるいは地方政府を通じて圧力をかけようとする企業もいるでしょう。そのようなことはないのかと馬さんに聞いてみたら、やはりあるそうです。ではなぜそうした企業の圧力に屈さずに済むのかとお聞きしてみたら、この活動を20のNGOで共同でやっているところがポイントだと教えてくれました。IPE一つだけであれば圧力をかけることは可能かもしれないが、20のNGOに圧力をかけ、事実をねじ曲げることは難しいからです。

 中国のような政治体制下で活動するのですから、政府を敵に廻してうまくいくわけはありません。政府のお墨付きのデータを使い、政府の意向と方向を合わせ、そしてそれを徹底的にオープンにすることで、うまーく目的を達成しているのです。非常に戦略的ですね。

 また馬さんは、「インターネットは、中国のような成長途上の巨大な国にとっては福音である」ともおっしゃっていました。「もしインターネットが使えなければ、同じをことするのに莫大な費用がかかり、事実上実行できなかった」からです。

 IPEのデータベースは、衛星画像などともリンクできるようになっており、最新の技術を非常にうまく活用しているのです。

 ただもちろん、実際にはこうした活動を進める上では様々な困難があったはずです。IPEが成功した秘訣は、一番重要なのは何かとお聞きすると、馬さんは間髪をいれず「諦めないことだ」と答えてくれました。そして、さらに「透明性がもっとも重要なツールである」と付け加えていました。中国だけでなく、どこで何をする場合でも、参考になるのではないでしょうか。

 ちなみにこのシンポジウムのパネリストの一人は、パナソニック・チャイナの環境分野の責任者である荒井喜章さんでした。実はパナソニック・チャイナは、従業員の単純ミスによって排水基準を達成できない事故を起こしており、IPEの水汚染地図にも社名が掲載されてしまいました。しかし、その工場の方々の真摯な努力の結果、問題が完全に解決された企業として、ブラックリストから名前を削除された最初の企業にもなりました。

 IPEの活動も素晴らしいものですが、ミスとはいえ起こしてしまった問題を、同じような問題が再発しないように徹底的に対処した日本企業の行動も素晴らしいと思います。ただ残念なのは、IPEのブラックリストにはまだブリヂストン、デンソー、ダイキン、ホンダ、味の素など、多くの日本企業の名前が掲載されていることです。(もちろん、欧米や中国企業も多数あります) そして中には、多くの工場で違反をしていたり、地域住民の再三の抗議に対しても無反応な会社もあるといいます。コンプライアンスという点では勿論ですが、自社のブランド、そして日本の評判を守るという意味からも、ぜひ早急に根本的な対応してくださることを期待したいと思います。

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2009年11月03日

どこに行った、CSR?

 最近、以前よりCSRという言葉を聞かなくなったような気がします。仕事が生物多様性に関わるものが増えているせいなのかという気もしたのですが、CSRで検索してひっかかるニュースも減っているようです。

 CSRという言葉自体は広まっているようにも思うのですが、その一方、「CSR=社会貢献的な活動」と捉えているような発言もよく耳にします。例えば、「それはCSRでやればいいでしょう...」云々。なんか違うんですけど、一体どうしちゃったんでしょう? もちろんCSRがしっかりと根付いている会社もそれなりにあるのですが、やっぱりCSRはブームだったのかなぁ、とちょっと悲しい思いもしてきます。

 念のため確認しておくと、今流の、あるいは欧州でいうところのCSRとは、持続可能な社会を作るための企業の自発的な活動のことです。決して外から押し付けられた、一律の義務や社会貢献のことではありません。自分たちの社会が抱える様々な問題に対して、自社の力をいかに生かすか。お金だけではなく、技術やノウハウ、人材、その経験や知識、そして世界に広がるネットワークなど、自社が持つあらゆる資産を活用し、社会を持続可能にシフトさせていく。そのような企業の特性を活かした取り組みが、CSRです。

 ですからresponsibilityも、単なる義務ではなく、社会が直面する様々な困難な問題に対応(response)する能力(ability)のことだと思い、僕は自分の会社にResponse Abilityという名前を付けています。企業がその能力を最大限に発揮し、社会と共に持続可能であり続けることをお手伝いするのが目的だからです。

 また、responsibilityには「責任」以外に「信頼性(度)」という意味もあります。response abilityのある企業が信頼に足る企業であると思いますが、CSRとは社会から信頼を得る企業であるための活動という言い方もできると思います。

 さて、前置きが長くなってしまいましたが... なんでこんな話しをしたかと言うと、CSRどころか、会社の信頼性をわざと失わせているとしか思えない企業が最近どうも目につくように気がするからです。あるいは、社会的責任をまったく果たしていない企業と言ってもいいと思います。

 例えば、福知山線列車事故で106名の死者を出しながら、原因究明の過程において組織的な不正を働いたJR西日本。あるいは、地元住民との約束を反古にして、だまし討ちのようなことをしながら無理やり上関原発の建設を進めようとする中国電力。いずれも、いかにトップが立派なことを言おうと、CSRの取り組みをしていると喧伝したところで、まったく説得力を持ちません。自らの行動が、信頼を壊しているのです。

 こうした際にしばしば、企業の責任者は弁明をしたり、それは誤解だとおっしゃったりします。もちろん中にはそういう場合もあるかもしれません。しかし、そんなことで信頼が維持できるわけはありません。信頼は、相手がするものだからです。企業がいかに自らの視点からの説明をしたところで、それが相手に伝わり、相手もそのように感じてくれないことには意味はないのです。

 CSRの本当の意味が理解され、また企業内に浸透していれば、こんなことは決して起きないと思います。やはり社会との関係性を再び忘れてしまった企業が増えているということなのでしょうか?

