2008年02月10日

ロンドンで考える

 考えてみたらイギリス訪問は3年ぶりでなのですが、前回の訪問時に比べて、明らかに活気が感じられます。なんてわかったようなことを書いていますが、僕はいつも短期間滞在するだけで、イギリスの事情なんて全然知りません。それでも、前回との差は歴然としているのです。空前絶後の景気だそうですから当然なのかもしれませんが、人と活気と、そしておそらくは大量のお金が集まっています。

 その理由は、もちろん80〜90年代の規制緩和、特に1986年のビッグバンによって、ロンドンが再び世界経済の中心になったことが大きいのでしょうね。今や金融セクターが経済全体の1/3(!)を稼ぎ出し、世界中からロンドンにお金と人が集まっています。

 きわめて高い収入を得た金融マンたちのお蔭で、歴史ある超高級な老舗は再び潤い、中心街の住宅価格も急騰しているといいます。その一方で、各地から集まった移民労働者も明らかに増えています。

 街で見かけることが多いのは移民や、世界各地からの観光客の方です。大衆的なお店で接客する人のかなりの割合は移民のようです。見かけから多様性が感じられるだけでなく、クセのある英語を話すので、古くからの住民ではないことはすぐにわかります。昨夜ホテル近くのカフェで夕食を取ったとき、明らかに外国人のウェイトレスに出身地を尋ねてみたら、「リトアニアからよ。リトアニアって知ってる?」との返事でした。

 高級ブランドの並ぶボンド・ストリートも、世界各地からのお客さんで賑わっています。日本では滅多に見かけることがない超高級車のマイバッハやベントレー、そしてもちろんロールスロイスもそこら中を走っています。

 もちろん弊害もあるでしょう。既に書いたように、ロンドン市内の住宅は高騰しているでしょうし、物価も上がっているようです。桁外れのお金持ちと貧しい人へと、二分化も進んでいるといいます。ポンド高のせいもあり、日本から来ても物価が高く感じられます。お金持ち以外には住み難くい場所になりつつあるかもしれません。

 ですから、今のロンドンや最近のイギリスの政策がベストというつもりはまったくありません。それでも、今の活気と、これだけの変化をわずか20〜30年の間に可能にした政治の指導力には、驚くしかありません。かつて「イギリス病」と揶揄された沈滞ムードは、少なくとも今のロンドンにはありません。むしろ今の日本の方が、かつてのイギリスに近そうです。

 現首相のゴードン・ブラウンは、前任のトニー・ブレアに比べるとぐっと影も人気も薄いようですが、経済の専門家ですし、気候変動についてはブレアの政策を踏襲し、より確実な変化を生もうとしています。

 必ずしも人気はないようですが、大ロンドン市長のケン・リビングストンは渋滞税(ロードプライシング制)を導入するなど、積極的な改革を進めています。こうしたリーダーたちが、ダイナミックかつ素早い政策変更をしてきたことが大きな成功要因なのでしょう。

 ひるがえって日本はと考えると、地方自治に関してはいくつか変化の芽が現れてきているようにも見えますが、国政に関してはまったく期待できない状況です。単に指導力がないだけでなく、現在の状況認識からしてほとんど出来ていない方々ばかりで、まったく暗澹たる思いになります。

 もう一つ、イギリスですごいなと思うのは、ストックの厚みです。18か19世紀、あるいはもっと古いものも混じっているのかもしれませんが、その頃に立てられた立派な建物が、今再び輝きを取り戻しています。

 しばらく前までは大英帝国の繁栄の遺産でしかなかったのでしょうが、そこに再び活気が戻れば、今度はそのストックがものすごい価値となり、さらに人とお金を惹きつけているのです。いくらビッグバンがあっても、なんのストックもなければ、たかだか20年、30年で、これだけの大都市は復興できなかったはずです。

 自国のストックに惜しみなく投資することの価値を、改めて痛感します。そしてこれも、残念ながら日本では顧みてこられなかったことです。流行だけを考えた、長持ちしない、安っぽいストックしか作らず、余ったお金は海外に投資する。そんなスタイルを続けていては、いつまで経っても、がっちりした社会を作れないのは明らかです。

 今のイギリスと日本を比べると溜息が出て来るのですが、愚痴を言っていてもしかたがありません。イギリスのやり方をしっかり研究して、日本も再度、日が出づる国と胸を張れるようにしたいですね。そのためには、他の国が真似したり、競争できない、日本ならではの強みを見極めることと、人々が安心して生産的な人生を送れる環境と仕組みを整えることです。このことは、経済的な側面も含めた、持続可能な社会像を考えることに通じるのではないかと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
皆さんはどんな都市に住みたいですか? どこが好きですか?
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posted by あだなお。 at 23:01| 東京 ☁| Comment(4) | TrackBack(1) | 政治・政策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして
数日前にランキングからやってきて、とても共感できるコンテンツにポチッっとしてます。
私は現在イギリスの学校で理科実験助手として働いていますが、こちらの学校では理科だけでなく地理の教科書でも'持続可能性’という概念が前提にあった上での教育がなされているように思います。
どこまで生徒が理解しているかは力量によると思いますが・・・
知識を詰め込むのではなく、その知識がどう自分の周りとかかわっているのか、ということに重点がおかれて教育がされているように思います。
Posted by しばゆう at 2008年02月11日 07:44
しばゆうさん

はじめまして。

イギリス在住の方からコメントいただいて嬉しく思います。

そうですか、理科だけでもスゴイと思いますが、地理にも持続可能性が前提にあるのですか... それは本当にすごいことですね。

イギリスの街を歩きながら思うのは、古い建物やインフラがこれだけきちんと機能していて、しかもそれがこれだけ美しければ、「伝統と文化を大切に」なんてわざわざ教える必要もないだろうなということです。誰もが自分たちが過去の歴史と確実につながっており、先人たちの偉業に言われなくても感謝の気持ちを持つと思います。これも、すごいことだと思います。

これからも、コメントをくださいね。
Posted by あだなお。 at 2008年02月12日 09:25
ロンドンのダイナミズムはすごいな、と思います。賛成です。他方、確かに、日本がこれに比べて微妙って思いますが、さてどうしたものかということを考えたときに、やはり「日本ならではの強み」だけだと、どうしてもモノエスニックな感じがしますが、いかがでしょうか。個人的には、その強みを生み出す原動力を呼び込むためにコスモポリタンな都市を目指すのがいいのかな、なんて考えていまして、そのあたりをブログに書いてみました。お時間のあるときに遊びにきてくださーい!
Posted by Daiquiri at 2008年02月20日 14:43
Daiquiriさん

コメントありがとうございます。

そうですね、ダイナミズムという言葉がピッタリですね。

ロンドンのダイナミズムが、多様なエスニックグループによって作られているのは確かですし、イギリスはそのことについて、かなり寛容なようにも思えます。

ただ、それによってロンドンならではのダイナミズムが生まれるのは、やはりもともとの底が厚い文化が存在するからなのでは、という気もするのです。

Daiquiriさんのブログにもお邪魔しますね。
Posted by あだなお。 at 2008年02月21日 23:35
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Weblog: Sip of Tip
Tracked: 2008-02-20 14:39
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