 鳩山政権は、これまでの施策の見直しを行い、様々な無駄を省き、透明性を高め、必要なところにお金がまわるように大掃除をしています。大変に素晴らしいことです。こうした良い緊張感は、常に必要です。

 社会全体を再点検、再構築するこのような流れは、必ず企業にも及ぶはずです。そのときに、今までのような不透明なやり方、自ら信頼を損なうようなやり方をしている企業は、決して生き残れないでしょう。

 信頼性、あるいは社会の要求に応えることこそ、企業の存在を維持する条件であることを、CSRの本質が忘れられそうになってきた今こそ、再度確認するときだと思います。

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2009年07月27日

持続可能性への一里塚

 話題にしようと思いながらもう10日も経ってしまったのですが、やはりこれは取り上げる必要があるでしょう。

 7月16日にウォルマートが開いた「ウォルマート・サステナビリティ・マイルストーン・ミーティング」において、CEOのマイク・デューク氏は、ウォルマートで販売する商品に「持続可能性インデックス(指標)」を導入することを発表したのです。

 世界最大のスーパーマーケットチェーンであるウォルマートのサプライヤーの数は半端ではありません。なんと世界で10万社!です。その全社について、15の質問をするのです。シンプルだけれど、本質をついた、15の質問です。内容は全部で4分野、エネルギーと気候変動、自然資源、資源効率、人々とコミュニティに関するものです。
■"Sustainability Product Index: 15 Questions for Suppliers"(英文,PDF)

 今のところ「○○を測定していますか?」、「□□の削減について数値目標を持っていますか?」と聞くだけで、ある値が達成できていることを求めているものではありません。しかしこの質問を見れば、ウォルマートがサプライヤーに何を求めているかは明らかです。そしてもちろん、この質問に関することに真面目に取り組んでいるサプライヤーであれば、持続可能性により近いことは確かでしょう。

 ウォルマートのリリースには、デューク氏のこんなセリフが引用されています。
「お客様は、もっと効率的で、長持ちして、性能の良い商品を求めているのです。そして、その商品を買うことを良いと感じられるように、商品の全ライフサイクルについての情報をもっと知りたいと思うようになっているのです。製品に使われている物質が安全で、良く作られていて、責任のあるやり方で作られたことを知りたいのです。」



 ウォルマートの計画は、こうした商品に関する情報を顧客に分かりやすい形で表示することで完成します。どのような表示にするのか、点数なのか、色分けするのか、それとももっと別のラベルなのか、それはこれから大学などの研究者も含めて協働で研究するといいます。

 そして、21世紀の新しい小売のスタンダードを創るべく、力を合わせようと、デューク氏は呼びかけました。たしかにこれは、サステナビリティのための「マイルストーン(一里塚)」になりそうです。

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2009年03月11日

目覚めた夢の国

 去る9日にウォルト・ディズニー・グループ(WDG)が発表した「2008企業責任報告(2008 Corporate Responsibility Report)」によれば、WDGも気候変動などについて本格的に取り組み、かなりチャレンジングな目標を設定したとのことです。
出典:"THE WALT DISNEY COMPANY ANNOUNCES SIGNIFICANT LONG-TERM ENVIRONMENTAL GOALS"(Walt Disney Copmany)

 具体的な目標を見てみると、
・燃料からの温室効果ガスの排出は最終的にはゼロにすることを目指し、2012年までには50%削減
・電気からの間接的な温室効果ガスの排出は、2013年までに2006年比で10%削減。そのために再生可能エネルギーにシフトするための計画を積極的に推進。
・ゴミは長期的にはゼロ・エミッションを目指し、2013年までには2006年比で最終埋め立て処分を50%削減。
・生態系への影響は最終的には「ネット・ポジティブ・インパクト(正味でプラスの影響)」を目指し、2010年までには新規のすべての建設計画において、生息地を保護するための計画と技術に関する統合的アプローチを開発し、実施。
 などとなっています。詳しくは同社のインタラクティブな"2008 Corporate Responsibility Report"の中から、Environmentの部分をご覧ください。

 直接的なGHGの排出、つまり燃料消費については2012年までに50%削減、最終的にはゼロにするというのは大変に野心的です。既にディズニー・ランドの中で使う燃料を、ホテルやレストランで使った植物油をリサイクルしたものに切り替えたりしているそうですが、この目標はかなりのものです。

 また、生態系の保全も環境の6大テーマの1つになっています。これはほぼ、生物多様性の保全に重なるものと考えていいと思いますが、これについても正味の影響をプラスにするというのは大変な目標です。また、この目標設定のし方は明らかに生物多様性オフセットの考え方を意識した、あるいは前提としたものだと思いますが、そうしたところもアメリカ企業らしくて興味深く感じました。

 ディズニー・ランドと言えば、現実を忘れさせてくれる夢の国、おとぎの国なわけですが、そのディズニー・ランドを運営するWDGが環境問題を現実的かつ本格的に取り組むようになったということは、アメリカでも危機感が高まってきたということの証左かもしれません。そう考えると、夢の国が夢から目覚て現実を直視するようになったことは手放しで喜べるわけではないかもしれませんね。

 いずれにしろ、WDGの野心的な目標と宣言が夢だったということには、くれぐれにもならないようにして欲しいと思います。

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2009年02月27日

「私、人魚姫なのよ」

 病気で両足を失った女性が思わず発したそんな言葉が、現実になりました。夢を叶えたのは、アカデミー視覚効果賞も受賞しているSFXのプロ集団Weta Digital。2年間かけ、彼女のための美しい人魚の尾ひれを作ったのです。
090224MermaidDream.jpg

出典(写真も):「義足の女性、人魚になる夢叶う」(GIZMODO、2009年2月27日)

 ぜひ以下のビデオをご覧ください。技術は、こんな風に人を幸せにすることもできるんですね。
■「A Mermaid's Tale」(Close Up)

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2009年02月26日

人体実験の結末

 だいぶ以前「ナイロビの蜂」という映画をご紹介した際、欧米の製薬会社がアフリカで不法な「人体実験」を行っているという問題を紹介しました。自国では出来ない危険な治験実験でも、安い費用で、簡単に行えるため、そうした問題が後を絶たないのです。
(「本当にいた「ナイロビの蜂」」、「不都合な真実」参照)

 今の世の中で本当にそんなことがあるかと思われるかもしれませんが、今日そんな事件の一つに対して、世界売上1位の製薬会社ファイザー(米)が、犠牲者の家族らに賠償金を支払うことに合意したとのニュースが流れました。

 このニュースでぞっとするのは、犠牲者たちが子供だったこと。そして、約200人に未承認の薬を試験投与したところ、11人が死亡し、189人に重い障害が残ったということです。つまり、投与された子どもたちのほとんど全員が重大な悪影響を受けたということです。

 当初ファイザー側は事実無根であると主張していましたが、和解に応じたということは、事実と認めざるを得なくなったということでしょうか。

 もはやCSR以前の問題です。薬は代替が効かない場合もあるので、ファイザーの製品をボイコットすればいいというわけにもいかないので、どうしたものかです。業界の雄として、今後どのように責任をまっとうするのか、注目が必要です。

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2009年02月18日

PPPとCSR

 PPPという言葉をご存じでしょうか? 汚染者負担原則 (Polluter-Pays Principle)とお答えになった方、かなり古くから環境問題に関わっていらっしゃったとお見受けいたします。ただ、今日話題にしたいのは、Public-Private Partnershipの方のPPPです。日本語では官民連携と訳されることが多いようですが、日本語版のWikipediaにもまだ載っていないようですし、やはりまだあまり知られてはいないのかもしれません。

 欧米では1990年代後半から、日本では経産省が2002年に「日本版PPP(Public Private Partnership:公共サービスの民間開放)の実現に向けて」というレポートを発表しています。

 また、日本ではPPPというと、PFI(Private Finance Initiative) 、すなわち民間資金の活用による公益的な事業と同一視されることが多いように思いますが、実際には資金協力よりもっと広義の共同事業のことです。

 最近、CSRの世界でも、PPPという言葉をよく聞くようになってきました。これはおそらくは、BOP(Bottom of the Pyramid)つまり貧困層を対象としたビジネスが注目され、公共サービス(的な事業)とCSRが限りなく近づいたことや、あるいはODAに民間が参画することで経済的にも、技術的にも、これまでとは異なる事業展開が期待できるようになったからなのではないかと思います。

 そんな国際的な流れを背景に、JICA(国際協力機構)も昨年10月に、民間連携室を発足させています。
《参考リンク》
■「民間連携室の設立についてのお知らせ」(JICA)

 またこうした動きの一つと言っていいと思うのですが、3月1日には「途上国の自然護に向けて〜JICAと企業の新時代〜」と題する公開シンポジウムが開催されます。途上国で実際に自然保護に取り組むJICAの協力パートナー(現地行政官等)の方も参加して、国際機関やJICAのCSR連携事例を紹介し、途上国におけるCSR活動の可能性を考えようというものです。

 生物多様性の保全を海外でと考えていらっしゃる企業の方にとっては、とても貴重なチャンスになるのではないかと思います。もちろんそれ以外の海外における一般的なCSR活動を考えていらっしゃる方にとっても、様々なヒントがあると思います。僕もパネル討論に参加することになっています。日曜日の午後ですが(^^;)、どうぞご参加ください。お待ちしています〜

JICA公開シンポジウム「途上国の自然保護に向けて〜JICAと企業の新時代〜」
◆主催 :独立行政法人国際協力機構(JICA)地球環境部
◆日時 :2009年3月1日(日) 14:00〜17:00(13:30開場)
◆場所 :JICA研究所 二階 国際会議場
◆講演者/パネリスト(日英同時通訳)
 三次啓都(JICA地球環境部森林・自然環境保全第一課長)
 Mr. MOHD. SOFFIAN Bin Abu Bakar(マレーシア国サバ州野生生物局次長)
 Mr. Ir. SAMEDI (インドネシア国森林・自然保護総局地域保全局自然地域保全
課長)
 Ms. Susan MACKAY (RECOFTC(アジア大洋州地域コミュニティフォレストリー
研修センター))
 あだなお。氏(株式会社レスポンスアビリティ代表取締役、JBIB事務局長)
 代島裕世氏(サラヤ株式会社 営業統括本部広告宣伝部 部長兼コンシューマー営業部 マーケティング担当部長)
※休憩時間またはシンポジウム終了後に10ヶ国のJICAの協力パートナーと意見交
換していただける時間・場所をご用意しています。
◆定員 :150名(定員になり次第、締め切らせていただきます。)
◆参加費:無料
◆対象者:途上国でのCSR活動に関心をお持ちの方
お申込方法・詳細はこちら: http://www.jica.go.jp/event/090301.html


今日もお越しいただき、ありがとうございます。
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2009年01月29日

もっとも持続可能な企業

 ダボス会議で今年もまた、グローバル100(世界のもっとも持続可能な企業100)が発表になりました。今年は日本から選ばれたのは15社、損保ジャパンが日本の保険会社として初めての登場です。
28日に開幕した世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で発表された「世界で最も持続可能な100社」(グローバル100)に、損害保険ジャパンが選ばれた。環境ファンドの運用や東南アジアでの天候デリバティブの販売などが評価されたとみられる。日本の保険会社が選ばれるのは初めて。
出典:「損保ジャパン、「持続可能な100社」に選出 ダボス会議」(日経ネット、2009年1月29日)

 今年選ばれた日本企業は全部で15社、そのリストは以下からご覧いただけます。リコーはこの制度が出来て以来5年連続で選ばれています。
■"The 2009 List"(Global 100)

 よーく見てみると、返り咲きも含めて、今年新たにリストに入ったのは以下の4社でした。おめでとうございます!
・イオン
・JR東日本
・NTTデータ
・損保ジャパン

 そして残念ながら、デンソーとNSK(日本精工)は、2008年は選ばれていたのに、今年はリストから落ちてしまいました。

 国別でいうと、日本は昨年の13社から2社増えた15社で、昨年と同じ3位。1位は今年はアメリカ(20社)で、英国が19社で2位。1位と2位の順位が逆転しました。

 過去のリストはグローバル100のWebサイトからもご覧いただけますが、昨年の結果についてはサスラボの「グローバル100発表」もご参照ください。

今日もお越しいただき、ありがとうございました。
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2009年01月05日

若者が希望を持てる社会

 昨日も書いたように、非正規雇用は今やもっとも重要な企業の責任としてクローズアップされつつあります。民主党もこれを選挙の争点とする考えだそうで、私たちがどういう社会を目指すのか、きちんとした議論をするきっかけになって欲しいと思います。もちろんそれ以前に、突然に職を失った方々の緊急支援措置は与野党一致で行なってもらわなければ困りますが...

 さて、これに関連した企業側の対応についてですが、現状認識と課題設定に関して言えば、1月1日に経済同友会の桜井代表幹事が発表した年頭見解には頷ける点が多くありました。
《参考リンク》
■「若者が希望を持てる社会の構築に向けて【2009年年頭見解】」(経済同友会)

 現状認識として「世界が直面している課題は、世界規模での経済の構造調整と捉えるべき」というのはその通りですし、「構造問題を解決」し、「『若者が希望を持てる社会』に向けた第一歩を踏出す年にすべき」というのも賛成です。(ただ、現在の経済危機の原因については、アメリカに配慮し過ぎている気もしますが...)

 そして、「『若者が希望を持てる社会』の構築に向けた取組み」として、非正規雇用が構造的問題であり、それを解決するために政治、労働界、経済界の3者で早急に検討すべしというのも賛成です。(ただしここでも、90年代の就職氷河期のみに原因を求めているのはちょっとどうかという気もしますが...)

 他にも、持続可能な社会保障制度の確立、構造改革の断行、内外の相互交流の拡大、低炭素社会の実現、雇用が社会的課題であるとの認識に基づいた慎重な雇用調整への取り組み(本当に慎重にお願いします!)、いずれも賛成します。

 若干違和感を感じたのは、「わが国が世界に開かれた市場を主体的に提供すること」です。これが本当に内需の拡大に繋がるのか、十分に調整をしながらの市場解放でなければ、今の混乱にさらに拍車をかけるのではないかと思うのです。そもそも最初の現状認識で指摘しているように、アメリカに流れた過剰な投資が、アメリカの過剰消費構造を作り出したことを反省すれば、こうした形での内需拡大には相当の危険が伴うことに気をつけなければならないのではないでしょうか。

 しかし、企業経営者の代表が、日本は「若者が希望を持てる社会」を目指すべしと指摘し、政治は目指すべき「国のかたち」を明示し、「進捗管理と改善策の展開(PDCAサイクル)を確実に機能させることを保証」するべきと主張する点にはまったく同感しますし、企業経営者ならではの視点だと思います。

 最後に経済同友会として、「厳しい経済情勢にひるむことなく」「日本が直面する課題に積極的に取組んでいきたい」として4つの方策を示しています。これも方向性としては良いと思いますので、後は具体的な中味ですね。

 企業が社会の課題を自分たちの課題として捉え、それを解決するために持てる力を最大限に活用するようになれば、日本のCSRもホンモノです。課題認識についてはかなり進んだようですので、どのようにこの年頭見解が実行されていくかを、しっかりと見定めたいと思います。

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2008年12月22日

100年先を見ていた経営者

 大原美術館といえば、西洋近代絵画のコレクションで全国的に、いや世界的にも有名です。実際訪れてみると、なぜこんな名作がと思うような作品が次から次へと目白押しで、その質の高さ、密度の濃さに圧倒されます。これが東洋の島国に、しかもできた当時は東京から一昼夜かかるような田舎に、個人の力で作られたのですから、驚くより他にありません。

 しばらく前に念願叶って大原美術館と倉敷の街を訪ねた際には、その素晴らしいコレクションにも、周囲の美しく保存された街並みにも感嘆しましたが、それよりもさらに心打たれたのは、この大原美術館を作った大原孫三郎氏の「社会から得た財はすべて社会に返す」という考え方、そしてそれを実践した生き方です。

 大原孫三郎氏の実に多くの活動の中で、大原美術館を作ったことはごく一部でしかありません。かなりのお金も使ってはいますが、それ以外の活動に比べたら、ほんの大した額でしかないでしょう(そのこと自体がすごいことですが....)

 美術館の売店で画集の代わりに「わしの眼は十年先が見える―大原孫三郎の生涯」という伝記を買い求め、読み進みながら、何度も唸ってしまいました。CSRはおろか、社会貢献という言葉すらなかったような時代に、孤児の救済、女工の待遇改善のために私財を注ぎ込み、東洋一の倉敷中央病院、大原奨農会農業研究所(現岡山大学資源生物科学研究所)、倉敷労働科学研究所、大原社会問題研究所(現法政大学大原社会問題研究所)、現岡山県立倉敷商業高等学校などを次々に設立したのです。
《参考サイト》
■「大原孫三郎 やる可し大いにやる可し」(クラボウ)

 よくそこまで財力が続いたなということにも呆れるぐらいに驚きますが、孤児や工員など、弱い立場の人々のために考えられるありとあらゆる支援をし、才能ある若人たちが海外で学ぶことを助け、とても一人の人間がしたこととは思えないような業績を残しています。

 なぜそこまで出来たのか、小人にはまったく理解できません。孫三郎氏は「わしの眼は十年先が見える」と言って、他の役員が反対する場合にも押し切ったそうですが、10年どころか、100年先が見えていたのではないでしょうか。

 工場内に女工たちの学校を作り、大部屋の寄宿舎を数人で住まう平屋の社宅にし、食事を改善し、診療所を作り、賃金を上げ、特別手当を配し、株式引受権を与え、組合を作り、労働安全衛生のための研究所を作り、深夜勤務を廃し、クーラーを設置し...  倉紡の株主でなくても呆れるぐらいで、頭がクラクラして来ます。

 本当にこんな経営者が実在していたことが信じられません。もちろんこうしたことを可能にするぐらい、日本の経済が右肩上がりの時代でもあったのでしょう。しかし、同時代、ほとんどの企業はこんなことはしていないのですから、やはり孫三郎氏は、きわめて特異な経営者であったのです。

 こんな経営者がいて、「労働をより人間的に」することを目標に、生理学、心理学、栄養学など、多面的に労働を科学する研究所が今から90年近くも前、1921年に作られていることを、日本人として誇りに思わないわけにはいきません。

 その日本で今、CSRが喧伝される一方で、労働者が使い捨てにされていることは、まったく時代に逆行する恥ずべき状況としか言いようがありません。孫三郎氏が今の世を見たら、果たしてなんと言うのでしょうか。経済状況が悪くなり、業績も落ちてきたとき、孫三郎氏であれば、どうしたのでしょうか。

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2008年11月22日

アジアでできるCSR

 一日遅れの報告となりましたが、二日間にわたるAFCSRが昨日終わりました。今日はオプショナルのエクスカーションで、セントーサ島で建設中の超高級マンション(1ユニットがなんと7〜14億円!ですよ。信じられます?)の環境に配慮した施設を見学したりしました。

 一口にCSRと言っても、その活動内容は様々です。日本国内でも、何に力を入れているのか、何を目的にしているかは、企業ごと違います。海外となればさらにその違いは大きくなります。今回の講演の中でもイギリスのノッティンガム大学のMoon教授が、興味深い国際比較をしていました。

 今回のAFCSRは「社会問題に対する企業からの回答」という全体テーマからもわかるように、社会的な課題にフォーカスが絞られていました。実際東南アジアや南アジアにおけるCSRは、ほとんどの国が発展途上ということもあり、貧困の軽減や、教育への貢献などが大きなトピックスになっており、実際にそうした活動をしている企業が非常に多く参加しています。

 日本企業からすればCSRの課題としてはちょっと違和感があるかもしれませんが、社会にそうした課題と必要性がある以上、それはそういうものとして受け止め、特に東南アジアでビジネスを展開する企業は、しっかりと対応していく必要があるでしょう。さもなくば、これは日本企業にとっての大きな落とし穴になる可能性があります。

 一方、逆の意味の落とし穴がある可能性も今回強く感じました。東南アジアの企業が語るCSRからは、環境のことがおそろしいほどすっぽりと抜けているのです。貧困をなくす、最低限のインフラを整備する、それが優先課題であることは痛いほどわかりますが、あまりに環境のことが後回しにされているのではないかと危うさを感じざるを得ませんでした。

 ある程度経済的に豊かにならないと環境のことは考えられないという説がありますが、もしそれが仮にこれまでは正しかったとしても、本当にそれでいいのかということです。地球環境にはもはやそんな無駄を許す余裕はありませんし、途上国が先進国の失敗の轍を踏む必要などまったくありません。同じ失敗を繰り返さないようにすることこそ、知恵というものです。

 そう考えるとアジアのCSRがあまりに社会的な課題ばかりに集中していることに、不安ともどかしさを感じてしまうのです。しかし別の見方をすれば、日本企業は今後アジアに貢献する大きな責任があるということだとも言えるかもしれません。

 一つには、まだアジアのCSRの主要な課題に積極的に関わっていないので、今後大きな貢献をする余地がある(^^;)という点に関してです。そしてもう一つは、環境問題について、その重大性を伝え、またどう解決するかを指導するという点においてです。

 今日訪れたセントーサ島の高級コンドミニアムは、たしかに頑張っている面もあるのですが、決して最先端の環境配慮技術を注ぎ込んでいるというほどではありませんでした。日本のエコ住宅に比べれば、まだまだ可愛いものです。けれど既にそういう需要も生じているということですから、ビジネスとしてもこれを見逃す手はありません。

 まずはアジア各国の持続可能性を高めるために、そして日本の生き残りのためにも、アジアに貢献できることはたくさんありそうです。

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2008年11月20日

CSR報告書最前線

 今日からいよいよAFCSR 2008です。シンガポールの社会開発・青年スポーツ大臣(地方自治開発大臣とも;Ministry of Community Development, Youth and Sports)であるDr. Vivian Balakrishnan氏を基調講演者に迎え、華やかなスタートです。

 日本だとお偉方のスピーチというのは形式的で面白くないのがあたり前になっていますが、Balakrishnan大臣は世界経済が危機的な今だからこそ、社会から信頼される企業、信頼される政府を、長期的な視野で考える必要があることを、原稿の棒読みではなく、ご自分の言葉で淡々と話していたのが印象的でした。政治家にありがちな情熱的な勢いのある(しばしば勢いだけの(^^;))話ではなく、むしろ静かに優しく語りかけるような話し方で、逆にちょっと新鮮でした。

 それ以外にもいろいろと興味深い講演や発表がありましたが、今日は僕も自分の発表をしたので、手前味噌のようですが、その内容をちょっとご紹介したいと思います。僕が話をしたのは、「CSR活動を伝えるために新しい手法(インターネット、ブログなど)をどう使うか」というセッションです。一緒のセッションでEdelmanのBob Grove氏はメディアについてのステークホルダーの好みの変化を示し、それに戦略的にどう対応するかというコミュニケーション論を展開したのですが、僕は日本企業が実際にどうCSR活動を伝えているかを報告しました。

 日本はCSR報告書(環境報告書なども含む)の発行社数でも、発行している会社の割合でも、世界でトップなのですが、それがどのように発展してきたのか、そして今どう変化しつつあるかということを、先月行なった調査の速報値などを元に分析してお話ししました。このアンケート調査の結果は近日中に正式版を発表する予定ですので、そのときにまた詳しくお知らせしますね。

 そして後半では、最近の日本企業のグッドプラクティスとしていくつかの具体的な事例を示しました。ここではそれを簡単にご紹介しましょう。

 味の素さんは2006年からCSRレポートと環境報告書を分離し、一般にはCSRレポートを、どちらかというと専門家向けに環境報告書を発行しています。もちろんその分手間はかかるのですが、専門家や詳しい情報を求めるステークホルダーにはきちんと対応したいという考えです。
過年度報告書ダウンロード(味の素)

 キユーピーさんでは、社会・環境推進室のスタッフの方(Sさんが中心ですね)が更新している「社会と環境について語るブログ」や、同社の「社会・環境報告書」が、従業員の家族の方をもっともプライオリティの高い読者と考えていることをご紹介しました。これは、案外ありそうで、珍しいことなのです。

 そして富士ゼロックスさんは、なるべくたくさんの方に同社のCSRの考え方を知ってもらうためにサステナビリティレポートは薄くしたい。でも、そうすると一部のステークホルダーの方が求める詳しい情報は掲載できない。そのジレンマを解決するために、Webで詳細なデータを公開するという方法を使っています。今ではWebの情報量はA4換算で300ページ分と莫大です。その分コストもかかっているのですが、読者からは好評で、十分にコスト以上の効果が得られているとのことです。

 別の意味でWebの活用が徹底しているのはNECさんです。「報告書を発行することが目的ではなく、きちんとした情報をきちんとしたタイミングで開示することが目的。ITによる効率化で、情報収集と集計にかかる手間を減らし、その分コミュニケーションに力を入れたい」という考え方で、同社のIT技術を使ってなるべく自動的に情報を収集し、印刷版のフルレポートは廃止してWebでデータを公開することで、四半期ごと(!)のデータ更新を行っているのです。今はまだ担当者がいらっしゃるのですが、将来的には完全自動化を目指すというのですから、徹底しています。
■「環境アニュアルレポート2008」(NEC)

 本業の特性をうまく生かしている例としては、バンダイナムコグループでは、2006年からいくつかの製品(おもちゃ)に同社のCSRレポートの子供向けダイジェスト版「バンダイのエコ こんなエコ」を同封しており、3年目となることしは、なんと200万部を同封する予定だそうです。子どもたちへの環境教育の効果も大きそうです。

 さらには、こうした企業のCSR活動のコミュニケーションの支援を手がけている社会起業としては、クリック募金でお馴染のdffがあり、例えば「CSRモニター」など、ユニークなチャンネルを提供しています。

 必ずしも最新のデジタル技術を駆使しているというわけではないのですが、さまざまステークホルダーのさまざなニーズに応えるべく、日本企業は地道に頑張っていると思います。こうした日本企業の真摯な姿勢が、今日の講演で少しは伝わったようだといいのですが... 皆さんは日本企業のこのようなグッドプラクティスを、ご存じでしたか?

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2008年11月14日

CSR調達の目的は?

 三日間の中国駆け足出張から、今晩帰国しました。三日間で三つの工場を回ったのですが、予想以上の強行軍で、結局スーパーでレジ袋のチェックをする時間はありませんでした(^^;)

 中国の工場というと皆さん労働条件が気になるのではないかと思います。実際、今回もそれが気になって確認しに(つまりCSR調達の調査です)行ったのですが... で、結果的に言えば、今回訪問した3工場はいずれもかなりキチンとしていました。ちょっと安心です(笑)

 特にいいなぁと思った2工場は、偶然かもしれませんが、両方ともトップが女性の方でした。細かいところまで目が届いており、従業員の方々を大切にしていることがよくわかります。いろいろなところにトップ自らの工夫があり、どんな小さなことでもいいから、気がついたことはきちんと実行して、良い労働環境、良い会社にしていこうというトップの強い意志が感じられました。こういうところであれば安心ですし、実際、従業員の待遇もよければ、定着率も高いのです。

 もともと人を大切にする経営者の方なのだと思いますが、それに加えて、従業員を大切にする理由(わけ)もありました。中国と言うと、安い労働力が豊富にある、多くの方がそう想像すると思うのですが、最近はそう単純には言い切れなくなっているのです。賃金はすごい勢いで上昇していますし、キツイ仕事は敬遠され、カッコイイ仕事、割りのいい仕事には人が集まっても、根気の必要な、地味な仕事には、なかなか人が集まらなくなっているのです。

 つまり中国と言えども、今や人手不足が現実の問題となっており、特に質の高い労働者を集め、そういう人に長い間働き続けてもらうのは、かなり大変なことになってしまったのです。ですから、従業員を大切にすることは、企業経営者としては当然のことにもなりつつあるのです。しかし、そのことに気付き、さらには実行できる経営者は、必ずしも多くはなさそうですが...

優秀な従業員の方が大切だろうなと僕にもとてもよくわかったのは、ニット工場でした。今は機械でもかなり人間に近い編み方をできるそうですが、それでも有名ブランドのニットは人が編み機を使って編んでいます。機械だとどうしても平板になってしまうのだそうですが、人が編むとなんとも言えない味わいが生まれるのだそうです。そして、もっとも細かい密な編み方となると、人手に頼るしかないそうです。

 その中でも特にすごかったのが、インターシャと呼ばれる編み方です。典型的なのはアーガイル模様などの柄物なのですが、何色もの糸をモザイクのように編み込むので、柄がありながらも、薄く仕上げることができるのです。僕が説明するよりも、例えば以下のページなどを読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
《参考リンク》
■「インターシャとは?」(Heart of Andes)

 一段編むごとに糸の配列を少しずつ変え、それをひたすら正確に繰り返す。気の遠くなるような作業です。設計図にあわせて、それを何百列と一列、一糸すら間違えずに編んでいくのです(もし一つでも間違えれば、模様がズレるのですぐにわかってしまいます)。根気も、集中力も、視力も必要な大変な仕事です。

 工場労働者というよりは、職人と呼んだ方がいいような気がするぐらいです。実際、なんとか一人前になるのには数年はかかるようですし、人によって向き不向きもあるそうです。同じ素材で、同じ機械で、同じように編んでも、人によって微妙に違いが出て来るといいます(それでも製品としてはうまく揃えなければいけないわけですが...)。

 本当に見ている方が溜息が出て来るような仕事です。よくあるアーガイル模様のセーターの前身頃を編んでいる方に尋ねて見ました。かなり熟練しているように見えましたが、一日にせいぜい4枚しか編めないそうです。後身頃は無地なので比較的簡単に編めるのでしょうが、それでも一人で一日にせいぜい数着しか作れない計算です。

 そう考えるとインターシャのセーターって、なんて贅沢なんだろうと思いませんか? この製品が日本のデパートに並ぶと2万円前後の値段がつくのだそうですが、この現場を見てしまうと、ちょっと安過ぎるのではとすら思えてきます。

 この工場の編み手はかなりいいお給料をもらっていましたが、それでも日本円にしたら月給3万円足らずです。週5日、朝から晩まで黙々と働いてやっと3万円です。そう考えると、このセーターの値段は本当にこんな価格でいいのかなと思えてきます。

 僕たちはモノが安く買えると喜びますし、消費者のそういう気持ちをひくために、企業はコストを下げるべく努力します。それが単に無駄を省いているだければあればいいのですが、その値下げ圧力のために、モノを作っている方々に十分な対価が払われないようなことがあるとしたら... 話がまったくアベコベです。

 いろいろな工場でいろいろな製品が作られるプロセスを見るたびに、現場の方々が実に丁寧に黙々と仕事をしているところを目にして、感謝を通り越して、なんどか申し訳ないような気すらしてくるのです。これだけのテマヒマをかけて作られたモノを当然のような顔をして消費している僕たちって、一体何様なんなのだろうと、申し訳ない気持ちになってきます。

 そう考えると、重要なのは、モノをいかに安く買うかではなく、良いモノをいかに適正な価格で買い、感謝して使うことだと思えてきます。今回のニット工場では、特にそのことを痛感しました。

 僕たちが今これだけ便利な生活をすることができるのは、様々な人が、様々な仕事を黙々とこなしていることに支えられてのことです。本当にそんな贅沢をしていいのかなと軽い罪悪感すら覚えますが、少なくともそれを支えてくれる方々に対する感謝と尊敬の念は忘れないようにしたいと思います。皆にそういう気持ちがあれば、働く人の生活も少しは安定するでしょうし、少なくともそれで苦しむ人は生まれないはずです。

 そう考えると、CSR調達は企業のリスク管理や、消費者の自分自身の安心感のためではなく、自分たちの生活を支えてくれる見知らぬ人たちへの感謝の気持ちの発露であって欲しいと思いました。彼ら、彼女たちへの敬意を表す手段としてCSR調達が必要なのだと思います。僕自身、これからニットを見る目が変わりそうです。

 さて、あなたの身の回りのモノは、誰がどんな風にして作ったモノなのでしょうか? ちょっと気になりませんか?

長文をお読みいただき、ありがとうございました。
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2008年11月08日

持続可能性15の格言

 CSRは、社会が持続可能になるために、企業としてできる貢献です。つまり、CSRの究極の目的は、会社も社会も持続可能になることです。

 そのために具体的にどうしたらいいのか、「普遍の持続可能性を達成するためのメソッドとなる15の格言」をまとめてみました。
1.持続可能性について深く考える「知性」がある
2.会社本来のもつ力を信じることができる
3.余分なものは削ぎ落とし、本当に必要なものだけを残していくことが持続可能性の基準だと考えている
4.会社がトラブルに見舞われないよう、未然に防ぐというのが基本
5.誰もが使うことを心から楽しめてこそCSRだと思っている
6.惰性や虚栄ではなく、効果を求めてCSRを行なっている
7.トラブルの要因がひとつではないことを知っている
8.言葉以外で表現する、プロフェッショナリズム
9.生活環境や精神状態によって、日々会社は変化することを知っている
10.自分の会社の弱点や今の会社が必要としているものがわかる
11.自分が持続可能でありたいと願うと同時に、家族や周囲の人たちも持続可能にしたいと考える
12.想像力が持続可能性への新しい扉を開くと考えている
13.トレンドに流されず、正しい情報を取捨選択できる
14.絶対的・固定的に持続可能であるというより、「個性的に持続可能であること」をモチベーションとしてとらえている
15.持続可能性の究極は心がハッピーであることを知っている

 どうです、なかなか含蓄のある格言だと思いませんか? いいなと思ったら、ぜひ皆さんの会社でも使ってみてください。

 あ、でも実はこれ、本当は持続可能性やCSRについてのオリジナルな格言ではありません。今月号の「マリ・クレール」に載っていた「普遍の美のメソッドとなる15の格言」のパクリなのです(^^;) 

 マリ・クレールが理想すると女性像「プラネット・ウーマン」、その美容道と、化粧品ブランドのクリニークの哲学を合わせて作ったのが、この15の格言なのだそうです。

 その格言のうち、美を持続可能性に、肌を会社に、化粧品をCSRに置き換えたところ、このようなもっともらしい「持続可能性15の格言」が出来てしまったのです(笑)

 若干「てにをは」は調整しましたが、内容そのものはまったくいじっていません。いやはや、美容道とは奥が深いものですね...

今日もお訪ねいただき、ありがとうございます。
今日の格言、役に立ちましたか!?(笑)
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2008年10月28日

国家<企業<消費者

 先日、全世界的なCSR調達の推進を中国で発表したウォルマートですが(「ウォルマートもCSR調達を本格化」参照)、やはりかなり本気なのかもしれません。

 ウズベキスタンでは国ぐるみの強制労働、児童労働があることを以前にご紹介しましtが(「国ぐるみの児童労働、強制労働」参照)。そのウズベキスタン産のコットンを使わないよう、しばらく前に全サプライヤーに指示を出していました。

 ウズベキスタンの子どもたちが綿花畑で働く様子は以下のページで見ることが出来ます。
■"The Cost of Uzbek White Gold"(IWPR)
uzbek01_02a.jpg
写真:上記サイトより

 児童労働を考えるNGO ACEの「ACE児童労働メールマガジン Vol.123」に、以下のようなニュースが紹介されています。
「米国のコットン取引業者の約90%に相当する関係者と新たな連携を結んだ。ウォルマートのサプライチェーンに強制児童労働は存在させない。」と、ウォルマート社の倫理基準部の副委員長は話す。

米国履物アパレル協会、皮革小売業者協会、全国小売業協会、米国繊維アパレル輸入業者協会の4つの業界団体は共同で、8月18日、在米ウズベキスタン大使館に対して、コットン収穫における強制児童労働の使用の廃止を求める書簡を送付した。

これを受けてウズベキスタン政府は9月12日、児童労働の使用を撤廃するための国家行動計画を発表した。ウォルマート社は、同政府によるこれらの措置がきちんと確認できれば、納入業者への指示を修正する方針だ。
出典:「ウォルマートがウズベキスタンのコットン使用を禁止」(ACE)

 ウォルマートの決定は、最近銀座に出店して日本でも人気のH&Mなど、他の企業にも影響を与え、さらには業界団体を動かし、そしてついにはウズベキスタン政府をも動かしつつあります。
《参考》
"WAL-MART ATTEMPTS TO ADDRESS LABOR PROBLEMS IN ITS SUPPLY CHAIN"(Wal-Mart Watch)
 世界最大規模の小売店チェーンであり、それだけの影響力があるのだから当然の責任とも言えますが、その影響力を正しく行使したこの行動は、やはり評価されるべきでしょう。

 それでは、そのウォルマートは誰が動かしたのかと言えば、それは間違いなく消費者の声です。消費者の声が集まって、巨大な企業を動かし、それが国家をも動かしつつあるのです。自分たちの力を忘れてはいけません。

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2008年10月23日

ウォルマートもCSR調達を本格化

 今日の日経に興味深い記事が掲載されていました。世界最大の小売チェーン、いや世界最大の企業の一つのウォルマートが、来年までに同社プライベートブランドを製造する全世界のメーカーに対して、責任ある調達(Responsible sourcing)を求めたのです。しかも、その発表は北京で行われました。
小売り世界最大手の米ウォルマート・ストアーズは22日、2009年までにプライベートブランド(PB=自主企画)品を取引する全世界のメーカーに、工場所在地など生産情報(生産履歴)の開示を求めることを決めた。子会社の西友も共同歩調をとる。低価格品をさらに普及させるには一定の品質を確保する必要があると判断。世界的な消費不振のなか、安売り攻勢で売り上げ拡大をはかる。
出典:「PB商品の生産情報開示 米ウォルマート、全取引先に要求」(2008年10月23日)

 上記の記事を書いた日経の記者の方は、失礼ながらCSR調達のことをどの程度ご理解なさっているのかちょっと疑問ですが(^^;)、ウォルマート社のリリースを読むと、これは明らかにCSR調達であり、たしかに品質も求めているけれど、労働条件等も含めて社会面、環境面できちんと責任を果たすサプライヤーとのみ取引をするという宣言です。
参考:"Wal-Mart Announces Global Responsible Sourcing Initiative at China Summit"(Wal-Mart)

 リー・スコットCEOはこれは消費者の信頼に答えるためと言っていますが、それは単に製品の品質に留まらず、サプライヤー工場の質をも含んでいます。なぜなら、サプライヤー工場における環境面や社会面の問題を放置することは、知らないでいることは、ウォルマートにとっての大きなリスクだからです。

 そういうわけで、あのウォルマートがCSR調達を本格的に開始し、それを北京で発表したというのは非常に重要で意義のあることなのですただ、日本のメディアや企業には、その真意はまだあまり理解されていないのかもしれませんね....

 リスクマネジメントとしてのCSR調達の意義については、実は近々セミナーを開催します。まず僕が、途上国における人権問題や強制・児童労働問題などの社会性リスクの最新動向についてお話をしします。そして、黒田かをりさんが、SAI(Social Accountability International)のジャパンリエゾンオフィサーの立場から、国際労働規格のSA8000とそれを活用した海外の組織の事例をご紹介くださいます。さらに、リスクマネジメントのノウハウが豊富なKPMGあずさサステナビリティから、KPMGグループによる「サプライチェーンにおけるCSRリスクのマネジメント手法」を紹介するという、実務家向けの実践的なセミナーです。

 ご興味のある方は、詳細は以下をご覧下さい。
■「途上国におけるCSR調達・リスクマネジメントセミナー
 −競争力を高める責任あるサプライチェーンマネジメント−

(KPMGあずさサステナビリティ)

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